30秒で読めるひとくち小説
れいもんと=くろ〜
曇天に浮かぶ爺
光度が、ゆっくりと強くなる。
苦労を感じる、しわくちゃで、でも艶やかな唇の隙間から光が漏れだす。
老婆はゆっくりと顔を空へ向け、
そして口を大きく開けた。
この、どこまでも続く曇天にうっすらと浮かぶ笑顔の爺。
老婆の旦那は、皆の記憶から自分が消えた時、忘れられないように、と
老婆の金歯に少し細工をしていたのだった。
老婆の金歯は今もなお、光度を強くし続ける。
ゆっくりと濃くなり、笑顔の爺が手を振っている事に気が付いた。
そんな爺の姿に老婆は手を合わせ、
そして老婆の鎖骨へ、頬をつたった雫が1滴落ちた。
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