第548話 当初の目的を果たそう

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衝撃の半裸祭り……いや、日帰りクルーズ旅行の翌日。


ウェリントン侯爵を筆頭とした、ヴァンドーム公爵領内に巣食っていた帝国の協力者である家門や、その傘下である組織人員がまとめて断罪されたそうです。


しかも大精霊である奥方様自らが断罪したらしい。でもその断罪の内容は……教えてくれませんでした。


「エレノア嬢。貴女は知らなくていい」


そう言って、ニッコリと笑った公爵様のご尊顔を拝し、私は悟った。「あ、これ聞いちゃいかんやつだ」と。


でも彼らは、よりによってヴァンドーム公爵領の家門でありながら帝国と結託し、領地を滅ぼそうとしたのだ。しかもそれだけでなく、大切な家族を奥方様の手で殺させようと画策した。

大精霊様がヴァンドーム公爵夫人であると知らなかったがゆえに出来た事だろうが、なんとも命知らずな事をしてしまったなって思う。


それに伴い、フィン様が彼等から得たあらゆる情報を元に、王都や他領に潜んでいる帝国の協力者などを徹底的に調べ上げ、一斉捕縛する予定だとの事。


――そして、長年秘匿されていた奥方様の正体も、王家の名の許に大々的に告知される事が決まったそうだ。


これにより、ヴァンドーム公爵様の奥方様が、実はヴァンドーム公爵領を守護する大精霊セイレーンであり、アーウィン様方が大精霊の尊き血を継ぐ後継者達である事が、公に知らされる事となったのである。


オリヴァー兄様曰く、「今迄、『平民の血が流れている』と敬遠していたご令嬢方が、掌を返して血眼になって彼らに群がる姿が目に浮かぶね」だそうです。うん、私の目にもその未来予想図が鮮明に浮かびます。


元々アーウィン様方って、三大公爵家の直系だし、しかも王家の血も入っているから、身分的には準王族。まさに正統なる裏王家なのだ。

それに女神様の使徒とされる大精霊の血が入っているんだから、まさにスーパーハイブリット種!そりゃあ、肉食系女子ハンター達が狙わない訳がない。


「出来れば、その中で比較的マシなのを見初め、嫁にしてくれたら有難いんだが……」


「クライヴ兄上、それってエレノアを見初めた時点で絶望的じゃないですか?」


「だよな」


クライヴ兄様とセドリックが深い溜息をつく。……えっと、なんか済みません。


余談ですが、アシュル様とフィン様が、ヴァンドーム公爵家の方々と一緒に海底神殿で断罪劇を繰り広げている間、私はお昼過ぎまで一人でのんびり食事したりお菓子食べたりしてまったりしていました。


なぜに一人だったのかというと、私同様、兄様達やリアム達もフィン様の『鎮静』のリバウンドを食らってしまったらしく、私を見ると色々とヤバイ状態に成り兼ねなかったからだそうです。


実際、彼等はお昼過ぎに私の部屋へとやって来るなり、もれなく全員真っ赤になり、目を逸らしたり恥じらったりしていたのである。はい、大変に貴重な光景を見させて頂きました。


え?私?幸か不幸か、皆さんの素晴らしき水着姿、リバウンドで根こそぎごっそり脳内消去してしまっていたので平気でした。不幸中の幸い……幸い……なのだろうか?くっ!なんか無念!


……でも……。ふふふ……。


いつも私の方が恥じらって、翻弄されてばかりですからね!立場が逆転した今のお気持ち、如何でしょうか!?ああ、素晴らしきかな我が人生!


……なんてニヨニヨしていたら、「お前はなぁ……!」って青筋立てたクライヴ兄様に、頭部鷲掴みの刑に処せられました。

兄様、恥じらっているくせに容赦有りませんね!?というか、照れ隠しかいつもの倍痛い気がします!!ギブギブ、ヘルプ!!


それでも流石は愛に生きるアルバ男。全員根性で、私に婚約者としての挨拶をしてくれました。あ、でもいつもの唇への濃厚なご挨拶ではなく、頬や頭部に軽くキスをする程度でしたけどね。


あ、でもオリヴァー兄様からは、唇にライトキスを頂きました。流石の根性です兄様。これが筆頭婚約者の本気……なのですね!?


しかも、私の方からもライトキス返しをしたらどこかが弾けてしまったらしく、押し倒されていつもの濃厚なご挨拶を頂きました。


「お前はなぁ!!」「本当にブレねぇ野郎だぜ!!」なんて言いながら、荒ぶるオリヴァー兄様を、クライヴ兄様やディーさんが青筋立てて引き剥がし、セドリックとリアムがプシュ~と、湯気をシュンシュン出している私を、ウィルと一緒に慌てて介抱するという、いつものパターンと相成りました。


流石は筆頭婚約者、身を挺して場の空気を通常仕様に戻すとは。流石です!


ちなみにマテオとシャノンですが、ここにはいません。


マテオは王家の『影』として、アシュル様とフィン様の傍に。そしてシャノンは、私が着ていた水着を隠し持っていた罰として、兄様達とロイヤルズ、更にはアーウィン様方に覗きというセクハラを働いたティル(なにやってんの、ティル!!)と一緒に、アシュル様に命じられたフィン様によって、イーサンの元へと強制送還ならぬ強制転送させられてしまったそうです。


その際、オリヴァー兄様が『こいつらの根性叩き直せ!』と一筆書いて持たせたそうです。……シャノン、そしてティル……生きて!!


尤も、今回の大惨事を招いた一番の重罪人(?)は、『鎮静』を餌に、私に水着着用を強要したフィン様だと兄様達は思っているらしい。


そしてそれはアシュル様方も同じだったみたいで、フィン様は王宮に戻ってから、改めて制裁を科される事になったそうです。いったい、どんな罰を……!?フィン様、ファイト!





◇◇◇◇





午後のおやつの時間に合わせ、断罪を終えて帰ってきたヴァンドーム公爵家の方々からお茶のお誘いがありました。


……そう。何故か私達は未だに、ヴァンドーム公爵家本邸に滞在中です。


本当なら、日帰りで遊んだ後すぐ王都に戻る予定だったんだけど、水着騒動の余波に加え、アシュル様とフィン様が断罪に加わる事となり、結果、皆で残る事となってしまいました。ヴァンドーム家の皆様方、お世話になります。


「エレノア嬢でしたら、いつまでも滞在なさってください!いや、寧ろここに永住してくださっても全然かまいません!!」


そう朗らかに言い放ったアーウィン様と、兄様達との間に一触即発の空気が張り詰めた時は、真面目に肝が冷えました。


話を元に戻すと、どうやら私達をお茶会に誘った目的は、「皆様をこちらにお招きした当初の目的を進めたい」からだそうです。

あ、そういえば私達、元々は、海の白真珠の養殖の事業提携を進める……という理由で、こちらにやってきたんだよね。すっかり忘れていました。


「というか、既に干物干し機やフリーズドライで作った果物や野菜の輸出計画、海鮮の新たなる調理法……って、事業提携が増えまくっているんだよね。このまま海の白の養殖事業まで締結しちゃったら、貴族家の勢力図的によろしくないかな」


オリヴァー兄様曰く、ただでさえバッシュ公爵領は、私が発案した場外市場計画やフリーズドライ製法による莫大な利益が予想されているのに、そこにもってきて、更にヴァンドーム公爵家との諸々の事業提携による莫大な利益もプラスされるとしたら、うちの領地だけ一人勝ち状態になってしまうらしい。まあようするに、貴族間のパワーバランスが崩れるのだそうだ。


「……そういう訳でして、海の白の養殖事業については、我がバッシュ公爵家だけでなく、王家も噛む事にして頂きたいのです」


「うん、反対する理由はないね。寧ろそんな美味しい話に噛ませてくれるなんて光栄だよ」


「ああ、ヴァンドーム公爵家うちも構わないよ。それに、大規模な海外輸出となれば、やはり王家の威光があった方が、色々とやり易いしね」


お茶会の席で、オリヴァー兄様の提案を、アシュル様とヴァンドーム公爵様が快諾してくれる。


確かに養殖事業に王家が係わってさえいれば、製法を盗もうとしたりする輩も手が出しづらくなるだろうし、国外で模造品などのトラブルがあったとしても、速やかに動く事が出来る。まさにウィンウィンですね。


「……にしてもまさか、海の白の元が、貝の中に入り込んだ異物だったとはね……」


アーウィン様が、目の前に置かれた様々な二枚貝と海の白を見ながら、しみじみそう口にする。


「はい。海の白が採れる貝の裏側を見てくださればお分かりになると思うのですが、元々海の白とは、二枚貝の中に入り込んだ小石などの異物を、貝が自分の分泌液で包み込んだ結果できるものなのです」


「成程。つまりは貝の防衛本能というわけだ」


クリフォード様、その通りです。


「ええ。だからこそ、天然の海の白は形が歪なものが多いんです。なのでこの貝の習性を活かし、統一した品質の海の白を養殖する為には、母体となる二枚貝の稚貝を専用の籠に入れて数年間育てて大きくした後、小さな真円の核を用意し、生きた貝にそれを入れ、更に数年海の中で成長させるんです……けど……」


「エレノア嬢?」


「申し訳ありません。私もなにぶん素人ですので、これ以上詳しい事をお教え出来ないというか……」


そうなのだ。


これ、以前見た特集番組の内容をザッと覚えていただけの素人情報だから、稚貝の育て方や、真珠核の入れ方、更に真珠核を入れた後の育て方なんかは、詳しくは知らないんだよね。そもそもこの世界での貝の生態もよく知らないし……。


「ああ、それなら僕が詳しく知っていますよ?」


不意に、私の隣でお茶を飲んでいたヘイスティングさんが手を上げる。


「僕の専門分野は生物学ですからね。特に真珠……いえ、海の白に関して言えば、淡水の貝でも似たようなものを作れるのか、研究した事がありますので、お役に立てると思いますよ?」


おおおっ!!専門家キターー!!しかも、実際研究していたって、なんという僥倖!!


そういえばヘイスティングさんのチートスキルって、植物や微生物の品種改良だもんね。


やせた土地をも豊かにする、そのスキルをフル活用して作る海の白……。な、なんか凄い事になりそう。あ!公爵様やアーウィン様方が目を輝かせている。アシュル様やオリヴァー兄様も、興味深げにヘイスティングさんを見ている。


「というか、是非協力させてください!死ぬ気で頑張らせて頂きます!!過剰労働は得意です!!私の事は『この海の敵めが!』って感じに、存分にこき使ってやってください!!」


「いやいやいや!今世も過労死したらどうするんです!?」


というか、『海の敵』ってなに!?ヴァンドーム公爵家の皆さんもドン引きしているんですが!?流石は社畜気質の元日本人!!


「エレノアちゃんの言う通りよ?そもそも貴方も被害者なのだし、女神様の愛し子をこき使うなんて、そんなバチ当たりな事出来ないわよ~!」


相も変わらず、白いウミガメ姿の奥方様が、「ないない!」というようにヒレを左右に振っている。……というか奥方様、なぜに私の膝の上に鎮座されているんですか?


「……リュエンヌ……。いい加減、カメから離れないか?」


流石の公爵様も苦言を呈したが、奥方様の方はというと、どこ吹く風とばかりに目をぱちくりとさせ、首をコテンと傾げた。……あざとい。


「だってこの姿の方が、エレノアちゃんが気さくに接してくれるんだもの!将来の義娘とは仲良くしたいじゃない?」


え?それが理由!?確かに、あの神々しいまでに光り輝く美少女な奥方様だと、恐れ多くて一歩引いちゃいますけど……。あっ!アルカイックスマイルにでっかい青筋を立てたオリヴァー兄様が、奥方様を持ち上げて公爵様に返却した!きっと『義娘』って言葉にキレたんだな。奥方様も、「もーっ!」ってプリプリしないでください、可愛いですから。



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後にアリアさんが白いウミガメ相手に、「エレノアちゃんは私の義娘なのよ!?」「ずるいわ!私だって義娘欲しい!」と口喧嘩している姿を見た者がいるとかいないとか。

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