第470話 リアムといっしょ
※顔面偏差値の4巻及び、コミカライズ1巻の予約が始まっております。
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リアムと一緒の入浴は……。
ハッキリ言おう。無茶苦茶楽しかった!!
「リアムー!!見て見て!凄いよ!!お湯の中に魚が泳いでる!!」
「こっちも凄いぞエレノア!ほら、こうして見ると、海と湯の境目がないように見える!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!最高!!」
……風呂に入る前は互いの入浴着に照れ、モジモジしていた私達だったが、迎賓館に特別に作ったという大浴場に足を一歩踏み入れた瞬間、そのあまりのグレードの高さに、テンションが一気に上がった。
流石は水の魔力にかけてはアルバ王国随一を誇ると言われるヴァンドーム公爵家。
その潤沢な魔力をいかんなく発揮し、海底から湧き出る温泉を各部屋の浴場に引いているのだそうだ。その中でもここは、特に力を入れて作られているらしい。
そういえばグラント父様は、国内の自分が気に入っている、あらゆる温泉地から魔法陣使って、バッシュ公爵家とクロス伯爵家に温泉引いていたっけ。
ということは、グラント父様の魔力量って、三大公爵家と張るってことだよね!?さ、流石は『ドラゴン殺し』の英雄!改めて凄い!
そして、いつかはこの海底温泉もお気に入りチョイスに加えてもらえるよう、さり気なく進言しておくとしよう。
ところでこの大浴場、開放感あふれる白亜のガセボ風な作りになっているんだけど、海の色と同じ、エメラルドグリーンの少しぬるめな温泉が、何十畳もありそうなだだっ広い浴槽の中に、滝のように注ぎ込まれているのだ。所謂、かけ流し状態ってやつです。
しかもお湯の中にはなんと!水中花と水草が生えており、その中を小さな魚が群れを成して泳ぎ回っているのだ。まるで海中で温泉に入っているみたいで、更にボルテージが上がります!
しかもさっきから、群れで私の周囲をグルグル回遊しながら、なんか身体をあちこちツンツンつついてくるんだけど……もしやこの魚、かの有名なドクターフィッシュ!?
「エレノア。お前、魚にまで懐かれているのか……」
え?懐かれてる?角質食べられているじゃなくて?
「おい、お前ら!いつまではしゃいでんだ!!さっさと身体洗って出て来い!!」
突如として大浴場に響き渡ったクライヴ兄様の怒鳴り声に、思わず二人揃ってピョンと身体が跳ねる。
実は護衛として、クライヴ兄様とマテオがここまでついて来てるんだよね。それにプラスして、リアム付きの近衛の騎士様方もいらっしゃいます。
あ、勿論、今彼等がいるのは大浴場だけど、私達が大浴場に入る迄は、脱衣所兼レストルームの外に控えていました。
しかし、やっぱり殆ど女性がいないからなのか、アルバ王国の伝統なのか……脱衣所が男女兼用なのにはまいった。おかげで急遽、シーツを使って私の脱衣スペース作る羽目になったし。
そういえばマテオ、私とリアムが一緒に入浴するのが決定した後、「エレノアがリアム殿下に不埒な行為をするかもしれないから、私も同行する!!」って言い張っていたんだよね。
まあ、好きな相手が
分かっているが、「私は痴女じゃない!」と、口喧嘩になっちゃったのはお約束ってやつです。
でもまあ、マテオは女友達みたいなもんだし、「じゃあいいよ!マテオだったら別に気にしないから、一緒に入る?」って言ったんだけど、なにやら真っ赤になって狼狽えていたな。
結局、満場一致でマテオの同行は却下されたけど……。ひょっとしてマテオってば、リアムの生肌(くどいようだが裸ではない)を直で見るのが恥ずかしかったのかな?
ふふ……。なんだかんだ言って、マテオってば純情だよね。
何はともあれ、これ以上クライヴ兄様に雷を落とされる前にと、私とリアムは慌てて湯から出て、洗い場へと向かった。
「リアム!絶対見ちゃ駄目だからね!?身体洗っている間は、背中向いててね!!」
「お、おう!分かった!!」
白い肌を赤く染め、慌てて後ろを向くリアムに、うっかりほっこりしてしまう。
これが兄様方やセドリックだったら、「服着ているのに、何を恥ずかしがってんだ」とばかりに、照れて嫌がる私の抵抗もなんのその、しっかり髪の毛を洗ったり、背中を流してくれちゃったりするからな……。
うん。皆には是非とも、このリアムの純粋さを見習ってほしいところだ。
あ、でも洗髪は、「これぐらいはやらせろ!」と言って洗ってくれましたけどね。
なんでも、こんな時があろうかと、アリアさんに頼んで髪の毛を洗う練習をさせてもらったんだそうな。
……くっ!なにそれ、可愛い!!きっとアリアさんも内心身悶えていたんだろうな。
そんなこんなでお湯で泡を流し終わった後、顔を上げたらリアムも顔が赤くなっていて、再び二人で照れまくったり……って、なにこのアオハル展開!?
それにしても、リアムもセドリック同様、すっかり逞しくなったよね。
ジョナネェに怒涛の如く文句を言って、極力肌にピッタリ張り付かないような入浴着に改良してもらったけど、それでも分かる、このスラリと引き締まった体形!
流石は選ばれしDNAの頂点に君臨する一族だ。……おっと、あんまり見過ぎると、鼻腔内毛細血管が決壊する!
「にしても……さ。最初は入浴着ってどうなんだ?って思ったけど……その……。凄く可愛いな。エレノアによく似合ってる」
モジモジと恥じらうように頬を染めたリアムにそう言われ、パーンと私の脳天が噴火した。
「え……あ……ありがと……」
「う、うん……」
くっ……!油断した!!
流石はリアム。ワンコ系末っ子属性で仕掛けてくるとは!!ううっ!な、なんか一気に逆上せたような状態に……。
「大丈夫か?エレノア。顔赤いし、もう風呂浸かるの止めて上がるか?」
「え?あ、ううん大丈夫!で、でも浸かるのはちょっとだけにしようかな?」
確かに、ちょっと逆上せ気味になってるけど、折角の温泉なんだから……って、ん?なんか魚達が一か所に集まっている?
気になって、リアムと共に魚のいる場所まで近づいてみると、なにやら魚達が一心不乱に何かをつついている。……えっと……あれは、水草……?
「――ッ!?」
「あれ?なあ、エレノア。あれって……」
「リ、リアム!もう出よう!!」
なおも、魚の群がっているモノをよく見ようとしているリアムを無理矢理せかし、温泉から急いで上がる。
うん、私は見なかった。水中花や水草に紛れて咲いているぺんぺん草なんて、絶対に見なかったんだからね!!
◇◇◇◇
お風呂から上がった私は、バスタオル片手に待っていたクライヴ兄様により、髪の水気を丁寧に拭かれた。当然、身体の水気は自分で拭きました。
その後、下着を身に着けた私の許へとタイミングよく現れたシャノンの手により、ドレスに着替えさせられ、丁寧に乾かされた髪をセットしてもらう。
ちなみに今回の装いは淡い水色のカジュアルドレスで、髪の毛は白いリボンでサイドを緩く整えております。
「シャノン、その恰好は可愛すぎるんじゃないかな?もっと普通の……平民が着るような服でもいいと思うんだけど」
と、これまたいつの間にやらやって来たオリヴァー兄様の苦言(?)を受けたシャノンは、「何を仰いますか!お嬢様のこの、溢れんばかりの愛らしさを見せつけずしてなんとします!!」と反論する。
流石はシャノン。相変わらず美に関しては、たとえ相手がオリヴァー兄様であろうとも一切の妥協を許さない。まさに美容班の鑑である。
「確かに、エレノアの愛らしさを知らしめるのはやぶさかではない。しかし……!」
なおも言いつのろうとするオリヴァー兄様の肩に、クライヴ兄様が手をかけ、首を振る。
「諦めろ、オリヴァー。奴らはエレノアの
「ッ!クライヴ……た、たしか……に……」
あっ!オリヴァー兄様が俯いて肩を震わせ出した!ややっ!クライヴ兄様まで!……ん?仕切り代わりのシーツの向こう側から、リアムの「ぶはっ!」と吹き出す声が!
「だ、ダメだよリアム、笑っちゃあ!」って、セドリックの声も聞こえてくる。けどセドリック、貴方の声も微妙に震えている気がするんですけど!?
見ればシャノンの横で、ウィルが丸まってる痙攣しているよ。……きっとシーツの向こう側でも、騎士様方が転がっているんだろうな……。
「おい、ウィル!何やってんだよお前」って、シャノンが息も絶え絶えなウィルを不思議そうに見下ろしている。
シャノン……。分かってないと思うけど、ウィルのこの状態、貴方の作ったアレの所為なんだからね!?
にしても
さて、私の身支度も終わったので、改めてヴァンドーム公爵家御一行様の許へとご挨拶に向かう。
同行者は筆頭婚約者であるオリヴァー兄様と、専従執事兼婚約者であるクライヴ兄様。そしてやはり、婚約者であるセドリック。つまりはオールバッシュ公爵勢である。
ちなみにだけど、リアムとマテオは先程挨拶が済んでいるので、今回はお留守番。不服そうだけど、これってあくまでも、バッシュ公爵令嬢への謝罪の場だからね。
「エレノア、僕達が全力で君を支える。だから君は、とにかく大人しくしていておくれ」と、オリヴァー兄様に釘を刺されつつ、何気に不安そうなリアムとマテオに見送られながら、いざ出陣!
いや~、それにしても……。まさかリアムとのお風呂が、こんなに楽しいなんて思わなかったな。まるで友達と遊びに行った感覚でしたよ。
「リアム、帰ってきたら、また一緒に温泉入ろうね!」
こっそりそう言った瞬間、リアムの顔がパアッと輝いた。……くっ!ま、眩しいっ!!
「……エレノア。ヴァンドーム公爵に会う前に、自らダメージ食らってどうするの?」
セ、セドリック!はい、仰る通りです。というか、顔が凄く怖いんですけど?
「温泉浸かって頭ふやけてんのか?とっとと気ぃ引き締めろ!」
ク、クライヴ兄様!確かにリフレッシュしましたけど、ふやけてなんか……って、こちらも顔が怖いッ!
「ふふ……流石はリアム殿下。全く異性として意識されていなかったようですね」
オ、オリヴァー兄様!?なんか副音声で『流石は真っ白のお子様だよね』って聞こえてきたんですけど!?
「この万年番狂いー!!お前、やっぱり表出ろー!!」
「リ、リアム殿下!」
「お気を確かに!!」
リアムの怒声と近衛騎士達の焦り声をバックミュージックに、私は兄様達に引っ立てられるように、ヴァンドーム公爵様方の許へと向かったのだった。
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ぺんぺん……。多分、エレノアが末っ子属性にやられ、頭がパーンとなった時に、「ポンッ」と咲いたと思われます。
ひょっとしたら黄色いあんちくしょうも、ひっそり咲いている可能性ありですね。
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