67 マジック・クリーン、驚きの浄化。
翌日、狼の死体を研究班からどうやら瘴気汚染された魔物がこの狼を襲っていたというのがわかり、再びその魔物が何なのか調査する事になった。
ユウヴィーはより深い深層に瘴気について詳しく知る事が出来ると好奇心をたぎらせていた。
すでに踏破していた場所には、騎士たちが先行し、安全確認をしていた。すぐに最下層へ目指せる準備がされており、ユウヴィーとエリーレイドはさらに奥に進んだ。
数時間もしない内に最下層に到着したが、活発な瘴気汚染された狼は存在せず、どれも弱り切っているだけだった。
他の瘴気汚染された魔物は見当たらず、狼に瘴気汚染した原因となる魔物の存在が見つからなかったのだった。
「エリーレイド様、このダンジョン浄化してしまっていいでしょうか?」
ユウヴィーは瘴気がどこからやってくるのか、その原因となる元が最下層でも見つからなかった。一度、浄化すればどこから瘴気が湧き出ているのか、わかるのではないか、と思っていた。
「それじゃあ、瘴気がどこから発生しているのかわからなくならない?」
「一度きれいさっぱりすることで、どこから発生しているのかわかるかもと思いまして……それにもし浄化で瘴気が消滅するのであれば、瘴気の元そのものを消せた、となるのかなと」
エリーレイドは思案し、問題ないと判断した。
「ええ、いいわ。好きにやっちゃって」
ユウヴィーはエリーレイドから問題ないと言われたことで、ダンジョンそのものを最下層から浄化することにした。
浄化の光があたりを照らし、天井も明るくさせていった。
――キィキィ!
鳴き声がし、上を見上げると高い天井に隠れていた蝙蝠が浄化から逃れるように、飛んで行った。
「ユウヴィー!」
エリーレイドはすぐさま蝙蝠に向けて影魔法で拘束し、ユウヴィーがそこを光の魔法で浄化した。落ちてきた所で騎士たちがとどめをさした。
近寄ってみると普通の鳥より少し大きいくらいの蝙蝠だった。
「さすがに不味そうですね」
「えっ?」
「あ、いえ……普通の蝙蝠ですね。浄化してしまいましたが、これが狼を弱体化させていたのでしょうか?」
「研究班に確認させてみない限り、わかりませんわよねぇ」
「あの狼に比べてもそんなに大きくありませんし、ここまで来る間にも襲ってくる気配なかったですね」
「とりあえず、浄化しながら地上に戻りましょう。瘴気の元ならもっと強い魔物のはずですし、ユウヴィー浄化の続きを」
「はい!」
ユウヴィーは浄化を強め、瘴気の発生する場所がないかあたりを見ながら、地上へと向かった。
地上へ向かう途中、蝙蝠が浄化の光を嫌がるように逃げたりし、数人の騎士がそれに当たったりしたがユウヴィーが地上に出てから浄化をした。この時、どのような瘴気汚染の症状なのか、確認をせずに浄化したことがのちのち問題となるのではないかと研究班が指摘があがる。だが、汚染されて地上に戻って経過観察を数時間したが肌など腐乱してないことから軽微な瘴気なのではないか? と結論づけていたのだった。
狼の腐乱死体から、瘴気そのものが身体を弱体化させ、最終的に死亡するタイプのものだろうと研究班は見立てたのだった。腐乱した狼の死体も死後からの経過などからの結論だった。
病魔の巣窟の完全に浄化をし、地上に戻る際に蝙蝠を複数逃してしまうが、洞窟から出た蝙蝠は長く生きれない事から些細な事だった。
「結局、浄化した後に瘴気の発生源となる場所があるか探してみたけれど見つからず、だったわね」
「隅々まで浄化されるように強めにしたことで病魔の巣窟そのものが完全に浄化された、と思ってもいいのでしょうか?」
「数日は様子を見て、研究班から問題なければ学園に戻りましょう」
エリーレイドは疲れたのか専用のテントへと向かった。
ユウヴィーは病魔の巣窟の入口の方を見て、本当にここが瘴気の発生場所なのか、疑問に思うのだった。
空を飛ぶ魔物は基本的にあまり存在しない、太陽に近い空は瘴気が浄化されるからだ。特に夜目に弱く、昼間の活動をしている鳥、渡り鳥などは瘴気に強い。
ただ、蝙蝠という存在は鳥ではなく、動物であった。鳥と動物は違うため、ことの重大性を見逃してしまうのだった。
洞窟内で生息していた蝙蝠は、外界へと飛び去って行った。それがどのような瘴気を持っていたのか、誰も知らない。
そして、病魔の巣窟は以前のような場所ではなくなり、ただの魔物も瘴気もないダンジョンとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます