32 変化する環境

「空気を読むのは悪い事じゃない、だけど、気持ちまで嘘をついて、空気を読んで、身を引くためにわざと断ち切ろうとするな!」

 突然のユウヴィーのキレ具合に二人はたじたじになっていた。それもそうだ、彼女と身分が違う、まさかそういう態度で来るとは思わなかったのだ。

 

「リンク皇子、今まで何を見てきたのか知らないけれど、彼女はあなたを裏切るような事をしたのか? お前も裏切っていただろうけど、相手のことを知ったつもりでいるんじゃない! 話し合えバカ! ちゃんと彼女の顔を、表情を、仕草を見てみろ!」

 

 リンクはギャル風な婚約解消したての彼女を見たのだった。

 

「あと私たちだけだった時の態度はどこにいった、どうしてそんなチャラけたままなんだ。リンク皇子に合わせた結果なのか? なんでもっと話し合わないの。リンク皇子が無理していた事だって前から気づいていたんだろう。そうなんだろう!?」

 

 ユウヴィーは強い意思を宿した目で彼女の方を見ると、消え入るような声で返事をした。

 

「はいぃぃ」

「え……本当なのか」

 こくんと頷く彼女を見て、リンクはうつむき加減になり、ぼそりと謝ったのだった。

「ごめん、気づかなくて……」

 

 ユウヴィーはここで冷静になり、自分自身がカッとなってやってしまった事に焦り始めるのだった。

(や、やっばぁぁぁ……た、他国の皇子と公爵令嬢を引っぱ叩いてしまった。しかも、説教ムーブかましてるとか、これ殺される流れじゃ……)

 

「ごめん、ごめん……気づけなくてごめん」

「いいんです、私は最初から貴方を支えようと思っていましたの、いいんです」

 二人は立ち上がって、抱き合い、互いに懺悔し合っていた。

 

「君とやり直したい」

「お許しが頂けるのなら、私もです」

 そして真の夫婦となるのを目撃したユウヴィーだった。

(完全に蚊帳の外だけど、めでたしめでたしよね? 私不敬で処されないよね?)

 新たな不安を胸に抱いたユウヴィーだった。

 

+

 

 数日後、二人は今回の件を本国に持ち帰り、ただちにアロマオイルのお香を生産体制や該当する植物の育成、量産、事業家を即座におこなうのだった。

 気候、土壌環境の違いもあったが、数週間で軌道に乗り、一か月経つ頃にはアロマオイルのお香の成果が出てハマト国固有の瘴気問題はみるみるうちに無くなっていったのだった。

 不敬罪で処されると思っていた数か月間、ユウヴィーはハマト国と二人に協力を可能な限り行い、手紙のやり取りでの経過報告をおこなっていた。彼女は元から処されることはなく、リンク皇子にとっては国としてもプレイベートとしても救世主のような存在だった。

 

 だが、彼は恥ずかしくてユウヴィーには伝えられずにいたのだった。それを知る元ギャル風な清楚な優等生な婚約者はすがすがしい笑みで横にいるのだった。

 

(とりあえず、ハマト国の瘴気問題も解決したし、めでたしめでたしよね。私も不経済で処される雰囲気ではないし……うーん、原作で何かあったような気がしたけれど、思い出せないし、特に重要なイベントでもなかったのだろうし、これで殉愛回避よね! やったー!)

 と彼女は浮かれるのだった。

 

+

 

 一方そのころ、エリーレイドは……

 

「アロマオイルのお香によって瘴気ダニは壊滅、蝗害の原因となる瘴気バッタの大群は、アロマオイルのお香の元となる植物がカマキリの増殖を促進し、バッタの天敵であるカマキリが増えた事により、蝗害は傾向は低く、起きなくなると予想されますぅ!?」

 

 エリーレイドは視察団の報告書を読み上げて、わなわなと震えていた。

 

 ハマト国に蝗害が発生すると考え、エリーレイドは対策を立てていたが、その日になっても何も起きず頭を傾げていたのだった。何かがおかしいと密偵をハマト国に放ち、状況の確認をおこなったのだった。報告内容が信じられないものだった為、今度は視察団を派遣し、生態調査の報告書を作成させたのだった。

 

「ああぁぁんのシャイニングマジカルチィィタァァァア!!」

 

 彼女の食への不安は杞憂に終わったが、腑に落ちないご都合展開に叫んだのだった。

 

「我が主、この攻略本によれば蝗害の被害の後に、諸外国が援助を行いハマト国は災害前よりもたくましく復活すると記載があるのですが――」

 

「お黙り! マーベちゃん!!」

 

 むんずと掴まれた使い魔のマーベラスはいつもよりも多くエリーレイドに吸われるのだった。

 

――すーはーすーはー!! すーはーすーはー!!


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