ちょっと神様!私もうステータス調整されてるんですが!!
べちてん
第1話 転移
「えぇ~!なにこれ可愛い~!」
「でしょ~!彼ぴっぴが誕生日にって私にくれたの!」
「きゃ~!」
なんだよ彼ぴっぴって。対して可愛くもないものに可愛い可愛い連呼して何が楽しいんだか。これだから女子高生はよくわからない。かという私も女子高生なのだが。
私は典型的な陰キャだった。
好きなものはアニメと漫画とラノベに小説。学校から帰っては懲りずに対してうまくもない絵を描く日々だ。
私は高校生が嫌いだ。思ってもないことを周りと合わせるために、仲間外れにならないために口にし、自分を押し殺しながら生きているこの集団が嫌いだ。
もしかしたらこれはその集団に混ざれていない自分に対する怒りを他人へと向けているだけなのかもしれない。
惨めだ。
みんなは異世界に行きたいと思ったことはある?
もちろん私はある。何なら毎日のようにそう思っている。ありもしない神に対してひたすらにお願いをしたり、ありもしない魔法をあると信じて詠唱してみたこともある。
今思えばそれは黒歴史なのだが、私はそれを嬉々として行っていたのだ。
冬の寒さもようやく退き、季節は春を迎えた。
当然私に花見をする友達など存在するはずもなく、私は1人で近くの河川敷まで桜を見にやってきていた。
私は春が好きだ。
冬のように寒いわけでもなく、夏のように暑いわけでもない。
花は咲き乱れ、さわやかな風と共に新生活をスタートさせる人もいる。
今までの生活がリセットされるような感じ。
この雰囲気が好きだ。
私は花見などするような性格でもないのだが、何か新しいものを求めてこうやってなれないことをしてみたわけである。
これが成功であったのか、失敗であったのか。それは今となってもわからない。でも、これが私の人生の大きなターニングポイントであったのは間違えないのだ。
私は出会ってしまったのだ。神という存在に。
慣れないことをするものではない。私は人混みに酔い、体調を崩して花見スポットから少し外れた路地で休憩をしていた。
どこかのお店で休憩しろ?そんなこと陰キャの私にできるわけがないじゃないか。
すると、路地の奥から話し声が聞こえてくるわけだ。
もしかしたらここはヤンキーのたまり場で私のような貧弱物が入っていい路地ではないのかもしれない。そう思い、私はすぐに路地から出ようとした。
「え、ここはどこ?」
体育座りで膝と膝の間にうずめていた顔をあげるとそこは先ほどまでいた路地とは全く別の場所であることに気が付いた。
青々とした花の咲き乱れる庭園。
ふと先ほど声が聞こえたほうを見ると、そこには3人の人が立っていた。
目が合うと、その3人は驚いた表情を見せてこちらへ寄って来た。
「君はどうしてここにいるんだい?」
「わかりません。気が付いたらここにいました。」
そういうと困ったような表情を見せたその人たちはひそひそと話し始めた。
ここはどこだろう。私は誘拐されてしまったのだろうかと不安で不安でたまらなかった。今すぐ叫んでどこかへ逃げたかった。
しかし、体はすくんで動かない。私はうつむきながら3人の話が終わるのを待つしかなかった。
話が終わったのだろうか、しばらくすると最も年齢が上のように見える年老いた1人の男性が近づいてきた。
「申し訳ないことをした。」
私はなぜ謝られているのかわからない。まず説明をしてもらわないと困る。
「あの、どうしてですか?」
「うむ。どうしてこうなったのかの説明をさせていただく。」
年老いた男性は1つ咳ばらいをするとこうなった経緯を話し始めた。
「ここは神域。わしたちは今、地上へと偵察に行こうと神域と地上をつなげていた。どうやらそなたはそこに迷い込んでしまったようだ。」
は?神域?なんだそれ。
「え、あの、帰れないのですか?」
「そうじゃ。そなたを私たちは元居た世界に返すことができない。」
「な、なんでですか?」
「ここはね、普通人間が入れる場所ではないの。なぜならこの場所は死後の世界に存在するから。あなたがいた世界ではあなたは死んだことになったのよ。死者を生き返らせるということはいくら神であっても許されない禁忌なのよ。だからあなたをもとの世界に戻すことはできない。」
「だったら、私はこの後どうなるのですか?」
「そうだね、通常ならこのまま記憶を消去してまた別の生命として地上に戻るのだけど、今回は僕たちのミスでこうなってしまったからあなたを生き返らせることにするよ。」
「え、でもさっき生き返らないって……。」
「それは元居た世界にはって話じゃ。そなたは魔法の世界があると言ったら信じるかね?」
……願い神様に届いちゃったよ。
「そなたにはそこに転移してもらう。もし転移をするのが嫌なのであれば申し訳ないが記憶を消去して通常の輪廻に組み込むことになるのじゃが……。」
「魔法の世界へ行かせてください。」
「そうか。わかった。そなたがいた世界とは違って今から行く世界はまだ発展途上の世界だ。そのために様々な危険が待っているだろう。そなたがその世界で問題なく生きていけるようにすでに調整を済ませておいた。あっちの世界でトップクラスのステータスになっていると思うぞ!古龍も倒せるんじゃないか!?」
「こ、古龍はちょっと強すぎます!!」
「そうか?じゃあ古龍の半分にしとくわい。」
それでもちょっと強すぎる気が……。
「いまからあなたをそっちの世界の神様に引き渡すわ。一瞬意識が途切れるけどすぐに復活するから安心してね。」
その言葉を最後に私の意識が途絶えた。
気が付いたとき私は神殿にいた。
「ようこそいらっしゃいました!あなたは西園千成様で間違いありませんね?」
「はい。間違いないです。」
「あちらの世界の神から事情は伺いました。心中お察しいたします。」
こちらの世界の神様は好青年って感じだ。元居た世界は神様が3人いたけどここは1人のようだ。
「あちらの世界の人間の方のステータスじゃ少々こちらの世界では厳しい思いますのでステータスを2倍に向上させていただきました。ですので、あちらの世界でも問題なく生きていけると思います。」
「あ、あの、すでに調整が……。」
「では、早速お送りいたしますね。」
「あの、ちょっと!」
私もうすでに古龍の半分のステータスなんだけど!!
2倍にしたら古龍と同じじゃない!!
「神様!ちょっと!」
「では、行ってらっしゃい!!」
「ちょっと神様!私もうステータス調整されてるんですが!!」
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