第41話 課題

◆クライアス国立聖セントオーディン学園

ブンドル教授室



はあ。

何を勘違いしたのか、キャロラインと言い争いになっちゃった。

まるで痴話喧嘩みたい?な、わけないか。


とにかく、学園内では出来るだけ目立たず学業に専念したいボクにとっては困った事態になっていたんだ。

だけど幸か不幸か、ブンドル教授に呼び止められ、他生徒に注目される前に講堂を離れる事が出来た。


それは良かったんだけど、そのブンドル教授に教授室に来るように言われてたった今、教授室に入ったところ。

もちろんキャロラインも一緒だ。


ブンドル教授。

かなり怒っているようだけどボク、何か仕出かしたっけ?ってキャロラインを見たら、睨まれて非難する気満々の圧力を送ってくるんだけど、えっ?悪いのはボクのせい?



「その顔だと、何で呼び出されたか分かってない様だな。二人とも」


「あ、はい?」

「わ、私は理解しておりますわ、教授!」((レブンちゃんとして!私を巻き込まないでよ!))


ブンドル教授に嫌み?を言われたみたいだけど、思い当たる節がないから実感がない。

それとキャロラインの言い分はボクの言い分なんだと思うけど。

キャロラインは教授にニコニコ謝りながら、ボクには器用に魔獣みたいな顔で、目だけで言葉を伝えてくる。

その魔獣顔は勘弁して欲しい。



ふぅっ

呆れたように頭を振りながら背を見せるブンドル教授。

その目線の先は姿見がある。


あれ?

落ち着いて部屋を見れば、何故か部屋じゅうに姿見がある。

初めてブンドル教授の部屋に入ったけど、まるで壁代わりで置いてるみたいに四方を姿見が囲んでいるんだ。

こんなに沢山の姿見、どうするつもりなんだろう?


ジロッ

「……と、いうわけで、君たちの授業態度は最悪で美しさがない。授業を真面目に受けてくれる生徒達に申し訳なくないかね?」


ボクが姿見を見いっていると、振り向いたブンドル教授に睨まれた。

あう、今はそれどころじゃなかった!

ボクらは教授に怒られているのだ。

ボクは思わず全身を硬直させる。

それをキャロラインが呆れたような目をして見てくる。

何だよ?

意味不明に騒いで教授を怒らせてたのはキャロラインのせいじゃないか!っ的な目線を向けたら、今度は屑を見る目になっている。

なんなの、この扱い。

ん?


「レブン、最近小さくなったか?」

「あ、いえっ」


「それに声も高いし顔が色白で綺麗だ。む?まつ毛も長いし女みたいに華奢だな。まさかー」


い!?

ブンドル教授に女になった事を気づかれた?

教授は髪を整えながら不思議そうにボクと自身を見比べてる?


「流行ってるのか?そういうの」

「へっ?」


「キャロラインもそうなのかー」

「流行り?」

「そんなわけ、無いでしょう?!」


教授の言葉に何故か、キャロラインが喰ってかかっている。

な、何を考えてるのかな?

この教授は変わり者で通っていて、女嫌いは有名だ。


そしてキャロラインは女だし、ボクは今は性別が女だ。

もしかしたら教授は、ボクらの女臭さに辟易しているのかも?


「ふむ。レブンは男、なんだが、君達を見ているとキャロラインの方が男っぽくて、レブンが女っぽい。てっきりキャロラインが男装でレブンが女装かと思ってな」

「馬鹿なの!?ドレス着てるのに何で男装なの?」

「ボクも男子学生服……」



何なの、この教授?!

ボクらを観察するように見ていたと思ったら、キャロラインが男装でボクが女装?

やはり何かに気づいた?

いや、ただの変人なだけだ。


「いや、私が興味あるのはその中身の雰囲気の方だ。キャロラインはほぼ男……」

「喧嘩売ってんですか?!」


えーと?

キャロラインが教授の机に身を乗り出して声を荒げる。

そーいうところを男っぽいって見られるんじゃ……


キッ

いやいやキャロラインが読心術を持っていると言われたら信じるくらい、めっちゃ反応されて思わず目線を反らした。

最近、キャロラインの圧が強いんだよう。


コホンッ

「話が逸れたが、この様な授業態度では君達に私の授業を受ける資格を問わなければならないと思う」


「は?資格ですか?」

「!?」


この話を聞いて、ボクとキャロラインは顔を見合せた。授業を受ける資格なんて聞いた事もないからだ。

仮に資格が必要だったとすれば、学園に入校する時の入校試験がある。

最低限の基礎学力を確認する為のもので、平民を対象にしたもの。貴族は家庭教師から習ってる前提で免除されている。



「資格と言っても、ありきたりの試験をするつもりはない。私の専門である薬草学に沿った課題を君達に課す。日頃の講義を真面目に聞いていれば出来る課題だ。期日は一週間。それを成し遂げられたら、引き続きの講義参加を認めよう」


「薬草学の課題……!」

「……………」


何故か、真っ青なキャロライン。

薬草学ならボクの望むところだけど、どんな課題を出す気だろう?

可能性があるのは教授が執筆した学問書や文献からの問題の抜粋だけど、そんなもの、三日もあればとりまとめなんて出来る。


ニヤリッ

意味有りげに口端を上げるブンドル教授。

どういう事?




「書物からの抜粋などでお茶濁しするつもりはない。君達には私がこれから言う病名に効く薬草の採取を命じる。間違いなく採取出来たら、それを資格として認めよう」

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