第2話
その土蔵へ連れ込まれる時も、そこから出された時も、ひろ子は目隠しされていた。解放された地点は新宿公園の裏手だが、そこまでは車で移動している。ひろ子の体感時間としては、車に乗っていたのは約三時間半だった。
「三日間ひたすら時計とにらめっこの生活でしたからね。私の時間感覚、かなり正確になっていたはずです」
警察の捜査員に対して、ひろ子は、そのように証言した。
しかし、移動時間が正確に三時間半だとしても、それは監禁場所が新宿公園からぴったり三時間半の距離にあることを意味しない。犯人グループは、場所が特定されないよう、おそらく故意に遠回りしたと考えられるからだ。
ならば、ひろ子が監禁されていたのは、新宿公園からぴったり三時間半の距離ではなく、三時間半の範囲内ということになる。座敷牢みたいな土蔵がある邸宅というのは確かに特徴的ではあるものの、それだけ広いエリアの中からピンポイントで探し出すのは難しいだろう。
警察の面々は、そう考えたのだが……。
「いいえ、場所を特定するのは簡単だと思いますわ」
上品に微笑みながら、ひろ子は自信たっぷりに告げるのだった。
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