第02話 課金1円も許さじ

この女性とのいさかいはこれで二度目だ。

山口市の矢原駅から周防下郷駅の往復運賃払うから、僕の電子書籍をダウンロードして欲しいと懇願すると、快諾の後に取消。


「頼まれたら断れない性質だから一度は首を縦に振ったけど、実際、ダウンロードしても読まないから」


いやいや、断れない性格って、その後、勢いをつけて断ってるじゃん!

そう言う優柔不断さをカモフラージュするために口論の火種は


「ソーシャルゲームのスクリーンショットの貼付し過ぎ」と言う

「本当にそれが怒りの根源?」と言うような眉唾物の理屈。

確かに多いのは認める。しかし、貼付した理由は、彼奴の指示に従っている、と言う合図、確認の意味合いだった。

或るソーシャルゲームで「1-10」まで進捗したら「トミミ」という強い魔導士に出逢える権利が与えられる。

だったらその道程をスクリーンショットで実況しましょう、みたいな師弟関係のつもりで僕は矢継ぎ早にSTAGEをCLEARして、その日の内に「1―10」まで進捗した。

無論、最終報告は「トミミ」と言う魔導士オペレーターも射止めた上で。

どちらかと言えば、僕はLINEスタンプが苦手だ。回数の多寡では無く、感情や文脈に沿っていない事故やトラブルが、送り主によっては起こってしまうからだ。

僕の大量スクリーンショットは事故やトラブルに相当する?

その怒りが、結果的に電子書籍のダウンロードを白紙にする効力を?

数日間のやりとりで気づいたことは、時間差と言うテクニックを駆使して、

この女性は自分の望む状況に流れを誘導することに長けていると言えそうだ。

長けていると祀り上げても、随分と強引な手口や理由が鼻についたが……。


今回の争点、こちらが用意した最大の武器は誤爆風時間差LINEだ。相手の女性は、作戦で同じ内容のLINEを僕と妻に交互に送っている。

妻が最初で次に僕にLINEして来ていたら、痛恨の誤爆と言うことになるが、削除も無く順番も逆なら、僕たち夫婦を悪戯に傷つける為だけに作為した悪意だと推測する。

どんなに角度を違えて見ても、この書き込み、並びに、誤爆を装った二重投稿に反論の余地など無いだろう。


彼奴に求める賠償は金銭だ。金額の多寡は、今、隅に置いても、彼奴が楽しみにしている課金が1円も出来なくなるまで搾取したい。

他者を傷つける輩に娯楽に興じる余暇など認めてはならない!

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