第22話 同僚の不思議体験。

 私の同僚の女性(Kさん)の不思議体験。


 不思議体験とは言っても、Kさん本人にとってはチョイチョイある日常的なことらしい。


 仕事中、視界のはしを黒い何かがスーッと横切ったり、後ろから肩を叩かれたり等々……。


 この前は、私に『ねえ、さっきそこでSさんのこと見かけたんだけど、いつから休むんだったけ?』とかれた。


 Sさんは病気療養りょうようのために、近々長期の特別休暇きゅうかを取る予定だと私も以前から聞いていた。そして、その日が特別休暇の初日だった。なので、会社に来ているはずはなかったのだ。


 『ゑっ!? 生霊いきりょう⁉ Σ(゚Д゚)』


 

 それに、Kさんは虫の知らせのような経験もあるらしい。


 もう何年も会わず、連絡も取っていない親戚や友人のことを、なぜか突然ふと思い出し、『あの人、今頃どうしてるかなぁ?』なんて考えていると、二、三日後にその人物から連絡があったり、出先でばったりと会ったり、残念なことに訃報ふほうが届くこともよくあるそうだ。


 そしてつい最近、また驚愕きょうがくの出来事が起きた。


 今まで全然興味もなく、特に好きでもないぼう芸能人のインスタグラムを、何の無しにかなり長時間見ていたそうなのだが、翌日、その芸能人の元夫が自殺してしまったのである。


 もちろん、数ある中には偶然ぐうぜん勘違かんちがいもあるかもしれない。それでも、かなりの頻度ひんどでこのような現象が起きているらしい。ちょっとした特殊とくしゅ能力と呼んでも良いだろう。


 他にも、Kさんの家ではしばしば奇妙な音が聞こえるそうだ。


 パキ、ビシ、ボキ、といった、いわゆるラップ音らしきもの。


 Kさん本人は、温度や湿度の変化による家鳴やなりだと思うようにしている。時々宙をただようクラゲのような半透明の物体も、ほこりに光が当たっているだけだと信じている。


 だが、なかんずく、私がもっと驚異的きょういてきだと感じているKさんの能力は、やはりゴキブリを素手でつかめることである。


 カブトムシ、クワガタムシ、トンボ、それにカマキリなどは、私も抵抗なくさわれるが、ゴキブリやカマドウマなどは見るのも嫌だ。生理的に。


 逆に、Kさんはネズミやカエル、そして爬虫類はちゅうるいは気持ち悪くて触れないと言っていたが、私はそれらには生理的嫌悪けんお感は覚えない。


 好き嫌いは人それぞれ、体験する不可解現象の種類も人それぞれということなのだろう。


 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る