第11話(2) 兄弟姉妹
「――優子ちゃんって、一人っ子だっけ?」
昼休みの学食。私は優子ちゃんと、テーブルを挟むように向かい合って座っていた。
「はい。そうですけど……急にどうしたんです?」
私の質問があまりにも突拍子のないものだったせいか、優子ちゃんが戸惑いの表情をその顔に浮かべる。
「いや、実は――」
質問の意図を説明するため、私は榊さんとしたやり取りを、掻い摘んで優子ちゃんに話す。
「へー。榊さん、妹さんいるんですか」
私同様、優子ちゃんもこの事は知らなかったようだ。
「でもまぁ、言われてみればそんな感じもします。意外と面倒見いいし」
「そうね……」
優子ちゃんもよく榊さんに面倒を見られているのだが、今の
「私、昔からお姉さんのいる子が羨ましくて、クリスマスにサンタにお姉ちゃんを頼んだ事もあるくらいなんですよ」
「それはまた……」
ご両親、困っただろうな。妹ならまだしも姉は、可能であるというだけで実際は限りなく不可能に近い。海外ならまだワンチャン、あったかもしれないが……。
「でも、兄弟姉妹がいる感覚ってどんな感じなんでしょうね」
スプーンでチャーハンを口に運びながら、優子ちゃんがふとそんな事を口にする。
「うーん。少なくとも、私の周りではいて良かったって人は少ないけど、それが本心とは限らないんだよね」
自分の家族やその存在を肯定するのは、年頃の私達にとってそれなりに恥ずかしい事であり、素直に自分の感情を吐露する事はなかなに難しい。
「まぁ、大変な事もあればいい事もあるっていうのが、正直なところじゃないかな」
「「――!」」
突如横から現れたその人物に、私と優子ちゃんは思考を巡らせていた事もあり、必要以上に驚いたリアクションを取ってしまう。
「澄玲さん!?」「姫城先輩!?」
私と優子ちゃんがそれぞれ名前を呼ぶと、澄玲さんはなぜか満足したような表情で「やっほー」と片手を振ってみせた。
「ここいい?」
「あー。どうぞ」
いち早く驚きから回復した私が、澄玲さんに空いている席を
「ありがとう」
お礼の言葉を告げ、澄玲さんが椅子に腰を下ろす。
「澄玲さん、今からお昼ですか?」
「ううん。お昼は家で済ませてきたから」
前と同じか。学食に特に用はなく、私の姿が見えたからちょっかいを掛けにきた、と。
「そっちの子とは初めましてよね。私は姫城澄玲。みどりちゃんの高校時代からの先輩で、みどりちゃんのファン? みたいな?」
「あ、私は大橋優子と言いまして、みどりさんとは大学に入ってから知り合いになった同級生で、友達兼ファンです」
「……」
先輩と友達から目の前で堂々とファンを公言され、私は普通に反応に困る。
「そう言えば今、ちょうど二人で兄弟姉妹がいるってどんな感じかなって話してたんです」
これ以上変な方向に話が行かないように、私は
「兄弟姉妹? うーん。私には妹しかいないからアレだけど、とりあえず可愛いわね」
「えーっと……」
これはもう、ツッコんだら負けとか、そういう
「うふふ。冗談だと思うでしょ? でも、これが
「それは普通、お孫さんに対しておじいちゃんおばあちゃんが遣う言葉なんじゃ……」
「まぁね。けど、私にとって静香は、そういう存在なのよ。あの子のためならなんでも出来るし、なんでもやってあげたいと思う。……もちろん、静香自身の邪魔にならない範囲でね」
そう言って澄玲さんは、ウィンクをしてみせた。
澄玲さんと静香ちゃんの間には、私のような部外者には到底分からない何かが、おそらくあるのだろう。
「一人っ子が良かったと思った事はないんですか?」
「ないと言ったら
二・三歳の子供とってそれは、居場所を奪われる事と同じ。後からやってきた妹に対し、良くない感情を抱いてもなんらおかしくはない。
「でも、妹と接してく内にその考えは、いつの間にか変わっていった。もちろん、年齢のせいもあるかもしれないけど。とにかく、ある時ふと気が付いたの。ううん。元々あった感情にようやく目を向けられたといった方が正しいかしら。こんなに小さく可愛い妹に、私はなんで
そう口にした澄玲さんの表情は
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