非情禁交子
ラビットリップ
第1話 差別されるポジション
「別に特別支援にさ、中教研なんていらなくない?誰が研究授業するの。誰ができるの?あの集まりの中に。あんたが、あの子で研究授業するの?できないわよね。あの子、奇声しか上げないじゃん。授業成立しないでしょ。もう、中教研なんて、参加しなくていいって。」
学年主任の野田は、森川楓の方は向かず、パソコンの画面に向かったまま、包丁でまな板を叩くような容赦ない話し方で、バイアスのかかった持論を繰り返した。
「ええ。ですが管理職の方から、中教研には特別支援学級の担任が参加しなければならないと言われまして。何とか五限目の補欠を組んで頂けないでしょうか。」
「全くねぇ。あなたと違ってね、みんな一斉授業のクラスをいくつもこなしていて、疲れているの。特別支援学級のたった一人の生徒のためにさ、なんで補欠を組まなきゃならないの!」
野田はこの一言を言いたかったのだ。この一言が言いたいがために、中教研はいらないだの、参加しなくていいだのとネチネチほざいていたのだ。結局は、この特別支援学級の生徒の補欠に、どの教師も入りたくないことを十分すぎるくらい分かっているから、担任の楓を出張に行かせたくないのだ。
そんなこと、楓も十分すぎるくらい理解している。この学年所属の教職員だけでなく、他学年所属の教職員も、楓が担任をしている特別支援学級と関わることを、できる限り拒否していることも。
楓は校務分掌や学校行事の仕事分担からも、毎回名前が外されていた
「彼の世話も大変だし、何もしなくていいよ。彼の仕事に集中してくれたらいいからさ。」
管理職はいつも楓に、全教職員が揃う職員会議や研究会の場で、この配慮をわざわざ声にしてきた。字面だけ追えば、楓に対する配慮とも受け取れるが、裏を返せば彼の世話は誰もしないからね、絶対休むなよ、助けを呼ぶなよ、という他教職員の意思表示が明確に込められた、圧力の強いメッセージを管理職が代弁しているに過ぎなかった。
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