3・4話ノーストレスバージョン

 話を聞いても分からなかったことは、記憶の混乱を言い訳にしてメイドに話を聞くことにした。


 湯治原翔人もとい、カイム・セルトファディアになった僕は、リシエル王国の王家に次ぐ権力のあるセルトファディア家の三男らしかった。

 まだ二歳であるが、言葉の発達が早く、八歳児程度には話ができたそうだ。

 転生?かはよくわからないけど、結構いいところに宿っちゃった気がする。


 この世界には、オタク大好き!魔術とスキルがあるのだ!

 五歳になると、スキル発現の儀式が行われる。スキルは、家系スキル、固有スキルの二つがある。

 五歳で魔術が発現すれば神童レベルだが、十歳までに発現すれば、貴族では落ちこぼれにはされないらしい。


 どんな理屈かわからないが、八歳まではどんなに無能でも済ませてくれるらしいから、ザコスキルでも安心だ。

 幸い僕には運命の瞬間まで三年の猶予があるからね。前世の僕の夢、追放からの領地経営をかなえるために、左遷されるレベルまで落ちこぼれることにしよう。


 落ちこぼれでも、絶対将来勉強して損しないのが知識。僕は勉学に耽ることにした。八歳までの命じゃなければいいけどね。


 常駐医を呼びに行ってくれた僕専属メイド、ピーノと一緒に階段を上る。


 書斎の扉を開けたピーノをすり抜けて駆け込んでいく。


 一面に広がる本。前世社畜としてこき使われた僕には大変な娯楽である本が、自由に読める!僕は感激して一番上の本棚の黒く禍々しい本を取ろうとした。

 しかし、僕の身長はせいぜい90㎝程度。届くはずもなく、脚立を持ってきてピーノ(155㎝くらい)がぎりぎり届くくらいだ。


「カイム様、この本なんだか服が汚れてしまいそうですよ?」

 ピーノが少しためらいながら僕に渡してくれた。

 どうせ僕が選択するんじゃなさそうだし、別にいいかな?

「ありがとう!」


 近くのソファーにどっぷりと腰を下ろし、ミニテーブルに今にもボロボロで崩れそうなカバーを置く。

 表紙を見ると、カバーから窺えないほどきれいな漆黒に包まれていた。

 天は黄色くなっており、年季が入っているのが感じられる。


 表紙を開くと汚れの無い扉が現れた。

「これ何て読むの?」

 ピーノは覗き込んだが、すぐに分かりませんと答えた。

「私は一応、重要五言語(英語、日本語、リシエル語、マーリヤ語、セルラ語)とルーン語、オレリア語、西オレリア語を覚えているのですが…。すいません」

 へえ、ピーノってかなり教養があるんだ!すごい!


「じゃあ、異国語を勉強すればこの文字もいずれは読めるようになるのかな?」

「そうですね。重要五言語をマスターすれば、読める本も格段に増えますし。ちなみに、今話しているのはリシエル語ですよ」

 そうピーノが言うと、急に脳内に女性の音声が流れた。

 ”翻訳魔術発動中 リシエル語→日本語”


 へぇ、日本語に聞こえてたけど、自動的に魔術がって、僕神童レベル超えちゃったよ…。

 まぁ、転生?したんだし、これぐらいの才能あってもいいよね。


「では、初めに何語を勉強したいですか?」

「うーん、日本語と、英語と、ルーン語かな?」

「分かりました!教本を取ってきますね!」


 ピーノが走っていくと、僕はなんだかほほえましい気分になった。

 でも、勉強三昧の日々になる予感がした。



第三話、第四話を読む必要はありませんので、第五話をこちらからどうぞ。

https://kakuyomu.jp/works/16817139558390252186/episodes/16817330647536718603


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