第26話 白粉

「はーい、ゴミここに集めてー!」

 朝食のために集まりだした住人にごみを集めてもらう。

 雑草や、何かよくわからないくずが集まりだす。

 これ何?白い粉あるんだけど…。絶対危ないやつだよね…?


「こんなん集めて、何するんですか?」

 アオイさんは、ホントに困惑した顔で僕に聞いてくる。

「今から決めるんだよ」

「あ、無計画ですか…」

 うなだれながら、アオイさんは朝食を受け取りに行った。

「朝ご飯受け取ったら、少し食べる前にお話ししたいことがありまーす!良ければ聞いてくださーい!」

 

 この前、また何か住民全体に言うことがあるかもしれないからって、リーナが、少し高い台を作ってくれた。助かるなぁ!

 いつもどこに居るかわかんないけど、森で狩ってきた食料をくれたり、作った小物をくれたりするんだよね。分からないことも多いけど、優しいんだよなぁ。


 僕はその台に上り、新しく開発した、拡声魔術を発動させる。

「いまから、ここのごみを、今皆さんが欲しいものに変えたいんですけど、何がいいですか?」

 さすがに、困惑の声が多い。ゴミから作るもん、そりゃそうだよね。

「はーい!くまさんがいいでーす!」

 レイナの妹が一番に言う。うんうん、そういうの、待ってたよ。


「分かったよー!他にはどうですか?」

 みんな悩む様子を見せたけど、結局子供の欲しいものを作ることになった。

 村長も(セクハラは良くないけどね)、大人のみんなも子供や若者想いで、なんだか暖かくていいなぁ。

「動くやつほしー!」

「僕もー!」

 動くやつか…。プ●レールとか、鉄道や車みたいなやつかな?

「はい、皆さんありがとうございました!」

 僕が台から降りると、村長が朝の挨拶をし、村の全員が声を合わせて、いただきます、と礼儀良く挨拶した。


 僕は、ご飯の前に、山積みになったごみの一部を布と、綿に、変換魔術で変え、変形魔術で人形の形にした。あの大型スーパーに売っているような巨大クマさんを二つつくる。もふもふだよ?可愛いよ?

「ありがと!」

 ご飯を高速で食べ終えた子供たちが、数人がかりで抱きかかえていった。いいね、そういうの青春って感じするよ。僕は、青春の前に勉強三昧だったからね。


 てか、プラスチックは果たしてどう作るのか…?

 ねぇ、プラスチックはどう作るの?

 ”普通に、プラスチックと念じるだけで大丈夫です。純度百パーセントのプラスチックができます。どんな原理かは知りませんがね”


 知らねぇのかよ…。でも、分かった、ア●クサありがとう。

 変換魔術、プラスチック、変形魔術、プ●レール、ト●カ。

 あれ、これ、絶対多方向に敵つくってるよね。やばいよね。助けてド●えもーん!

 おっと、失言失言。あなたは何も聞いていませんよ?いいですね?


「はい、出来たよ。自動ではさすがに動かないけど、自分で動かす分には、楽しく遊べると思うよ」

 そっきょうで造った、おもちゃ箱に詰めこんで、渡してあげる。

「ありがとー!」

 うーん、僕も35年強くらい前は、きっとこんな純粋な子供だったんだろうなぁ。

「ふぉっふぉっふぉ、坊ちゃんはまだまだ子供ですな」

 何!?こころ読めるの!?


「子供の気持ちが分かるから、子供が喜ぶ具体的なものが分かるんですね!すごいです!」

 ピーノ?違うからね?中身は四十近いおっさんだよ?

 しかも、そうじゃなくても、おもちゃ会社の開発部に勤めてたから、対象年齢とか、趣味嗜好というか、そういうのがデータでちょっと知ってただけだから。

 でも、雑草も処分できたし、みんな喜んでくれて一石二鳥でよかった!

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