第2話 空間

 ノーストレスバージョンを読んだ方は、三話からどうぞ。


 ただ白く、開けた空虚は、夢の世界なのか、はたまた天国なのか。

 僕はただ呆然といるしかなかった。

 意識は、少しずつ回復していった。


 足場すらなく、空中に浮く僕。

 ほかの人の姿すら見えず、誰かいるかと、叫んでも応答は無かった。

 少し動いてみたら、階段を下りるように足を動かすと、下降する事ができて、急に落ちたりすることは無さそうだった。


 さて、僕はここで何をすればいいのか?

 僕は、ここを夢の世界と結論づけ、再びこの世界で寝ることで元の、あのつまらない生活に、世界に戻れると考察した。

 僕は、空虚に寝そべり、目をつむった。


「ちょっと、ここで寝られちゃ困りますよ。おーい、起きてください」

 あれ、戻ったのかな?

 黒い服を着た男が体を揺さぶってくる。駅員さんかな?

「ん、もう少しだけ…」

「あなたがここにいると仕事ができないのですよ。さぁ、起きて起きて」

 駅員さんは、僕の体を押し、無理やりに起こさせる。


 三十路のおっさんが、起こされたかと思うと、駅員さんは僕をお姫様抱っこのように持ち上げ、どこかへ歩き出す。

 僕、そんなに軽かったけ?百七十四センチに六十キロだぞ?

 階段を下りて行って、大きな扉の部屋に入る。


 何かふわふわしたものに寝かされたかと思えば、分厚い布を被せられた。

「はい、これからはあんなところで寝ないようにしてくださいね。私は仕事がありますから、寝るならここにしてください。では、失礼します」


 駅員さんは、部屋から出て行った。

 ベットかな?これ。すごく寝心地が良い。

 僕は、寝心地の良さに耐え切れず、再び夢の世界に潜っていった。


「あ、起きられたんですね。まったく、書斎で眠ってしまったそうですね」

 黒い服の女の人の声。女性の駅員さんかな?


 書斎?僕は駅のホームで寝てたんだよな。

「あれ、ここは?」

 声が高い?


「まったく、書斎から執事が、坊ちゃんの部屋まで運んでくださったんですよ」

 坊ちゃん?聞き間違えかな?まだ、意識が朦朧としているみたいだ。

「坊ちゃん?」


 口に出せずにはいかなかった。

「まだ、寝ぼけてらっしゃるのですか、って、なんか、顔赤くないですか?」

「え?」

「手を、失礼しますね」

 駅員さんが僕の額に手を当てる。

「熱い!?早く、常駐医に見せないと!待っててくださいね!」

 走って、部屋を出ていく。

 不意に僕は、強い頭痛に襲われて、ベットに沈み込んだ。


 起きると、大勢の人が僕のベットを取り囲んでいた。

 えっと、これは?

「よかった、目覚めて。一時期は危ないって聞いたから、どうしようと思ったけど、心配ないようね」

「もう、心配させないでよね。まったく、危なっかしいんだから」

「はっはっは、こんな小さい子供にそんなこと言っても分からないだろう」

「確かにそうね」


 ドレスを着た子供と女性、スーツ?タキシード?を着た男性が一人、メイド服を着た人と、執事っぽい人が十人ずつくらいいる。

 え、まって、ホントに、ここ、どこなの?

 僕は疑問符が脳内を埋め尽くした。

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