第40話

ブルード伯爵が服を脱ぐと兵士達も数人鎧を脱いで裸になった。


そして剣だけ腰に巻くと浴室に向かおうとする。


「ちょ、ちょっと!浴室に武器は禁止よ!」


慌ててそれを見て止めた。


「なんだと…もし賊でも現れたらどうやってブルード様を守るんだ!」


「知らないわよ、それがルールなの。そんなに危険なら銭湯は諦めて帰ったら?」


私がそう言うと兵士達は顔を真っ赤にして怒り出した。


「ブルード様、こんなところは出ましょう。もっと素晴らしいところがありますよ」


兵士は私の態度に怒りブルード伯爵に帰るように言い出した。


帰ってもらうのは構わないが、銭湯を否定されるのはなんか腹立たしい。


いや、でもこれ以上の揉め事はごめんだ。


私は判断を伯爵に任せることにして、視線を向けた。


「どうします?まだ入ってないしお金なら返しますよ」


「いや、ここまで来たんだ。私は入る、お前達は外で待っていても構わんぞ。ルークは来るんだ」


伯爵は従者らしき人の名前を呼んだ。


「こんな奴では何かあっても守れません。しかたない私がブルード様のそばにいる。お前達は誰か入らないようにここで見張っていろ」


「ちょっと、お客さん来たら入って貰いますからね」


「なんだと!貸し切りにしただろ!」


「そんな事は了承してません。今お客さんがいないだけです」


「ふん、どうせ誰も来やしなさ」


兵士は意味深に笑うとブルード伯爵と浴室に入って行った。


他の兵士達は鎧をまた着て入り口を守るように立っている。


「はぁこんなんじゃお客さん来ても逃げ出しそう…」


私はこの人達が飽きて早く帰ってくれと手を合わせて祈っていた。


「すみません、中の物の使い方を教えて頂けませんか?」


すると浴室に入っていたルークと言う従者が顔を覗かせた。


そして兵士達が一斉にこちらを見つめてくる。


「え?私?」


「ここで使い方を知ってるのはお前しかいないだろ」


あのうるさい兵士も出てきて早くしろと急かしてくる。


「そこは男湯なのよ!女の私が入れるわけないでしょ」


「俺達は気にしない、ブルード様も風呂に入る時はメイドが体を洗うから慣れていらっしゃる」


「私はメイドじゃないわよ!」


「同じようなものだろ」


兵士は早くしろとすぐに浴室に戻ってしまった。


「お父さんを読んで来ようかしら…いや今は火を見てるから無理よね、お母さん…にあんなやつの相手をさせられないし」


仕方ない。


私は番台から出ると浴室に向かった。


「遅いぞ!」


兵士から早くしろと言われるがわざとゆっくりと歩いて向かう。


「じゃあ説明しますね。体は洗いました?」


「いや、まだです」


ルークという人が答えた。

この人は兵士よりは言葉遣いもよく話が出来そうだ。


「じゃあまずはそこのシャンプーと書かれたので頭を洗ってください。その後にリンスを使って、洗い流す。ボディーソープは体を洗うものです。はい以上」


私は伝えたと納得して帰ろうとした。


「す、すみません。もう少しいてもらってもいいですか?」


「えーもうそれだけですよ、あとはゆっくりと湯船に使って好きな時に出てください」


「わかりました…」


ルークさんは不安そうに頷き恐る恐るシャンプーを手にした。

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