一日一首(令和五年八月)

トコロテンの漢字の由来を思ひつつ「心太」を啜る葉月朔日


『100分DE名著』にあやかり『500字DE爺医の繰り言』をネットにアップす


値上げせし電力九社の黒字額十兆円とふ。不快極まる


待合室で我が冊子を読む受診者らの様子を覗ふ健診室より


日盛りにカーテンを引き灯り点けエアコン稼働の書斎で本読む


炎天に松明花が身を焦がす津軽の短き夏を惜しみて


朝早く佞武多の段雷響きけり。祭りの終はりが暑さの掉尾


名ばかりの立秋なれば暑気払ひにキムチを載せて冷麺を食ふ


予報では三十七度を超ゆるらし。体温ならぬ最高気温


熱波つづく北国津軽で懐かしむ二十年前のイラクへの旅


「弘前で39.3度」の見出し見て昨日の残暑を語りあふ朝


眠れぬ夜、スロービデオでボール止めゴールラインを何度も確かむ


雨あがり涼風の立つ盆の入り。迎へ火せむと焚き木を積み上ぐ


ふと目覚めカーテン揺らす涼風に夢の続きへ誘はれにけり


読経ながるる庭に番ひの尾長きて給餌をしをり亡き父母おもふも


新築の隣家の窓より響きわたる子を叱る父親の怒鳴り声あさまし


風向きが東から南やがて西へ台風七号は日本海をゆく


台風で一日遅れの送り火にご先祖の霊も長逗留なり


杖を突き健診を受けに来し媼、体重三桁では膝ももつまい


突然の雷雨に慌てて窓を閉づ。エアコン開始で書斎は極楽


今日もまた三十度超えとの予報あり。シャワーを浴びて気合で過ごさむ


二十年で新成人は半減し高齢者のみ増ゆる青森


「遺憾の意」を謝罪の代はりに表して責任回避をのうのうとなす


認知症の新薬といふレカネマブ。されど高価で「金」とも読める


安全なら海洋放出なぜ急ぐ況や危険な汚染水をや


マイナ禍に『失敗の本質』を読みかへし旧日本軍の遺伝子を憂ふ


中国の全面禁輸にうろたへて「想定外」と恥の上塗り


汚染水海洋放出を非難する中国報道官の論理や是なる


中国の反日感情あふりしは日本政府の愚行ならずや


〈風前の燈火〉内閣が「この先も全責任を負ふ」とは笑止


東電産アルプス水の注ぐ海。食物連鎖の果ては我が身に


フクイチの燃料デブリは八百余トン。賽の河原の石積みならずや

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