一日一首(令和五年二月)
如月の朔日の朝陽に手を合はせ数多ねがひて春を待つなり
如月の雪踏めばギュッギュッと鳴る音に近づく春を感ずる朝(あした)
けふ節分、離れ住む娘(こ)らに幸あれと妻は雛飾りをはや始めたり
立春を知りしごとくに咲きはじむる紫の小蘭に雛ほほゑめり
旧暦の七十二候の始まりの立春に垂氷(たるひ)より滴(しづく)の若水
立春過ぎ手水鉢には浮き氷。挿したる椿の蕾たへをり
二十度に設定したるストーブの自動停止に春ちかづけり
『心理学』を十年ぶりに読み返し七十五歳にして得心せらる
厚着してサンルームにて本よむにハーブティ香りて春を先取る
今回の校正をへて書きはじむ最終号の『縦書き脳』を
神々の系譜の末尾におはす神武。今日は建国記念の日なり
除雪車の削りおこしし雪道に小糠雨ふり舗装あらはる
長男の四十九歳の誕生日を祝ひてその歳の自分を想起す
仏壇に供へられたるバレンタインチョコ見つつ南無阿弥陀仏と朝の念佛
雛壇の花瓶にさしたる桃の枝。紅き蕾に春陽のどけし
春陽あびドスンと落つる屋根の雪。その響きにも心わきたつ
娘らの弾きゐしピアノを撫でまはし独学教本を読みはじむなり
短歌(うた)よめば狂歌かとわらはれ為らばとて蜀山人を繙きてをり
蜀山人まねて狂歌を作らむと万葉集を読みあさりをり
近代の秀歌にオマージュ捧げつつ狂歌もどきに詠みかへてをり
七十五歳、ピアノの手習ひくりかへす指十本に思ひとどかず
妻の留守に大きな音で弾くピアノ、調子はづれに内裏さま笑むか
ピアノ終へアップルパイと紅茶にて夫婦でほめあふ祝日の午後
税務署が金もどし呉るるとふ朗報は年金夫婦に春来たるごとし
春は霞、霧との別(わかち)を聞き知りて遠山にはや霞たなびく
霞消し突然ふきあるる地吹雪のすさまじ正に冬の掉尾か
屋根の雪おほかた消えし二月尽、空まぶしくて強き風吹く
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