第37話 死ぬまでに1度は言いたいセリフ
夏休みも終わり登校日だ。
僕は世界を救う勇者だが、その正体は横浜の高校に通う高校生三年生。
憧れのヒーロー漫画のようなシチュエーションだ!
久しぶりに学校は今までとは違う景色だった。
世界最弱のレベル0ということもあり、惨めな学校生活だったが、今の僕は違う。
ふふふ、気のせいかクラスメイトがみんな子供に見えるな……
「……それはさすがに気のせいじゃないですかね?」
もちろん、ガイドも一緒に登校だ。
「いやーこの夏休みはダンジョン行きっぱなしだったわぁ!」
「さすが村田君! すごいですね!」
「まあ俺くらいになればあちこちのギルドから引っ張りダコだわ」
……番長の村田も取り巻きも相変わらずだ。
「おい、キモオタ」
「は、はい……!」
「なんだニヤニヤして気持ち悪いな。昼になったから購買でパン買って来いよ」
「ま、任せてよ……!」
「ちょっとキモオタ君!? いつまであの村田って奴にペコペコしてるんですか?」
ポケットのガイドが僕に言う。
「つ、つい癖で……」
何年間も染みついた習慣はなかなか変わらないのだ……
「おはよう! キモオタ君」
「あ、姫島さん! おはよう」
「こないだはありがとうね」
「い、いやぁ」
別荘でドラゴンに襲われた姫島さん。相変わらず美しい……
そしてすっかり元気そうだ。
「……あの子、完全に恋する乙女の瞳をしてますね……」
「ん? ガイド、なんか言った?」
「いえ……なんでも」
◇
「キモオタ。昼だぞ」
「……」
「おい! 聞いてんのか!?」
村田が僕を怒鳴りつける。
「キモオタ君、あんな奴の言うこと聞いてたらダメですよ!」
「で、でも……」
「考えてもみてくださいよ! あの村田とかいう奴はレベル20ですよ!?」
「レベル20……」
「そうです! キモオタ君が合宿で何千体と倒したメタルガーゴイルと同じようなもんですよ!」
「! あの……メタルガーゴイルと!?」
メタルガーゴイル、どれだけ切り刻んできたモンスターだろうか……
「おい! シカトかよっ! キモオタ!!」
「ふー……やれやれ。うるさいぞ村田君?」
決まった!! 死ぬまでに1度は言いたいセリフの1つだった。
「……はぁ!? なんだとテメェ?」
僕は初めて村田に逆らった。
「お、おい……村田君とキモオタやべぇぞ……」
「どうしちまったんだキモオタ!?」
教室のギャラリーが騒ぎ出す。
当然だ。レベル0のオタクが番長と揉めているのだ。
「キモオタ! てめぇ夏休みの間に頭おかしくなっちまったみてぇだな。表出ろや!
」
「ああ、望むところだよ」
もちろんコレも死ぬまでに1度は言いたいセリフの1つだ!
僕は村田と教室を出る。
村田に処刑されると思ってるクラスメイト達はざわついている。
「やばいねキモオタ……救急車呼んどいてあげたほうがいいかな? ねえ、姫島さん?」
「うーん……救急車は大丈夫じゃないかな……?」
「え? あの村田とキモオタだよ?」
「私もよく分からないんだけどねぇ……多分大丈夫……。あっ!」
「なになに?」
「やっぱ救急車いるかも! 村田君の!」
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