第21話 レベルアップ
「くっ! つ、強い! レベル0のスライムとは一味違うな!」
僕はスライムと一進一退の攻防を繰り広げる。
「キモオタ君……」
熱戦を見守るガイド。ハイレベルな戦いに目を離せないようだ。
(キモオタ君……あんなザコモンスターに苦戦するなんて……)
ガイドがそんなことを思っていることは僕は知るよしもなかった。
スライムは攻撃の手を緩めない。
「ぐあぁ! も、もうダメだ……」
スライムにお室日されそうになる僕。
「うーん、もう無理みたいですね……」
見かねたガイドはスライムに向けて炎を放つ。
「ほ、炎魔法!?」
「ピィィイイ」
炎に包まれ燃えるスライム。
僕があんなに手こずっていたモンスターを一撃で……
「ガイド……君はそんなすごい魔法使いだったのか!?」
ただの精霊だと思っていたのに……恐ろしい力を秘めていたのか!?
「いえ、今のは弱い魔法ですよ……多分人間でも炎魔法のスキルがあれば子供でもあれくらいは……」
「そんなわけない!……君は謙虚な妖精だな!」
「うーん……ほんとに私の魔法は弱いんですけどね」
「魔法か……かっこいいな。僕も使ってみたいな!」
「しかし困りましたね。スライムも倒せないとなると、レベル1になるのも厳しいですよ……」
「……くっ、情けない……勇者らしく華麗に勝つつもりが……」
ガイドの力のおかげで、レベルを上げることができる唯一の人間になれたっていうのに……
「……僕の代わりにガイドが倒すんじゃダメなのか……?」
ガイドに情けない提案をする僕。
「ダメでしょうね。あくまでキモオタ君が戦闘で倒さないと……あっ!」
なにかを思いつくガイド。
「いいこと思いつきましたよ! 私、催眠魔法も使えるんですよ」
「催眠魔法!? モンスターを眠らせたりする魔法かな?」
「はい! まずモンスターを私の催眠魔法で寝かせます。
眠ったモンスターをキモオタ君が倒せば……キモオタ君の経験値になるかも?」
「なるほど! 素晴らしいアイデアだ! その手があったか!」
「……罪のないザコモンスターを眠らせ、剣で突き刺す……そんな戦いでよかったら協力します……」
「うぅ……言い方が良くないな……」
戦いに犠牲は付き物なのだ……
◇
すぐに次の獲物が見つかった。
「いたぞ! スライムだ!」
「はい! じゃあ催眠魔法、いきますよ!」
ガイドがスライムに手のひらを向ける。
催眠魔法が効いたようでスライムは動かなくなった。
「……眠ったかな……?」
剣でチョンチョンと突く。
反応はない。熟睡しているようだ。
「うん、眠ってるな……では……くらえっ!!」
『ザンッ!』
僕はスライムを一刀両断した。動かないモンスター相手のは僕は無双モードだ。
「やりましたね!」
喜ぶガイド。
「ああ、勇者への第一歩だ!」
初めてのモンスター討伐。複雑な気持ちだがとりあえずうまくいってよかった。
「さっそくキモオタ君のステータスを見てみましょう……おっ! 次のレベルまでスライム9匹、ゴブリン5匹になってます! つまり……成功です! この戦い方でもレベルアップします!」
「よし! この調子でいこう!」
ガイドがモンスターを寝かせ、僕が斬る。
この作戦で僕はスライム10匹、ゴブリンを4匹倒した。そして……
「くらえぇぇえ!」
僕はレベルアップに必要な、5匹目のゴブリンを斬る。
「はぁはぁはぁ」
「お疲れ様でした……じゃあ……ステータスを確認しますよ」
「頼む……レベルアップしていてくれ!」
ガイドが僕の顔を覗き込む。
「……あっ!! おめでとうございます! キモオタ君、レベル1になってますよ!」
「ホントか!? うおおおお! やったぁぁぁあ!!」
最弱のレベル0と知ってからずっと惨めな人生だった……やっとレベル1に……
感極まり、嬉し泣きをする僕。
今までの人生が走馬灯のように思い出される。
長かった……これで僕はレベル0じゃない!
「ま、まあ……まだレベル1ですからね……?」
喜びに浸る僕にガイドは呆れたように言う。
「嬉しいよ! ありがとうガイド!」
「よかったです。でもまだまだこれからですよ!」
「もちろんだ! この調子でどんどん行こう! さあ、次のレベルアップの条件はなんだ?」
レベルアップできる。こんなにうれしいことは無い! 早く次のモンスターを倒したい!
「ちょっと待ってくださいよ……えーっと、次は」
ガイドは次のレベルアップに必要なモンスターを教えてくれる。
レベルアップとは素晴らしい! 力がみなぎる(気がする)。無敵になった気分だ!
僕はダンジョンの奥へと進む。
「ん? なんだこの扉は?」
僕はダンジョンの奥にひっそりとたたずむ扉を見つけた。
「怪しい扉ですね……キモオタ君! 開けちゃダメですよ。危ないですよ!」
「ふふふ、僕は勇者になる男だよ?」
レベルアップをした僕は強気だった。
「……キモオタ君、完全に調子に乗ってますね……」
呆れるガイド。
「とは言っても……怖いし少し覗くだけだよ……」
僕はゆっくりと重い扉を開け、チラッと中を覗き込む。
「中は真っ暗だな……ん?」
暗い部屋の奥、ギラリと赤く光るものが……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます