第18話 モテ期

 冒険者になって初めての登校だ。やはり今までとは景色が違うな。


「この世界の学校は初めて行きます! 楽しみですね!」

 ウキウキのガイド、違うのは景色だけではないようだ……

 憧れの女子との初登校が精霊相手になってしまった。


 教室に入る僕ら。

「おーこれが学校ってやつですね!」


 僕のポケットから顔を出して周りを見渡すガイド。


「ガイド! ちゃんと隠れてろ!」

 僕はガイドをポケットに押し込む。


「痛ッ! 乱暴ですね!

 精霊の世界にはこういう学校はありませんから羨ましいです。いいですね、青春ですね!」


 人間界の生活は精霊には珍しいようだ。


「ところでキモオタ君は女子との青春は無いんですか!?」


「うーん……なぜだか僕にはないんだよね……」


「そうなんですか……」

 それ以上は何も言わないガイドであった。



「おいキモオタ」

 番長の村田がバカに声をかける。


「は、はい……」


「相変わらずキモいツラしてんなぁ」


「はは……」

 村田は相変わらず横暴だ。


「ちょっと! キモオタ君! なんなんですか、あいつ?」


「ちょ、ちょっとガイド!」

 ガイドがポケットから顔を出す。


「バレたらどうするんだ! 隠れてろ!」


「でもぉ……あいつムカつきますよ!」


「あいつは番長の村田っていうんだ……高校生だけどレベルの高い冒険者だよ……」


「えー? ちょっと待ってくださいね」

 ガイドが村田を遠目に眺める。


「レベルは……20ですかね?」

 ガイドの目には人間のレベルが映るらしい。


「そっか、ガイドはレベルが分かるんだよね。

 そう、レベル20でこの学校じゃアイツが番長だよ」


「……たったレベル20であんなに偉そうにしてるんですか?」

 

「え?」

 たったレベル20? レベル20っていったら一般人じゃなかなかいないぞ?


「ムカついてきました……キモオタ君! もう帰りましょう! すぐレベル上げに行きましょう!」

 怒りが収まらない様子のガイド。


「さっきまで学校行けって言ってなかったっけ……?」


「いいんです! 早くあの村田とかいうやつをギャフンと言わせるんです!」

 火のついたガイドの怒りは収まらないようだ。


 さっそく、早退を決め込む僕。そういえば早退なんて初めてだな……

 ヤンキーになった気分だ。


「あれ? キモオタ君?」

 廊下で珍しく女子に声をかけられる。


「ひ、姫島さん!」

 声をかけたのは以前、村田にボコボコにされた時に傷を治してくれた天然系美少女だ。


「どうしたの?」


「ちょ、ちょっと早退しようと思ってね」


「え? まだ朝だよ? ファンキー過ぎない?」

 そりゃそう思われるよな……

 

「ちょっと具合悪くてね……じゃ、じゃあね!」


「そうなんだ、ばいばーい」

(なんかキモオタ君、雰囲気変わったな……)


 いきなりクラスのアイドルに話しかけられるなんて、緊張したな。


「ちょっと! キモオタ君?」

 ポケットからガイドの声が漏れてくる。


「な、なんだよ?」


「今の女は誰ですか?」

 ガイドが不機嫌そうに聞いてくる。


「だ、誰って……ただのクラスメイトだよ」


「ふーん……デレデレしちゃってみっともないわね!」


「デレデレなんて」


「いかにも男が好きそうなタイプの、バカそうな女って感じでしたね!」


「口が悪いなぁ。別にそんなんじゃないよ!」

 なんだなんだ? モテ期到来か?

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