第9話
「ふん!」
――ダン
包丁が、まな板に刺さる……。タマネギは、真っ二つだ。
「ちょっと! なにしているの!?」
「念動力の練習です。『自動筆記』の応用です」
念動力の発現は、結構簡単だった。制御がとても難しいけど。
「全然制御できてないじゃん? 危ないから、ペンから始めてよ! もしくは、同じ動作をする魔法陣とか!」
まあ、当然の反応だな。
いきなり刃物は危なかったか。
「それもそうですね。空き時間で試してみます。それでは、今日も頑張りましょう」
さあ、開店だ。
今日のメニューは、スパゲッティだ。喜んでもらえるかな?
◇
その日の晩に、シーナさんが紙とペン、インクを買って来てくれた。
「ありがとうございます。少し描いてみます」
シーナさんはいい笑顔だ。
さて……、なにを描こうかな。
私はまず、空想の生物をイメージしてみた。念動力でペンを動かす……。
『鬼……鬼……』
「ガキの描いた絵だな……。これなら手で描いた方がまだましだ」
まあ、まだ魔法の使い方が、いまいちなんだろう。
その日は、鬼と河童を手で描いて終わりとした。
次の日も魔法の特訓だ。
「今度は、言葉を変換してペンを動かしてみるか……」
鬼の説明文を考えて、言葉にしてみる。
念動力で動くペンは、サラサラと流れる様に動いてくれた。
「……ふむ。文字起こしには、使えるんだな」
これは、便利かもしれない。
腱鞘炎の心配もない。
その後、料理のレシピを書き起こして行った。
シーナさんに後で渡そう。
◇
数日が過ぎた。
私は、空き時間に冒険者ギルドへ向かった。
収穫物を見せて貰うためだ。
話をして、ギルドの倉庫へ入らせて貰う。
「……うっ。血の匂いが凄いな」
倉庫には、いろんな魔物が納められていた。
「鹿と猪……は分かるんだけど。六本足の馬ってなんだ?」
そこには、幻想の魔物が並んでいた。
「おう? シーナの店の料理番じゃないか? なんか用か? 肉か?」
「模写させて貰ってもいいですか? 見たことがない魔物も多いので」
「ああ。漫画も描くんだったな。好きなだけ居ていいぞ」
ありがたいな。
「危ない魔物は、どれですかね?」
「う~ん。死傷者が多いのは、やっぱ、ゴブリンだろうな~。群れで来られると、ベテランでも逃げるしかなくなる。逆に、ドラゴンなんかは、相当な準備をしないと誰も近づかない」
なるほどと思ってしまった。
その後、ゴブリンを模写する。
「……やっぱりだ。見ながら念動力を発現すると、結構綺麗に描けるんだな」
布に風景画を念写した時のことを思い出して、この方法を思い付いた。
「時間は有限だ。描けるだけ描くか」
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