第4話 夢に出て来たおばあ

 大学に入っても澪ちゃんは夢に出てきて質問をしてくる。僕は教授のところへ質問に行く。

 教授は僕がよく勉強していると勘違いして、大学院へ進学するよう助言してきた。

 僕は大学院へ進み、就職をどうしようかと考えていたら、澪ちゃんが税理士になれと言う。

 就職先まで勝手に決められたくはない。

 だが、なぜだか分からないが僕は税理士事務所に事務員として就職していた。

 まるで、夢の中の澪ちゃんに支配されているみたいだ。

 僕は幽霊とか妖怪とかは信じないが、これだけ続くと気味が悪い。


 翌朝、両親にこれまでの夢のことを話した。

「霊とかいないと思うが。お祓いでもしてもらったらどうだ? 気休めにはなるだろう」

 と、お父さんは言った。

 母さんはなぜか黙っている。

 近くの神社にお祓いをしてもらいに行ったが、神主さんが用事で出かけていて、明日また来てくれと言う。

 その日の夜、今度は『おばあ』が夢に出てきた。

「余計なことをするんじゃない。お前を殺すことぐらい簡単なんだよ」

 口が耳まで裂け、おばあは不気味な笑みを浮かべる。

 その夢が一晩中続いた。

 眠ったのか眠っていないのかよくわからないまま朝になった。

 眠たい目を擦りながら、食堂に行くと、両親もなぜか眠そうな顔をしていた。

「『おばあ』は、若いころ村の神社の巫女をしてた」

 母さんはまるで独り言のように言った。

「神降ろしができ、託宣を聞くことができる。村では神様のように崇められていた」

 お父さんは何も言わず、聞いていた。

「おばあは呪術もできて、村の人や議員や大きな会社の社長もいろいろな頼みごとをしに来ていた」

 呪術という言葉にゾクっとする。

「それに人を呪い殺すこともできるという噂もあった。だから、村の人はおばあのことを恐れてもいた」

 母さんは一息ついてゆっくりと言った。

「おばあを恐れないものは、村には誰もいない」

 母さんの声はいつもの優しいものとは違って、お腹の底に響くような恐ろしげな声だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る