第49話 HENTAIから守るべきもの
四人はワイワイと作戦会議をしながら洞窟の出口へむかう。
これまでに手にいれた神の宝珠と《からのかんむり》を活用すれば、普通勝てないはずの強敵でも勝機が見えてくる。
いわゆるジャイアントキリングってやつが可能になってくるのだ。
《からのかんむり》の効果。
それは『
今、《からのかんむり》のなかには「水のアクアマリン」と「土のトパーズ」が入っている。
なので使用すると火属性と風属性の攻撃を無効化することができる。
1ターンだけなので誰かがずっと使いつづけなくてはいけないが、それでもメリットは果てしない。
ここぞという場面での活躍が期待された。
「今度ベラドンナに会ったときは絶対仲間になってもらおうね。
あのアメジストがあれば、あたしら超強くなるよ!」
満面の笑顔でアイシラは語る。
かつて一度だけ一緒に戦ったことのあるプレイヤー、旅の踊り子ベラドンナ・リリー。
彼女が持っている「幻のアメジスト」は装備者の物理回避力を上昇させる宝珠だった。
パーティの強化のため、ぜひ欲しいところだ。
そうこうしているうちに、ようやく洞窟の出口が見えてくる。
「さああたしたちの冒険はまだこれからだー!」
アイシラは小さな
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「いや勝手に終わるなwww」
「ほへ?」
脱出したアイシラを待ちかまえていた謎の人物から笑い声が。
少し離れた場所に、黒衣の男女が立っていた。
男は黒ずくめの西洋
女は黒いドレス、黒い髪、黒い
二人とも「これぞ悪役!」というファッションに身を固めていた。
「お
鎧の男が胸の前で拳を握る。
闘気が突風となって周囲を
何者なのか知らないが、相当の強者だ。
危険な気配を感じたのか、後ろの仲間たちも洞窟から飛びだして戦闘陣形を組んだ。
「先ほどの暴漢を管理しているのは、お
リーフが妙に背筋をのばして二人に話しかける。
こちらがまともに声をかけたにもかかわらず、相手はふざけた態度を直さない。
「さあーどうだったかしらぁ?」
どうやら真剣に会話をする意思はないらしい。
「わたくしたちは皇帝陛下のご命令によってこの場におります。
宝珠をお求めとの事ですが、新しい指示書などをお持ちなのでしょうか?」
「フッ」
そんなまともな会話が通じる相手ではなく、こいつらは暴漢・強盗の
「宝珠は渡せないし、他のなにも渡す気はないわ」
「じゃあ死んじゃうよ?」
「無理にでも押し通る!」
「できるかなあ~?」
突風が二人を包む。
風はさらに強さを増して竜巻へと変化し、完全に姿を隠してしまった。
『ハッハッハッハー! これが本当の姿だー!』
竜巻の奥、ずいぶんと高い位置から獣のような大声がする。
『おーっほっほっほ、選択肢をあやまったことを後悔なさい?』
もう一つは女の声。こちらは人間とおなじ高さから聞こえてくる。
役割を終えたのか、竜巻が急に爆発してあたりに被害をもたらす。
「くっ!」
アイシラたち四人は身を固くして暴風から身を守った。
巻き上がる
そこに居たのは巨大なドラゴン。そして翼をはやした邪悪な美女だった。
「あ、あんたら!」
さすがにアイシラたちは
裏で
それもアイシラやリーフをこのゲーム世界に連れ込んだ運営チームだったのだ。
突如として
恐怖と緊張で言葉をうしなう四人。
それに満足した様子で、二体の強敵はお決まりのセリフをはいた。
『オレは魔界三魔将の一人、邪竜ファフニール!
好きなものは《女教師もの》!』
『オーッホッホッホ! 同じく三魔将、魔女王リリスですわ!
好きなものは《おバカな悪役令嬢》!』
…………あいかわらずの頭の悪さに、せっかくの緊張感が消し飛んだ。
「あ、あんたら、まだそれやってたわけ……?」
『グワハハハハ! キャラが薄いとプレイヤーに存在を忘れられるからな!』
「他にやり方あんでしょ!?」
ボケとツッコミの
「その《女教師もの》というのは、どういった物ですか?」
「リーフさんはそういうの知らなくていいから!」
この
だが、邪悪な性癖の邪竜が余計な話をつづけた。
『ちなみに俺は実写よりむしろアニメのほうが』
「テメーは
どうやら宝珠以外にも守るべきものがあるようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます