第558話 屋根

 屋根に登る。


 上からの景色はいい。


 すべてを見下ろせるから。


 ここでは、ずっと僕を見下して女の子扱いをしている彼女よりも高い景色を見ているから。


 優越感を感じながら、屋根に立つ。


「おーい」


 下で、彼女が呼んでいる。


 返事をしようとすると、足を滑らせる。


「あっ!」


 空中に投げ出される。


 死ぬ――、と目をぎゅっとつぶるが、何も起こらない。


 目を開けると、彼女が見下ろしている。


 何が起きたのか、と周りを見渡すと、彼女が僕をお姫様抱っこしている。


 また、僕を見下ろして、女の子扱い。


 もう嫌だ。

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