第554話 一万円札

 彼女との帰り道。


 一万円札を拾った。


「どうしよ」


「やっぱ、警察でしょ」


「いや、でも……」


 高校生にとっては、一万円はかなり大きい。


 ちょっと、魔が差すこともある。


「ほら、君だって諭吉のことが好きだって言ってたじゃないか」


「そうだけど、あれは一種の照れ隠しみたいな、ネタみたいな……。とにかく、警察に届けないと」


「う、うん。そうだよね……」


「警察に届ける姿、かっこいいよー」


「なんだよ、その棒読み」


「ん? ちょっと待って。それ、子ども銀行のやつじゃない?」


「え?」


「ほら見て」


 裏返す。


 そこには大きな文字で、子ども銀行、と書いてあった。


「なんだよー! 人の女、取った上に、偽物かよー!」


「だから、違うって言ってるでしょ!」

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