SMELLMAN REIWA

作家:岩永桂

第01話 自己臭に囚われて

アイアム ア スメルマン

EPISODE:01

「自己臭」に囚われた二十年間


これから永きに渡って語り尽くす話題は「自己臭」と呼ばれるジャンルで、僕が福祉の専門学校に通っていた頃のテキストには精神病理として「幻臭」と刻まれていた。

「幻の臭気」と断るくらいだから「無臭」若しくは「取るに足りない臭気」と銘打っても良さそうだ。

僕が「自己臭」を意識するのは、他者の「咳」や「喉の詰まり」「くしゃみ」の時で、それでも自分自身が他者の「異臭」に反応して「咳」を何度もした「喉がイガイガ」する「くしゃみ」を誘発された経験等は皆無だ。


「自己臭だ」「自己臭だ」とまくし立てる割にはどう言う「異臭」が他者の人体に不具合を生じさせ、一緒に居ることを避けられたり、嫌がられたりするのか理解に乏しい。


僕は精神科の敷地内に併設されていたイタリアンレストランで約1年間働いた経歴があるのだが、そこでメニューとして扱われていた「ゴルゴンゾーラのパスタ」を運んだ時に、むせ返るような臭気を吸い込んだ記憶はない。

おそらく、独特な風味が口に拡がり、鼻から抜けて行くのだろう。

「ドリアン」は「異臭物」の中の大王様と讃えられる位、「臭気」が強烈らしく

「ドリアン爆弾」と呼ばれる風船に「ドリアンの汁」を含ませて、

電話BOXのような箱の中で風船を爆発させることで、参加した芸人を爆死させる「嗅覚」破壊兵器だ。


残念ながら「ゴルゴンゾーラ」も「ドリアン」も食した経験が無い。


「パクチー」のような香草類は何度か挑戦しているが

あれは「味覚」破壊兵器の類だと。

「パクチー=カメムシ」の名前が挙がるのは頷ける。


「異臭」がしても「咳」や「喉のイガイガ」「くしゃみ」を伴わない。

「異臭物」の代表選手を実際に食したことがない。

僕はなんちゃって野郎だけど、アンチヒーローを名乗っていいのだろうか?

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