第92話 勝負の行方

「それで一輝くん、次はどの教科のテストの点数を見せ合いますか?」


 綾香が改めてそう質問をして来たので。


「えっと、僕が決めてもいいのですか?」


 一輝がそう質問をすると。


「ええ、勿論です、数学に関しては一輝くんの得意教科という事もあって私が負けてしまいましたが、それでも私は勉強に関しては他の人よりも頑張っている自信があるので、他の教科に関しては一輝くんに負けるつもりはありません、なので、どの教科がいいのかは全て、一輝くんが選んでいいですよ」


 綾香は自信満々といった様子でそう言ったので。


「そうですか、分かりました、それなら次は英語のテストでお願いします」


 一輝がそう答えると。


「英語ですか、分かりました」


 綾香はそう言いながら、今度は鞄の中から自分の英語のテストを取り出して、再び机の裏に裏側にして置いた。そして、


「因みに一輝くんは、英語のテスト結果に自信があるのですか?」


 綾香はそう質問をして来たので。


「いえ、残念ながら今回の5教科のテストの中で一番点数が低かったのは英語なので、正直全く自信は無いです、なので、僕としては割と結果が見えている英語の点数発表は早く終わらせたいんです」


 一輝がそう答えると。


「そういう事ですか、分かりました、それなら私と一緒にテスト用紙を表にしましょう」


 綾香は納得した様子でそう言ったので。


「ええ、そうですね」


 一輝はそう言った。すると、


「分かりました、それでは行きますね、せーの」


 綾香はそう言ってテストの用紙を表にして、それに続いて一輝もテストの用紙を表向きにした。


 そして、二人はお互いの英語のテストの点数を確認した。すると……


「さすがですね、綾香さん、毎回学年10位以内の成績を収めているだけの事はあります」


 一輝はそう言った。


 一輝の英語の点数は74点と英語をかなり苦手としている一輝としてはそれなりに頑張った方の成績だったが。


 綾香は92点という高得点だったため、英語は綾香の完勝だった。なので、


「やっぱり綾香さんは凄いですね、分かってはいましたがやっぱり数学以外だと僕が勝つのはかなり難しそうですね」


 その結果を観て、一輝が少しだけ自信なさそうにそう呟くと。


「大丈夫ですよ、一輝くんが一番点数が低い英語でも74点あるという事は、他の教科はそれ以上の点数はあるんでから。それならもしかすると私に勝てるかもしれませんし、今回一輝くんが試験勉強を頑張っていたのは私も近くで観ていたので自信を持ってください!!」


 綾香にそう言って励まされたので。


「綾香さん……そうですね、勝てるかどうかは分かりませんが今回は自分なりに本気で試験勉強に取り組めたので、自信を持って綾香さんに挑ませてもらいます!!」


 一輝はそう言った。


 その後は、理科、社会と続けて二人はテストの点数を発表して行ったのだが。


 理科、社会共に一輝は80点台とそれなりの点を取っていたのだが、綾香はどちらとも90点台の点数を叩き出していて。


 点数差自体はどちらの教科も10点差も無いモノの、最初から分かっていた通り、綾香は数学以外の教科では簡単に勝たせてくれないようだった。そして……






「一輝くん、次が最後の教科ですね」


 綾香はそう言いながら、残り1つの教科である国語のテストを机の上に裏向きに置いた。なので、


「ええ、そうですね」


 一輝もそう言って、自分の国語のテストを机の上に裏向きで置いた。すると、


「因みに一輝くんは、この勝負で私に勝ったら私にどんなお願いをするのかはもう決めていますか?」


 綾香はそんな事を聞いて来たので。


「いえ、まだですね、正直僕は試験勉強に必死でそんな事を考えている余裕はなかったので」


 一輝はそう答えた。そして、


「因みに綾香さんは、僕に勝ったらどんなお願いをするのかはもう決めていますか?」


 一輝が綾香に向けてそう質問をすると。


「ええ、私が一輝くんにお願いをしたい事はもう決めていますよ」


 綾香はそう答えたので。


「そうなんですか、因みに綾香さんは僕にどんなお願いをする予定なのですか?」


 一輝はそう質問をしたのだが。


「えっと、それは秘密です、今ここで言うのは少しだけ……いえ、かなり恥ずかしいですから」


 綾香は何故か頬を少し赤く染めながらそう言ったので。


「えっと……そんな反応をされると少し、いえ、かなり怖いのですが、でも、国語に関しては僕はそう簡単には負けるつもりはありませんよ」


 一輝がそう答えると。


「その様子だと、一輝くんは国語の点数には自信があるのですか?」


 綾香はそう質問をして来たので。


「ええ、そうです、国語に関しては、僕は数学の次に得意な教科なので、このルールを聞いた時から僕は数学と国語で綾香さんに勝とうと決めていましたら」


 一輝がそう答えると。


「そうですか……では、その自信満々な点数を見せてもらってもいいですか?」


 綾香はそう言ったので。


「ええ、勿論です、綾香さん、これが僕の国語の点数です!!」


 一輝はそう言うと、自信満々に自分のテストの点数を表にした。すると、


「……94点ですか、一輝くん、頑張りましたね」


 綾香は一輝の事を褒めるようにそう言った。しかし、


「……随分と余裕そうですね」


 一輝はそう言った。


 何故なら、綾香からは一輝の数学の点数を観た時のような驚きは一切感じられなかったからだ。すると、


「そんな事はありません、寧ろ94点という結果を観た時は、私は内心かなり焦りましたよ、ですが」


 そこまで言うと、綾香は自分の国語のテストを表にして。


「どうやら今回は私に勝利の女神が微笑んだようですね」


 そう言う綾香の手元には95点と書かれたテストが置かれており。


 かなり善戦したモノの、最終的にこの勝負は1点差で綾香の勝ちが決まったのだった。






 その後、2人が会計を済ませてファミレスの外へ出ると。


「やっぱり綾香さんは凄いですね、結局数学以外で僕は綾香さんに勝つことができませんでした」


 一輝が少しだけ悔しそうにそう言うと。


「そんな事はありませんよ、何度も言いますが、私はテストで100点を取ることはできませんし、国語も後1点あれば私と同点だったんですから、一輝くんは本当に凄いです。なので、もし一輝くんさえ良かったら、次のテストでも私と勝負をしませんか? それに、一輝くんと一緒に勉強会をして私はいつも以上にテスト勉強に集中できたので、また一輝くんと一緒に勉強会もしたいです」


 綾香は一輝に向けてそんな提案をして来た。なので、一輝は少しだけ考えてから。


「そうですか、分かりました、勝負をするかどうかは、今はまだ決められませんが、僕も綾香さんと一緒に勉強会をして、いつも以上に試験勉強に集中できたので、次の試験期間も2人で勉強会をしましょう」


 一輝もそう言ったので。


「ええ、よろしくお願いします」


 綾香は笑顔でそう言った。すると、


「ところで一輝くん、私の両親とはいつ会いますか?」


 綾香はそんなことを聞いて来たので。


「……そういえば、それを決めないといけませんね」


 一輝がそう答えると。


「ええ、試験が終わったら私の両親と会ってくれるという約束でしたから。でも、一輝くんがもう少しだけ待って欲しいのなら、私は夏休み期間中でも大丈夫ですよ」


 綾香は一輝に気を遣ってそんな事を言ったが、そんな風にいつまでもこの事を先送りにするもの良くないと、一輝はそう思った。なので、


「……あの、綾香さん」


「はい、何ですか?」


「その、綾香さんのご両親の都合さえ良かったら、明後日の日曜日に綾香さんの家に行ってもいいですか?」


 一輝は綾香の目を見て力強くそう言った。

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