第76話 人生そう上手くいかない
しかし、もし今思っている自分の考えが綾香の思っているモノとは違い、下手なことを言って綾香に嫌われたら不味いと一輝はそう思ったので。
「……えっと、綾香さん、二人きりでしか出来ないことって何ですか?」
一輝は今まで感じたことも無いくらい早くなっている自分の心臓の鼓動を抑えながら、言葉遣いだけは冷静さを装ってそう質問をした。すると、
「……一輝くんは何だと思いますか?」
綾香は頬を赤くしたまま、一輝の目を見てそう言った。そして、
「えっと……それは」
一輝がそう呟くと。
「一輝くん、遠慮しないで下さい、今、一輝くんの思っていることを正直に私に教えてください」
綾香はそう言うと、自分の右手を一輝の頬に引っ付けた。なので、
「えっと、それは……」
「それは、何ですか?」
綾香に改めてそう言われたので、一輝は思い切って今の自分が思っていることを正直に綾香に伝えようとすると。
「グウウウウ……」
突然、一輝のお腹からそんな音が響いた。そして、
「「…………」」
その音を聞いて、二人は暫くの間その場で固まっていた。そして、それから数秒間、時間が流れると。
「あっ、そういえばそろそろお昼ご飯の時間ですよね、取りあえずリビングに行って、お昼ご飯をどうするか話し合いませんか?」
綾香はそう言った。そして、その言葉を聞いた一輝は、
「……ええ、そうですね、そうしましょう」
助かったという気持ちと、もしかしたらとんでもないチャンスを逃してしまったのでは無いかという複雑な気持ちを持ちつつも、一輝は綾香の問いに対してそう答えた。すると、
「分かりました、それじゃあ早速、リビングに行きましょう」
綾香はそう言うと、その場から立ち上がり、一輝の部屋のドアを開けて廊下に出ようとした。しかし、廊下に出る前に、
「……あの、一輝くん」
綾香がそう言ったので。
「何ですか?」
一輝がそう聞き返すと。
「その、やっぱり今後も私の事は綾香さんと、そう呼んで下さい、私も一輝くんの事は今まで通り一輝くんと呼びますし、お互いの事を呼び捨てで呼び合うのは、私たちにはまだ早いと私はそう思いましたから」
綾香は一輝に背を向けたままそう言ったので。
「分かりました、僕としてもその方が助かります、それではリビングに行きましょうか」
一輝がそう答えると。
「ええ、そうですね」
綾香もそう返事をして、二人は一輝の部屋を出て一階にあるリビングへと向かった。
そして、二人がリビングへ辿り着くと。
「えっと、綾香さん、昼ご飯はどうしますか? 折角なので何か注文しますか? それとも何処かに食べに行きますか?」
一輝は綾香に対してそう質問をした。すると、
「そうですね、それもいいのですが……」
綾香はそう言うと、台所の方を観て何かを考え始めた。そして、
「あの、一輝くん、一輝くんさえよかったら、台所の様子を少し見せてもらえませんか?」
綾香はそんなことを言ったので。
「台所ですか? ええ、別にいいですよ」
一輝がそう答えると。
「そうですか、ありがとうございます!!」
綾香は笑顔でそう言った。
その後、綾香は台所を一通り見渡すと。
「必要なモノは一通り揃っているようですね……あの、一輝くん、出来たら冷蔵庫の中も見せてもらいたいのですが、いいですか?」
綾香はそんな事を聞いて来たので。
「ええ、他の人なら遠慮しますが、綾香さんなら勿論いいですよ」
一輝がそう答えると。
「ありがとうございます、それでは見せてもらいますね」
綾香はそう言って、冷蔵庫の扉を開けて中を確認し始めた。
そして、綾香は一通り冷蔵庫の中を見終わると。
「成程、取りあえず食材は一通り確認しました」
綾香は冷蔵庫を閉めながらそう言った。そして、
「あの、一輝くん」
綾香はそう言ったので。
「何ですか、綾香さん」
何となく綾香が言いそうなことは予想しつつも、一輝はそう言った。すると、
「今日の晩御飯は私がこのキッチンで何かを作ってもいいですか?」
綾香は一輝が予想していた通りの事を言ったので。
「えっと、僕としてはとてもありがたいのですが、綾香さんはいいのですか?」
一輝がそう質問をすると。
「ええ、勿論です、私は元々料理を作るのは好きですし、以前、私の手料理を一輝くんが食べてくれた時、一輝くんが私の作った料理を美味しいと言ってくれて、私はとても嬉しかったので、機会があればまた一輝くんに手料理を作ってあげたいと、私はそう思っていましたから」
綾香は微笑みながらそう言ったので。
「そういう事ならお願いします、実際、少し前に綾香さんが作ってくれたオムライスはとても美味しかったので今回も楽しみです」
一輝がそう言うと。
「そうですか、それなら今回も一輝くんに美味しいと言ってもらえるように、腕によりを掛けてお昼ご飯を作りますね」
綾香がそう言ったので。
「ええ、お願いします、ただ、綾香さん、今日は何を作る予定なのですか?」
一輝がそう質問をすると。
「ふふ、それは出来てからのお楽しみにしておいて下さい」
綾香はそう言ったので。
「分かりました、それなら僕は綾香さんの料理が出来るまでここで待っていますね」
一輝はそう答えて、リビングで綾香の料理が出来るのを待っている事にした。
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