第17話 初めて?のデート
次の日の日曜日の朝、一輝は綾香との待ち合わせ場所であるショッピングセンターへと自転車で向かった。
そして、一輝がショッピングモールに付いて、駐輪場に自転車を止めると。
「立花さんは……まだ来ていないみたいですね」
辺り一面を見渡しても彼女らしき人物は見つからなかったので一輝はそう言うと、スマホを取り出して時間を確認してみた。
待ち合わせ場所はこの駐輪場で、約束の時間までは後15分程あるので、一輝は適当にスマホをいじりながら、彼女が来るのを待っていようと思い、そのままスマホの画面に目を落すと。
「スッ」
「え?」
一輝の視界がいきなり真っ暗になったので、一輝は思わずそう呟いた。すると、
「だーれだ?」
一輝の背後から、最近では毎晩スマホ越しで聞いている女性のそんな声が聞こえた。なので、
「えっと……もしかして、立花さんですか?」
一輝がそう答えると。
「ふふっ、正解です」
そんな声が聞こえる共に、一輝の暗かった視界が一気に開いた。なので、一輝はゆっくりと自分の背後を振り返ると。
「おはようございます、佐藤くん、えっと……今日はデートに誘ってくれてありがとうございます」
少し照れ臭そうな笑みを浮かべながら、ベージュ色のリボンタイブラウスに身を包み、黒色のスカートを履いている立花綾香は一輝に向けてそう言った。なので、
「ええ、おはようございます、立花さん……その、こちらこそ、今日はわざわざ来てくれてありがとうございます」
一輝もそう言って、綾香に挨拶を返した。そして、
「えっと……それで立花さん、さっきの目隠しは一体」
一輝が綾香に向けてそう質問をすると。
「あっ! えっと、それはですね……」
綾香は少し慌てた様子でそう口にしたが、落ち着くために一呼吸すると。
「その、私の勝手な想像ですが、仲のいい恋人同士だと待ち合わせ場所でこんなことをしていそうだなと、佐藤くんの背中を見た時にふと思ったのです。なので、こうすれば今より少しだけでも、佐藤くんと仲良くなれるかもしれないとそう思ったのですが……もしかして、ご迷惑でしたか?」
綾香はそう言うと、少し不安そうな瞳で一輝のことを上目遣いで見つめて来た。なので、
「あ、いえ、そんなことはないです!! 寧ろ立花さんの手の感触を味わえて得しか……あ、いえ、何でもないです!! とにかく、僕としては立花さんになら何をされてもいいと思っているので、今後も僕にやりたいことがあれば、遠慮なくどんどん仕掛けて来てください!!」
途中にとんでもない失言をしかけるも、一輝は何とかその言葉を飲み込んで、綾香に向けてそう言った。すると、
「……もう、佐藤くん、そんなことを言ったら私は本気でそうしちゃいますよ?」
綾香はそう言った。しかし、一輝としては、何だかんだ言いつつも、綾香はちゃんとした常識は持っていると思っているし。
事実、彼女ほどの美少女になら何をされても文句はないと一輝は本気でそう思っていた。なので、
「ええ、大丈夫ですよ」
一輝は特に深くも考えずそう言った。すると、
「……そうですか、分かりました。佐藤くん、今の言葉忘れないで下さいね」
綾香は笑顔を浮かべて一輝に向けてそう言った。
そして、そんな会話を終えてから。
「えっと、それじゃあ、立花さん、いつまでもここで話をしているわけにもいきませんし、そろそろ行きましょうか」
一輝がそう言うと。
「ええ、そうですね」
綾香はそう返事をしたので、一輝は綾香と一緒にショッピングモールの入口へと向かおうとしたのだが。
「あっ」
「? どうかしましたか、佐藤くん」
綾香にそう言われると、一輝は立ち止まって、改めて綾香の方を振り向くと。
「その、遅くなりましたが、立花さんの今日の服もとても似合っていますよ」
一輝は綾香に向けてそう言った。すると、
「もう、言うのが遅いですよ。でも、気付いてくれたので良かったです、次はもっと早く褒めて下さいね」
綾香は少し苦笑いを浮かべながらそう言った。
その後、2人は店内に入ると。
「それで佐藤くん、最初は何処に行くのですか?」
綾香は一輝にそう質問をした。一輝は昨日、ショッピングモールへ行って洋服屋や本屋へ行きましょうとは伝えていたが、どのような順番で何処へ行くのかは綾香に伝えていなかった。なので、
「実は順番はそんなにきっちりとは決めていないんですよ、今日は2人で相談して行きたい所に行けたらいいなと思っているので、最悪、本屋や洋服屋に行けなくてもいいかなと思っているのですが、それでも大丈夫ですか?」
一輝は綾香にそう質問をした。すると、
「ええ、大丈夫ですよ、その方が楽しそうですから」
綾香は笑顔でそう言った。なので、
「そうですか、それなら良かったです。因みに、立花さんは何処か行きたい所はありますか?」
一輝は綾香にそう質問をすると。
「あるにはありますが、最初は佐藤くんから決めて下さい、このデートを企画してくれたのは佐藤くんなので、最初は佐藤くんの行きたい所へ行きましょう」
綾香はそう言った。なので、
「そうですか、分かりました、それなら先週に出来なかったことを今度こそやりに行きましょう」
一輝はそう言うと、綾香を連れてエレベーターへと向かった。そして、
「ここは、ゲームセンターですか?」
綾香がそう言うと。
「ええ、そうです、先週は色々あって駄目でしたが、ここならそこまで人も多くないので、先週出来なかったクレーンゲームとプリクラが出来るとそう思ったのですが、もしかして、もうここには来たくなかったですか?」
一輝はそう質問をした。先週行ったアミューズメント施設の本格的なゲームセンターとは違い、ここのゲームセンターは映画館の横に置いてあるもので、そこまで広くもなくそんなに人で混んでいるわけでもないので、綾香が人に酔うこともなく楽しめると思ったのだが。
先週のことが彼女の中でトラウマになっているのなら、わざわざ来なくてもよかったのかもしれないと、一輝はそう思ったのだが。
「いえ、そんなことはないです、先週は私のせいで台無しになってしまいましたが、ここならそんなに人も多くないので私も酔わないと思いますし、それになにより、佐藤くんとはそういった経験をしたかったので、佐藤くんがここを選んでくれたのは凄く嬉しいです!!」
綾香は本気で嬉しかったのか、嬉しそうな笑みを浮かべてそう言った。なので、
「分かりました、それなら取りあえず、最初にクレーンゲームをして、その後にプリクラを撮るといった感じで大丈夫ですか?」
一輝が綾香にそう聞くと。
「ええ、それでお願いします」
綾香はそう答えたので、一輝は綾香を連れて取りあえず、ゲームセンターに入ってクレーンゲームがある所へ向かった。そして、
「色々なぬいぐるみがありますね」
綾香はクレーンゲームの中に入っている景品を見ながらそう言った。なので、
「そうですね、因みに立花さんはクレーンゲームをしたことはありますか?」
一輝は綾香にそう質問をすると。
「それが、恥ずかしながら一度もないです」
綾香は頬をかきながらそう言った。なので、
「そうですか、それなら立花さんが欲しい景品があれば、僕が代わりに取ってあげますよ」
一輝はそう言った。すると、
「えっと、もしかして、佐藤くんはクレーンゲームが得意なのですか?」
綾香はそう質問をして来た。なので、
「いえ、特別に得意というわけではないですよ、ただ、狙った景品はいつも、大体千円以内で取れているので、特別下手だというわけでもないと思います、なので、立花さんが欲しい景品があれば、遠慮せず言って下さい」
一輝はそう言った。ただ、一輝も先週のボウリングで似たようなやり取りをして、結果的に大失敗したことを思い出したので。
今度は同じ失敗をしないように肩の力を抜いてやろうと今の内に思っておいた。すると、
「あっ」
綾香は一つのクレーンゲームの景品を見て、そう言って動きを止めた。なので、
「もしかして、欲しい景品がありましたか?」
一輝がそう言って、綾香の隣へ歩いて行くと。
「ええ、あのぬいぐるみなのですが」
そう言って彼女が指をさしたのは、両目を瞑って気持ちよさそうに寝ている、割と大きい柴犬のぬいぐるみだった。
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