神はロックを歌わない

 何故 斯様なまでに人の子は神に逆らうのかと


 問われたならば 私はこう答えるだろう


 それは 人間というものが既に


 神つまりは真理に逆らう生物として創られているからだと


 反逆は我々を形成する一要素であるのだ




 自然界を見よ


 暴力こそ 何物にも優先する理である


 強者は生き残り 弱者は死に絶える


 そこには何ら不条理は存在しない


 神もこうある事を望んだのだろう


 自然とは 神の持つ多くの名前の一つであるから




 しかし 思い出してほしい


 かつて天空において暁の子と呼ばれ


 最も神に愛されながら


 神に逆らい 王国を追われた御使いがいた事を


 私は彼に 同情以上の深い感情を覚える


 それが親近感であるとするならば


 我々人の子は 本当は何者なのだろうか




 地上にあまねく流布する


 あの聖なる書物に記された事柄は


 真実であるかもしれないが


 正義ではないような気がしてならないのだ


 或いは その逆であるのかもしれないのだが




 時は移り 人の世となり


 暴力が 権力や財力に替わっても


 強者が弱者を踏み敷く構図に変わりはない


 権力者は神の法を利用する


 神を引き合いに出し 弱者を虐げる


 私がそんな現状に違和感を覚える時


 私は暁の子を思い出す


 彼が悪魔とまで蔑まれながらも


 自らの成した行いと 自らの存在とを


 神の記録に残した事の意味を


 そして気付くのだ


 神の似姿とまで形容される我々人の子が


 神よりもむしろ 彼に似ている事に


 だから 私は逆らい続けるのだ


 神の持つ名の一つである真理に 逆らい続けるのだ

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