復楽園かける零

 騎士よ


 お前の求めていた正義は


 もう ここにはない


 お前の探していた正義は


 いずこへと消え失せてしまった


 お前は永き眠りの内に


 もはや どちらが剣で


 どちらが鞘であるのかさえ 忘れてしまった


 今また 剣を振るうのか


 それを鞘であると称して お前は


 仲間達に切っ先を向けるのだ


 司祭どもには背を向けて


 いや むしろ彼らこそ我が仇と信じ


 密かに恐れている


 だから 彼らが同士討ちする姿は


 さぞ痛快であろう


 この時代


 賊徒こそが 最も正しい道を歩む


 力無き民草は ただ土の中で震える


 誰もが別の方角を見ている


 しかし いずれの方角にも


 楽園の影すら窺えないのだ


 今こそ自らの足下を見よ


 そこに何が在る?

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