à Cupidone

 恋よ


 お前は昔 自由だった


 若者は 英雄の腕に抱かれ


 少女は 父を焦がれた


 女達は 女神の膝で眠り


 少年は 姉の温もりを求めた


 神はお前達を許さなかったが


 私は許している




 恋よ


 お前はもう 帰っては来ない


 お前がまだ ここにいた頃


 人はお前の姿を悲劇や詩に託したが


 今や人の子らは


 書物や寸劇に描かれたお前を真似ている


 誰もがそれを本当のお前だと信じて疑わない


 私は別だが




 恋よ


 最も美しく また最も儚き者よ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る