Round15 魔人戦①(前編) 神を喰らう魔人、神を喰らうパチンカス


 その後、銀髪の魔女主導の修行を重ねること1週間。紫髪の魔人との決闘を迎えた。


 ……迎えた。


「はぁ〜い、みなさんこんにちは! 白銀シルバで〜す。今日はなんと、ゲリラ配信&新しい演者さんの登場です!」


 明らかに作った声で銀髪の魔女──白銀シルバはカメラに向かってこんにちは。しばらく鳴りを潜めていたチャンネル活動をゲリラ配信している。魔王たちは先に店内で撮影の用意をしているらしく……代わりにここには俺の他に勇者と灰髪の魔女が画面外にいる。


「いつ聞いても違和感しかない」

「あっちじゃ国王相手の時くらいにしか聞かないからな……どこから声だしてんのか謎だぜ」


 隣の勇者が冷めた目で眺めていた。要は相当媚びた態度なのだろう。灰髪の魔女もやや呆れた目である。


「アレやると国庫から引っ張ってこれるってよくやってましたネ」


 ……聞かなかったことにしよう。

 配信の様子を見ると、歓迎のコメントが早くも流れている。勢いが早すぎて目で追えん。


「前座は結構、早く勝負をさせてもらおうか!」

「もぅ〜ムラサキちゃん、せっかちはよくないぞ?」


 カメラに映りながらもぶっきらぼうな紫髪の魔人ムラサキへ、銀髪の魔女は態度を崩さない。いつキャラ崩壊するやら……


「今日はなんと! パチンコ・スロット3番勝負〜拍手ぅ〜」


 画面外の俺達でにぎやかしの拍手を入れる。すると魔女は足元に置いてあった箱を持ち上げた。


「この箱の中に『台』と『勝負条件』が書いてあるボールが入ってるので、勝負をする2人がそれぞれ引いてもらいまぁす。それでは、ムラサキちゃんを迎え撃つパチンカスは~?」


 手招きで銀髪の魔女に呼ばれ、カメラの前に躍り出る。

 魔女の友人こと『墨乃スミレ』……現在はカメラ越しか関係なく女の姿となっている存在。


「どうも、パチンカスです」


 普段着に赤いローブ、そして無骨な杖を携え、勝負の舞台に立つ。銀髪の魔女から渡されとりあえず着たものの……どこからどう見ても怪しい。


「この3番勝負で負けた方には罰ゲームを受けてもらいま~す」

「聞いてないが?」

「今言いました~それでは! それぞれ箱から1個、ボールを取り出してくださ~い」


 魔人と俺、交代でボールを取る。


「少しはまともな魔力になったようだな」

「はよ呪いを解いてくれ」


 俺『台』。

 魔人『勝負条件』のボールをそれぞれ引き当てた。ここまでは別にいい。問題は相手が何を条件にしてくるか…………


「ハッハッハッハッハ! この勝負、勝ったも同然! 勝負の条件はだ!」


 なんだろう、この既視感。

 画面端の勇者と灰髪の魔女がこちらを見ている。あ、この先の勝敗が見えたのか。


「あ、以前の配信を見ていた方もコメントしてますね~。『前やった打たずに玉だけ出すのナシ!』ですって~」

「だろうな」


 球貸連打(仮)は1回きりの反則技である。それに今回はあれをやるほど諭吉に余裕はない……なんとも生臭い理由か。


「既に貴様が反則を犯していたことは知っている! 残念だったな、1戦目はもらった!」


 意気揚々と笑う魔人。

 昨今の高速消化系台ならヤバい勝負だっただろうな。だが、それも織り込み済みだ。


「それじゃあスミレちゃん、台は何にする~?」

「もうキャラ作らなくていいだろ」


 早速店内へ入っていき、本日の勝負台のもとへ。

 ゲームが原作のパチンコ台、神を喰らうアレゴッ〇イーター……のである。高速消化と細かい出玉を重ねるゲーム性。無理矢理当てられるなら出玉の差を減らせばいい。どうしてこの台がちょうど2台あるのかは謎だが、店の采配に感謝。いそいそと魔王並びに異世界パーティが撮影の用意をしていた。


「出玉の量が少ない玉を選ぶことでなんとかなると思ったか?」

「さてね」

「兄弟子ぃ、勝てる見込みはあるのかぁ?」

「お前と考えた魔法ならいけるさ」

「貴様ッ! 魔王様と馴れ馴れしく喋るな!」

「へぇへぇ」


 お互い席に着き、1万円をサンドにツッコみ玉を召喚。今回は反則技ナシのガチンコ勝負。パチンカスとしてのヒキが試される。


「ではでは、パチンコ3番勝負第1戦、開始~!」

「魔王様の為なら神でも喰らって見せよう!」

「愛が重いなぁ……」


 呪いを解くため、いざ勝負パチンコ開始。



 ◇ ◇ ◇


 参考機種:P GOD EATER‐ブラッドの覚醒アマデジ神撃90Ver.

 確変中の『GET YOUR WORLD』はまさに神曲。

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