13. 追放者の反逆戦①

13. 追放者の反逆戦①




 勝負の日当日を迎える。私たちエルンのパーティーとクロスのパーティーはギルドの前に集まっている。あれ?見知らぬ2人がいる……また新しい仲間を加えたのか。クロスはギルド内でも人気はあるからな、優秀だと。意外にクロスのパーティーに加入したい熱心なギルド冒険者は多い。でもそれも今日までだよ。だって私たちが必ず勝つから。


「また仲間を増やしたんだね?」


「ああ。オリバーは優秀な盾役。アリシアは、君とそこにいるアティより優秀な回復魔法の使い手だよ」


「へー良かったね。でも人数を増やしても勝つのは私たちだから」


「強がりを。今日で君はギルドを去るんだ」


 私はクロスの挑発を冷静に聞き流す。そこにルナレットさんがやって来て依頼開始の合図を出す。ついに始まった。大丈夫。私はブレイドさんの作戦通りに事を運ぶだけだ。


「ほら走るわよ!」


 リーナが仲間に号令をかける。目的地は西の遺跡群か。ブレイドさんの言う通りだ。


「私たちも急ごう!エルン!」


「うん!」


「あっ待ってください~!」


 私たちも少し遅れて出発する。アティのハンマーの遅さで相手との距離は離されていく。


 ……これも作戦通りだ。



 ◇◇◇



 -勝負前日-

「先に行かせる?どういうことブレイド?」


「それじゃ先に依頼物を手に入れられてしまいませんか?」


 ミーユとアティは首をかしげる。確かにアティの言う通りではある。そしてそのまま先に行かせる理由をブレイドさんは話す。


「いいか?おそらく奴らは西の遺跡群へ大人数で行くはずだ。フレイムドレイクはおそらくあのクロスが一人で狩りに行くだろう。オレがクロスならそうする。西の遺跡群は魔物も多い、なら人数を増やすのが当然だ。」


「それはわかりましたけど、先に行かせる理由は何ですか?」


「エルン。オレたちは人数が少ない。だから奴らを先に行かせることで道中の魔物を狩ってもらう。無駄な体力を使う必要はない。オレたちがやることはあいつらより先に依頼物を手に入れることだ。魔物を狩りながら進むあいつらより少しだけ遅れてたどり着けるはずだ。」


「なるほど!頭いいねブレイド!」


 私たちは体力を温存して依頼物を先に手に入れるということだよね。


「しかもだ。アティお前がいることで更にあいつらは油断するはずだ。お前は、そのバトルハンマーのせいで歩くのが遅いからな」


「すいません……遅くて……ぐすっ」


「いや……怒ってはいない。だから半泣きになるなよ?」



 ◇◇◇


 ということ。ここまでは作戦通りだ。あとは向こうについてから始まる。私とミーユとアティが西の遺跡群に向かうことになる。人数的には3対5か、許容範囲だな。もちろんブレイドさんが東の呪いの洞窟に向かう。そんな時ミーユが私とアティに聞いてくる。


「あのさ。私はあいつらの事知らないんだけど軽くでいいから教えてくれる?」


「リーナは格闘家、グラッドは戦士、ロードは魔法使い。残りの二人は盾役と回復魔法要員って言ってたよ?」


「なんだかんだで私たちよりは戦闘経験があると思います。油断は出来ませんし、もし戦うことになったら勝てるか不安です」


 あんな奴らでも確かにアティの言う通り私たちよりは場数は踏んでいる。それにパーティーとしても戦いなれているはず。私がいた時は、私はほとんど回復魔法や補助魔法で援護したり、アイテム役だったり、ダンジョンのマッピングをする役目とかそんなのばっかりだったな。


「それなら大丈夫でしょ?戦いになってもエルンは無敵だもんね!」


「無敵!?エルンさんってそんなにすごい人だったんですか!?なんで追放をされてるんですか?」


「なんでだろうね……はははっ」


 無敵という表現が正しいかわからないけど、『相殺の調停キャンセラー』のスキルを使えば私が負けることは絶対ない。が相手を倒すこともない。そう考えると私はパーティーのみんなとなら最強だけど私単独なら最弱なのでは?あっでも負けないから最弱ではないか……。


 しばらく進んでいくと、道中には狩られた魔物の残骸が転がっている。やはりあいつらが先に行って魔物を倒している。私たちの作戦通りだな。そして目的の遺跡群にたどり着く。


「見てください!あの建物がワーロック古城です。」


 アティが指をさした方向には大きな古城がある。あそこに『月光水』『ムーラン花』があるのか。あいつらはもう中に入ってしまっただろうか……。そしてミーユが私に伝えてくる。


「タイミングバッチリだったね。今、中に入るみたいだよ。」


 ミーユは『鷹の目ホークアイ』を使って先の状況を確認してくれている。要領がいいモテる女子。私も確認してほしいと思っていたところだったから助かる。そのまま私たちはワーロック古城まで進んでいく。


「止まってエルン、アティ。こっちに隠れて」


 急にミーユは私とアティを静止する。そして入口に目をやると、そこには盾役のオリバー、回復魔法要員のアリシアが陣取っている。


「うーん。なるほど、新しく加入した2人を入口に残しているみたい。私たちを足止めしようとしてるって感じだよね?」


「残っているのは盾役と回復魔法要員か……」


「どうしますか?ハンマーでボコボコにしますか?やっちゃいますか?」


「とりあえず落ち着こうねアティ。」


 腕を回してアティは言う。ただアティは好戦的なだけだ。いやここは無理に戦う必要はない。何とか戦わずにあの2人を拘束できればな。しかし状況を確認するとあのアリシアが魔法バリアを張っている。あれでは拘束魔法は効かない。戦いは避けられないか……


「えっと……どれにしようかな。」


 ミーユはポシェットの中をあさっている。


「ミーユどうしたの、なんかいい方法でもあるの?」


「そだね。だから悪いんだけどエルン、あいつらの前に出ていってくれない?少しだけ気を引いてほしいんだよね?囮、囮!」


「はい?」


 嫌だよ!何で痛い目に合うかもしれないのに!ブレイドさんもミーユも私の事なんだと思っているんだ!とか言ってもしょうがない。これも勝負に勝つためと思えば……。アティにやらせるわけにはいかないし。私は自分で自分に言い聞かせて2人の前に飛び出していく。


「どうも~……。」


「アリシアさん来たっすよ!エルン=アクセルロッドが!」


「魔法バリアは展開しています。オリバーさんは物理攻撃にだけ気を付けてください」


「それは得意分野っす!さぁかかってこいっす!」


 いきなりパーティーに加入した割に連携が取れているのは草が生えるんですけど。さてミーユはどうするつもりなのか。まぁいいや、さぁ私たちの連携を見せよう!

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