10. 夢を語る

10. 夢を語る




 無事にアティとパーティー登録をすませ、依頼物のある場所を調べることにした私は、アティと共に王都の図書館に行くことにする。実はアティが仲間になってくれることが嬉しくて、本来の目的を忘れてギルドに戻っていたのだ。


 案の定ブレイドさんには怒られた。でもあの人、お酒飲んでるだけの癖に大人の特権とか言ってさ。本当にあのおじさんはしょうもない。


「エルンさん。待ってください~」


「あれ?あっごめんアティ」


 私は考えごとをしながら歩いていたのでアティを置いてきぼりにしてしまった。あと気づいたことがある。アティはめちゃめちゃ歩くのが遅い、というより背中のバトルハンマーが重すぎるのだと思う。


「アティさ、そのハンマーもう少し軽いのにできないの?魔物の戦闘の時に攻撃を避けられないんじゃ?」


「やられる前にやればいいのではないですか?このくらいの重量がないと私しっくり来なくて・・・えへへ」


 可愛いのだけど、頑固な人だ。あとはすごい力持ちとだけ教えておくね。


「そういえばアティはクロスたちと勝負するけど大丈夫?気まずくない?」


「逆に仕返しができるなんて素晴らしい事ですよね?私は私の事を追放したあの人たちを許しませんから。このハンマーでぺしゃんこにしてやりますよ!」


 あとは好戦的も追加しておくね。



 ◇◇◇



 私たちはそのまま真っ直ぐ目的の図書館にたどり着く。ここの図書館はローゼンシャリオ王国中のあらゆる本が保管されてる書庫もあるくらいの大きな図書館だ。一部の書物はギルドランクが上がらないと閲覧できない禁書もあるけど。


 私はあまり本を読まないからな、どうやって探せばいいのやら……。私のそんな心配をよそにアティは真っ直ぐ目的の依頼物が書いてある本を見つける。しかも慣れてるのかあっという間に私たちが探そうとしている依頼物の本を3冊持ってきた。


「これで全部ですねエルンさん。あれどうかしましたか?」


「いや早いね。私はどうやって探せばいいか分からなかったから助かっちゃった。アティは図書館によく来るの?」


「はい。本を読むのは好きなんです。私は昔、薬剤師になりたかったので。ある程度の素材の図鑑は頭に入っています。今回の依頼物は身体の麻痺を取り除く病気に効果がある『パラライズアクセント』を作るものだと思ったので、すぐに見つかりました。えへへ」


 私はそんな特技を持っているアティに関心しつつその本を借りてギルドに戻ることにした。アティをパーティーに勧誘して良かった。こういう戦闘以外に役に立つ特技があるというのは、これから私たちが『閃光』のようなギルド冒険者になるにはプラス要素にしかならない。そう思うとやっぱり私たちは最強になれるんじゃないかと考えてしまう。


 図書館とギルドを往復していたからか、もう外は夕焼けの空が見えている。早く戻らないとまたあのおじさんに嫌みを言われちゃうな。


「もうこんな時間になってしまいましたね。すいません私が歩くのが遅くて。」


「そんなことないよ。アティは気にしないで大丈夫目的の本も見つかったし、ギルドで待っているだけのブレイドさんは待たせればいいよ。ゆっくり帰ろうアティ。私アティに聞きたいこといっぱいあるし」


 せっかくだからアティと色々な話をして帰ろう。こういうのもパーティーの親睦を深めるのに重要だし、私はパーティーのリーダーなんだから。


「私に聞きたいことですか何でしょうか?」


「あっそんなかしこまらなくても大丈夫。ただアティはどうしてギルド冒険者になったのかなって」


「それは、図書館でも言いましたけど私は薬剤師になりたかったんです。幼いころに世の中で困っている人を助けられる仕事ってかっこいいなって子供ながらに思ってたんです。でも薬剤師になる為の試験の勉強が難しくて薬剤師になるのはあきらめたけど図鑑を見たりするのは好きだったので趣味程度では続けようと。でもやっぱり困っている人の役に立ちたいと思ってギルド冒険者の道を選んだんです。」


 ふと聞いた質問だったけどアティはすごく嬉しそうに話をしてくれた。困っている人を助けたいという思いが私にすごく伝わってきた。こんな優しい彼女が私のパーティーにいる。その夢を私はかなえてあげないといけないよね。


「そういうエルンさんは?」


「私は昔『閃光』と呼ばれていた最強のギルド冒険者パーティーに憧れてかな。私の田舎の村が一度盗賊団に襲われてね……。その時助けてくれたのが『閃光』の女性槍騎士の人だった。1人で大勢の盗賊をなぎ倒して村を救ってくれた。格好良かったんだ。」


「憧れですか……いいですね」


 というのが私がギルド冒険者になろうと思ったきっかけだ。だからブレイドさんには公には言っていないが私が憧れているのはブレイドさんということにもなる。でも私が一番憧れているのはその女性の槍騎士だけどね。


 私は『閃光』の事はあの時ブレイドさんから聞いた時以来、特に話を聞くことはしていない。それは今はまだ聞きべきではないと私が思っているからだ。


 ブレイドさんが言っていた『閃光』くらいまでの実力がついたなら、私は改めて聞こうと思う。だから早く依頼をこなして上のランクに行かないと。


「まぁ結局。なんだかんだ言っても目的は困っている人を助けたり、世界の平和を守ったり、世紀の大発見をしたりするのがギルド冒険者だよ」


「そうかもしれませんね。」


「そんな私の夢を失うわけにはいかないし、クロスのパーティーの勝負に勝とうねアティ!絶対勝つぞー、おー!」


「おー!」


 私とアティは周りの目も気にせず赤い赤い夕焼け空に向かって改めて拳を天に向け決意を示すのだった。

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