タイムリープしたからといって、恋愛というのは必ずしも上手くいくとは限らないようだ。
若葉結実(わかば ゆいみ)
第1話
チャイムが鳴り授業が始まる──先生が「じゃあこれ、配るから回してくれ」と、言って、プリントを配り始めた。
──俺は前の席のクラスメイトからプリントを受け取ると、一枚とって、余りをわざと右を向いて後ろの席のクラスメイトに渡した。
艶のあるセミロングの髪型に整った顔立ち……相変わらず隣の席の笹原
俺がそう思っていると、明美ちゃんは視線に気付いたのかニコッと微笑み「なに?」と、可愛らしい声で聞いてきた。
顔だけじゃない……こういう気さくで明るい印象のある所も、俺は好きだ。明美ちゃんに見つめられ、照れくさくなった俺は顔を逸らす。
「な、何でもない」
「ふふ、そう」
──ヤバい……明美ちゃんの笑顔が頭から離れなくて、ドキドキが止まらなくなってしまった。
※※※
授業が終わり休み時間に入る──俺が少し休んでおこうと、うつ伏せで寝ていると、隣から「明美、
声の主が気になった俺は、顔を隣の席の方へと向け、チラッと見てみる。視線の先に立っていたのは、中学の時の同級生、岡村
「うん」
「中学の時も隣になってたし、羨ましいな……」
その答えに対して明美ちゃんは──何も答えなかった。明美ちゃんの気持ちが少しでも聞けると思ったんだが……残念だ。
※※※
放課後になり、俺は靴を履き替え、昇降口を出た──あ……俺は目の前を歩く明美ちゃんと、
「──どうしたの?」と、後ろから女子の声が聞こえ、俺はチラッと視線を向ける。弥生さんだと確認すると「いや……あの二人、昔から仲が良いなって思って」
弥生さんは俺の返答に困ったのか黙り込んだまま、横に並んだ──。
「そうかな? 私は恭介君の方が仲良いと思うよ」と、弥生さんはこちらを見ることなく、二人を見つめながら言って、続けて「羨ましいと思うぐらいね……」と、上手く聞こえないぐらいボソッと言った。
「そ、そうかな? ありがとう」
弥生さんはニコッと微笑むと「うん!」と、返事をして歩き出す──。
ハッキリ言って、俺は明美ちゃんとの関係に自信が無かった……でも他の人が羨ましいと思うぐらい、明美ちゃんと仲良しに見える? つまり俺は他の男子より優位な立場に居るって事で良いんだよな!?
──俺はニヤけそうになるのを必死に抑えながら、弥生さんを見送った。
※※※
次の日。体育の授業で俺はサッカーをしていた。運動が苦手な俺は、ディフェンスにまわってボォーっとクラスメイトのプレーを観ていた。
「恭介、行ったぞ!」
クラスメイトの声が聞こえ、俺はグッと腰を低くしてドリブルしてくる同学年の男子を迎え撃つ──
しまった! 男子のフェイントにつられ俺は──態勢を崩して転んでしまう。
「──いてぇ……」
「大丈夫」
隆が近づいて来て、そう声を掛けてくれる。恥ずかしい……俺はパッパッと体についた土を払いながら「うん、大丈夫」と返した。
「良かった」と、隆は言って、自分が居た場所へと戻っていく.
──周りに女子が居なくて良かった。こんなカッコ悪い姿、見せたくないもんな。
※※※
授業が終わり俺は教室へと向かう。廊下を歩いていると、後ろから男子の笑い声が聞こえてきた。
「最後の1点が決め手になったな。さすがサッカー部、レギュラー!」
「あんなの、どうって事ないよ」
そんな会話をしながら、同学年の男子が、通り過ぎていく。あんなのねぇ……俺の事を言っていないと分かっていても、何だか腹が立って立ち止まる。
──すると突然、後ろから温かい手が俺の肩を叩く。ビックリした俺は、直ぐに後ろを振り返った。
「肩に土がついていたよ。頑張ったんだね」と、明美ちゃんは言ってニコッと微笑む。俺は転んだなんて言えず「いや……楽しくて」
明美ちゃんは「ふふ」と、笑顔を浮かべたまま、歩き出し行ってしまった。置き去りにされた俺は、明美ちゃんが土を払ってくれた肩を触りながら、黙って見送る──。
俺は腹立つ気持ちはスッカリ消え失せ、好きでもない相手にこんなことするかな……これって──いけんじゃない? なんて考えていた。
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