第4話

 ご飯は、とっても美味しかった。とりあえずお腹いっぱいになって、改めて山神様の家と言う場所をよく見てみると、洞窟のような場所だった。炊事場や椅子やちゃぶ台など家具のほとんどが石で作られている。

 一応、扉もあり風も雨も入ってこないようになっていた。


「おい、ゲロまみれ!風呂に入れ!」

 そう言われて案内された部屋は岩風呂になっていて、自慢気に温泉を引いてる源泉かけ流しだ!と教えてくれた。

 着替えや手拭いも用意してある。

 体を洗って、温泉に浸かる。人生で初めての温泉だ。

「ふはぁーーー。」

 気持ち良い。恐怖と緊張でカッチカチになっていた体がほぐれていくのが分かる。温泉ってこんなにも気持ち良いものなんだぁ~。しかも、この温泉、かなり大きい。村の端にある池くらいの大きさで泳げそうだ。

 温泉を堪能して、体を拭いて用意してあった着替えを着ようとするが、見た事ない物が置いてありどうしていいかわからない。

 そのまま裸で出て行くわけにもいかず、思い切って神様に聞いてみる事にした。

「あの~、すみませーーん。」

「なんだ?」

「ど、どう着たらいいのか分かりません。」

「…………はぁ~……世話のやける。」


 一応薄い手拭いを当ててはいたが、ほぼ裸の状態なのに神様が入って来た。


「ぃぎゃーーー!!変態!」

「ぅわ!誰が変態だ!!失礼な!お前が分からない言うから来てやったのに!」

「だ、だって!」

「だってじゃない!それにお前は俺の嫁だ!よ・め!!それくらい覚悟して来たんだろ?」

「……?覚悟?」

「……はぁ~………。もぅいい!」

 なぜかぶつぶつ言いながら、着替えを手伝ってくれた。恥ずかしいけど、裸のままウロウロするよりマシだ。

 なんでも、パンツという物をお尻回りに着けるらしい。それと頭から被る、トレーナーとやらを着て、ズボンと言う物を穿くらしい。


 変態の神様は、出来るだけ見ないようにしながら、着方を教えてくれた。


 湯冷めしないように火のそばに座らせてくれ、ここでの生活の仕方や私の仕事を教えてくれた。


 私の仕事は、掃除や洗濯、料理など。それと、織物をしてほしいと言われた。機織りの仕方は神様が教えてくれるらしい。あと、一応嫁だから、子作りもと言われたが、子ができるのに何か仕事がいるのか?と聞くと、頭を抱えていた。

 そこについては、またゆっくり教えてくれるらしい。


 私の部屋もあるらしく、案内してもらい入ると、かなり広い部屋に昨夜の布団よりもふっかふかの大きな布団が椅子くらいの高さの場所に敷いてあった。

 

「今日は、疲れただろ。もぅ寝ろ。朝は俺が起こす。俺は寝ないから。」

「はい。おやすみなさい。」


 温泉は、いつまでも体がポカポカして布団に入ったらすぐに寝てしまった。


「おい!起きろ!!」

「……はい。」

「桃、朝飯作れるか?」

「一応私が食事は作っていたから出来ると思います。クロモ様。」

 昨日、寝る前にやっとお互いの名前を名乗った。本当は黒蜘蛛と言う名前らしいが、口にするのも嫌なので、相談の結果『クロモ』と呼ぶことにした。

「別に、様はつけなくていい。」

「でも、一応旦那様なので……。」

「んじゃ、旦那様でよくないか?」

「いや、なんとなく拒絶感が……。」

「………。」


 炊事場は、村とそんなに変わった所もなく、普通に使う事が出来た。

 ご飯を食べながら、ふと思い出した。


「クロモ様!大変。近所に住んでた源って子が、嫁入りの場所まで迎えに来るって言ってた!」

「は?嫁入りしたのに迎えに来てどーするんだ?」

「いや、だって本当に山神様がいるかどうか分からなかったし!」

「放っておいたらいいだろう。」

「……うん。そうなんだけど、心配で。」

「そいつの事、好きだったのか?」

「……?はい、小さい頃から遊んでたし普通に好きでしたよ。」

「結婚の約束でも?」

「?結婚??なんで?」

「………いや、いい。……わかった。様子を見て来てやる。元の姿に戻って行くから、桃は着いてくるなよ!またゲロまみれになられたら困るからな!」

「……は、はい。」

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