1 『終わったはずの××』
スピーカーから流れ出す、Nobody's Love。
あの日終わったはずの恋に、嵐が吹き荒れるなんて想像もしていなかった。
「だーかーらー」
もし半年後に彼氏がいなくて、自分と付き合いたいと思うのであれば、会ってあげると優人が言ったらしい。
──俺はそんなことを言ったのか?
本当に?
あの時は、泣きじゃくる結愛を
けれども、このままでは良くないと思ったのだ。
恋人が出来ても、優人と比べる。
その事が原因で上手くいかなくなり、優人に泣きつく。
『なら、より戻す?』
と聞いても彼女はうんとは言わない。
こんなことを続けていても、結愛は幸せにはならない。
だったらいっそ、二度と会わない。
自分のことは忘れろと言ったはずなのに。
──俺だって忘れる努力はしたはずだ。
やっと前に進めると思ったのに、これは一体?
「結愛、いっぱい考えたの」
その足りない頭でか?
「優人が
「俺は嫌。お前、束縛激しいし」
自分の膝の上に肩ひじをつき、頬杖をついていた優人は、突然抱き着かれてバランスを崩す。
「なんだよ、危ないだろ?」
「お膝抱っこ」
胸が頬に当たり、色気で何とかしようとしているのか? と思いながらも、
「あー、はいはい」
といって要望を叶えてやる。
「で?」
正直、以前のように振り回されるのはごめんだ。
「優人は彼女いるの?」
もじもじしながら聞く彼女に、恋人がいてこんなことしてたら殴られるぞ?
と思いつつ、
「今はいない」
と答える。
「ならいいでしょ?」
「何がだ」
「相変わらず、仲がよろしいことで」
とキッチンにいた平田がリビングのテーブルの上に、飲み物とお菓子を置いていく。
「どこがだよ」
と優人が嫌そうに言うと、
「もう、つきあっちゃえばいいのに」
と爆弾を投下する。
「助けるという選択肢はないのか?」
「俺が元カノちゃんとつきあっても良いけど、優人キレるでしょ」
そう言われてしまうと、返す言葉もない。
──ん?
付き合う?
平田の言葉を反芻し、結愛が何と言っていたのか思い出す。
”『もし半年後に彼氏がいなくて、自分と付き合いたいと思うのであれば、会ってあげる』と優人が言ったから来たの”
「はあ?!」
現状をやっと把握し、素っ頓狂な声をあげる優人。
「どうしたの? 急に大きな声出して」
と結愛。
「な、なに。お前、俺と付き合いたいの?」
あまりに動揺し、上手く言葉が発せなかった優人に対し、
「だから、初めからそう言っている」
と結愛。
「ちょ……ちょっと待て」
意外な展開に思考が追い付かない優人であった。
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