第53話 アル様視点4 母が全面的にシルフィとのことをバックアップしてくれるなら助かると思ってしまいました

「な、何でこうなる」

俺は頭を抱えていた。


何とか、賢明にシルフィと仲良くしてきた。良い所まで来たのだ。


しかしだ。そこでなぜ母親が出てくる?


絶対におかしいだろう!


せっかくシルフィと仲良くなったのに! いきなりシルフィを連れて実家にお邪魔するってどうなの?

俺はその報告を聞いた時に目が点になった。


何故息子がアプローチしている女の所に、本人もまだ行っていないのに、母が行く?


シルフィが平民の女だから早速潰しに行ったのか? 王妃がいきなり訪ねていけば、その家族はビビルはずだ。そして、脅して俺を諦めろという気か?

俺は慌てて、シルフィの実家に向かったのだ。




でも、そこでは思わぬ展開が待っていたのだ。


仲良さそうに母親同士が談笑していたのだ。


何で? 何でこうなる?


母は泣く子も黙る鬼王妃だったはずだ。何人もの侍女見習いの貴族令嬢をイビリ倒した母なのだ。当然、シルフィの親にも嫌味炸裂しているはずだった。


それが仲良くしているのだ。


「あらあら、アルフォンス、人様のお宅にノックもなしに入ってくるなんてどう言うつもりなの?」

母は俺を注意してきたのだ。

なんかすでにその中に溶け込んでいるんだけど。平民のおばちゃんみたいに。


そこで、俺は母とシルフィの母が学園の同窓で、親友だったと初めて聞いたのだ。


ええええ! 母とシルフィの母が親友?


そんなの聞いていない。


そして、話は何故か俺とシルフィの事になったのだ。二人の意思など放っておいて・・・・。


「最近ソーメルス侯爵が、娘をアルの相手にって、煩いみたいなんだけど、あの子トゥーナの娘なのよ。あれの娘が義理の娘なんて絶対にいやよ。その点シルフィちゃんなら、その母親はティナだから。私も嬉しいんだけど」

ええええ! 平民のシルフィが俺の相手でいいの? これからこのうるさい鬼姑の母をどうして説得しようと思っていたのだ。それが気に入った発言。今まで平民の女はだめだとか、離れろとか散々言っていたくせに・・・・何故ここまで変わる?


「娘は平民よ。王太子殿下の相手なんて無理よ」

シルフィのお母様の発言が余程常識だった。普通その反応だよね。


「何言っているのよ。昔はそんなの気にしたこと無いくせに。あんた未来の国王に対してもあんなに酷いことしていたじゃない。未だに陛下はあんたには会いたくないみたいよ」

なんか母が凄いこと言っているんだけど、そういえば父からは母とシルフィの母が親友だとは聞いたことがなかった。と言うか絶対に極秘にされていた。影共も俺にはそんな大切な情報教えてくれなかった。そもそも、影共は俺がシルフィにアプローチしているのは知っていたし、シルフィの母が誰かも知っているはずだ。眼の前の状況見るに、それを母が知っていたなら、あんなに反対はしなかったはずだ。


「だから、娘は平民だから絶対に無理だって!」

「そんなの、私とテレシアとあなたが揃えば不可能なんて無いわよ。貴族の大半は私達には逆らえないんだから」

こんな風に言っているんだから。


という事は父が意図的に隠していたのだ。父としては義理の娘の母がシルフィの母では絶対に嫌だったのだとその時に知ったのだ。だって父は、シルフィの父のバースは平気で重用しているのだ。

でも、このシルフィの母はどう見てもまともなんだけど。何故そこまで嫌うんだろう?


王宮にも、王妃の名前を出せば平気で顔を出せたのに、出さなかったし、今も王宮に行くのを嫌がっている。下手なやつが権力持つとそれを使いたがるんだけど、この母ではそれはないと思うんだけど。


そのシルフィの母を、なんか母が強引に誘っているんだけど。


俺は母が全面的にバックアップしてくれるのならば、良いとその時は思ったのだ。

だってシルフィとの間の一番のネックは母だと思っていたから。


今王宮で一番力を持っているのは母だし、その母さえ後ろに付けば良いと思ったのだ。


でも、俺はシルフィが固まっているのが気になった。そういえばシルフィには俺が王太子だとは言っていなかった。


そこが一番のネックかもしれないと思ったのだ。


でも、実際は母だったのだ。それを俺は思い知ることになる。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る