第32話 偽物尊師と合体千冬
数日後,
ー 魔界の千雪御殿 ー
北東領主は,準備をすべて整えた。尊師の魔力因子を得て,完璧な擬態が完成した。北東領主は,自分で手をくだすことを選んだ。犯行がバレず,リスクは少ないと考えたからだ。
北東領主は,教団に出向いて,受付の前に来た。
北東領主「私は,尊師だ。千雪のために,意識を回復させる魔法を施しに来た。千雪に会わせてほしい」
受付「お待ちください。今,教祖の弟子が面倒みています。弟子の方を呼んできます」
しばらくして,千秋が受付に来た。
千秋「尊師。どうしたのですか?わざわざ,教団に来ていただいて?」
北東領主「ああ,千雪の意識を回復させる魔法を見つけたので,千雪に術をかけにきた」
千秋「尊師,声が変わっていますけど,どうしたんですか?風邪でも引いたのですか?」
北東領主「コホン,コホン,コホン。いや,いや風邪をこじらせてな。扁桃腺を痛めてしって,声を出すのがしんどいのだ」
千秋「そうでしたか。お大事に。ではこちらへ」
受付「あのーー,待ってください。部外者の方は,必ず,宣誓契約をしないといけない決まりですので。宣誓契約してください」
千秋「尊師は,部外者じゃないわよ」
受付「でも,ここに住んでいない人は皆部外者になります。決まりです。私があとで怒られます。怒られるだけならいいのですが,殺されてしまいます。お願いです。宣誓契約してください」
千秋「うるさいわね。わかったわ。尊師,すいませんが,宣誓契約してください」
北東領主にとっては,予定通りの展開なので,問題はなかった。北東領主は,宣誓契約をした。そして,千秋の引率で千雪のそばにきた」
千夏「尊師ですか。わざわざ,お越しいただきましてありがとうございます。千雪様はまだ意識を回復しません。でも,顔色がずいぶんと良くなってきたから,もしかしたら,数日で目覚めるかもしれません」
北東領主「千雪の意識を回復させる魔法を見つけた。うまくいくかどうかは不明だが,試してみる価値はある。すまんが,少しの間だけ,席を外してくれないか?」
千夏「わかりました。よろしくお願います」
千秋と千夏は,席をはずした。千雪の寝ている部屋には,もちろん監視魔法陣が設置されており,隣の部屋で,その映像が見れる。千春と千夏は,隣の部屋でその映像を見た」
北東領主は,千雪の頭部に手を当てて,魔法陣を起動した。この魔法陣は,快楽神経を何倍にもするものだ。特に難しい技術を必要としない。ただ,快楽が高じて,心臓の鼓動が異常に早くなり,そして,心臓発作を引き起こして死しんでしまうという副作用があるだけだ。意識のある正常な人には,この術をかけても成功しない。しかし,意識がない人には容易に成功する。千雪が,意識のある正常な人にも,この術をかけれたのは,霊力があるためだ」
千秋と千夏は,擬態した尊師が,術がかけ終わったのをみて,彼の傍にかけよった。
千秋「尊師,術は成功しましたか?」
北東領主「術をかけたが,どうもうまくいかないようだ。でも,確実に,数日は目覚めるのが早くなるだろう」
千秋「そうですか。それはよかった。ありがとうございました」
北東領主「いやいや。礼にはおよばん。では,これで,失礼する」
北東領主は,千秋と千夏に見送られて,教団を後にした。そして,転移で,自分の領主邸に戻った。そして,擬態を解いた」
ー 北東領主邸 ー
北東領主邸では,国王軍のカベール隊長が領主の帰りを待っていた。
カベール隊長「北東領主,守備はどうでしたか?」
北東領主「やあ,カベール隊長。はい,成功しました。スムーズに千雪に快楽神経の支配ができました」
隊長「そうでしたか。それはよかった。ということは,千雪側に,今回のことがばれるには,まだ時間がかかるとみていいのですね」
北東領主「ばれるかどうかは,わからんが,隊長は何を心配しているのでしょう?」
隊長「ええ,千雪に手を出した人は,かならず死にます。バレたら,領主の命はないでしょう。そこで,領主の助けになる方法はないかと考えまして,他の領主にも相談したのです。そしたら,ゴーレムと死霊術の死体を提供いただけることになりました。いわば護衛ですね」
北東領主「そうでしたか。それは助かります。ですが,もし,千雪の殺害に失敗した場合,千雪に勝てる方法はないでしょう?万一,バレた場合は,指輪の力を借りて,別の世界にでも転送させてもらいます。ハハハ」
北東領主の言葉はほんとうだ。別次元の世界に逃げて,新しい人生を生きるのもいいもんだと思った。すでに,以前,千雪に渡った複製体の指輪は,すでに北東領主の元に戻っている。
隊長「りっぱな覚悟です。こちらも,最善のことはします。もし,高純度の魔力結晶が間に合えば,ゴーレムを10体,死霊術による死霊体10体を導入しましょう。 そして,ドラゴンの指輪を前国王からお借りして,合体魔法をかけます。合体ゴーレムと合体死霊体を創ります。どうですか?これから,そこそこ勝負になるとおもうのですが?」
北東領主「前の会議でも,映像を見ましたけど,ドラゴン1000体の合体ドラゴンで,やっと千雪に勝てるかどうかでしたよね。10体程度の合体では,無理と思います。合体するなら,分散するよりも,一体に集中するほうがいいのではないでしょうか?」
隊長「ええ,そうなのですが,こちらにも立場がありまして,2人の領主の好意を断れないのです。そこは,ご理解ください。それと,もし合体ゴーレムや合体死霊体が間に合えば,監視映像魔法陣で戦いの状況を記録させていただきたいと思います。今後の戦略の参考にしたいと思います」
北東領主「なるほど。隊長の立場は,よくわかりました。それで結構です」
隊長「すいません。無理なことをいって申し訳ありません。では,これで失礼します」
ーーー
それから2週間が経った。
ー 魔界,教団ー千雪の部屋 ー
千雪は,意識を取り戻した。意識を取り戻す直前,千雪は,リスベルの霊体によって起こされた。
リスベル『千雪,千雪。もう起きなさいよ。何をそんなに寝ているのよ。私の霊体は,千雪のと繋がったのよ。強制的に起こすことだってできるのよ。でも,それはしたくないわ。
それはともかく,わたし,別次元の世界で,女性化してしまって,死んだの。あなたのために死ねて,ほんとうに嬉しかった。でも,なぜか,今,千雪の体に縛り付けられてしまったの。
この体は,千雪のだから,千雪が意識のあるときは,私は寝ることにするわ。でも,千雪が意識のないときは,この体,ちょっとだけ貸してね。霊力を使えるように練習したいの。いざっていうとに,この体を守ることだってできるでしょう。
それに,霊力がうまく使えるようになれば,霊力の腕を創れるようになるし,その腕を自分の意思で自由に扱えるようになるかもしれないしね。千雪が目覚めていてもいなくても関係なくね。
ふふふ,千雪の体って,とても便利ね。気に行っちゃったわ。千雪,もう目覚めなさい。目覚めないと,この体,私が奪っちゃうわよ。
千雪ーーーー!起きれーーーー!!」
千雪の霊体は,連結したリスベルの霊体によって無理矢理,起こされた。千雪は,ゆっくりと,目を開いた。
千夏「千雪様,千雪様,目覚めました?よかった。やっと目覚めてくれました」
千秋「千雪様,よかったです!」
千冬「千雪様,わーん。わーん」
千雪「そうか,,,,リスベルに起こされたのか。霊体がリスベルと繋がった,とか言っていた,,,でも,記憶も読めないし,ガードしてるのかな? 千夏,私が魔界に来てからのこと,説明してくれる?」
千夏「はい,では,説明しますね」
千夏は,千雪がピアロビ顧問の娘ビピアに連れられて,尊師の道場に転送したこと,精神科女医のサブリナによって,別の霊体と連結されたこと,そして,教団に来てからは,一度,尊師が意識を回復させる術をしたことを説明した。
千雪「そうでしたか,,,リスベルの霊体と強制的に繋がれたのですね?なるほど。よかったのか,悪かったのかわからないけど,あまり影響ないわね。お前たち,あの監視映像魔法陣の録画を止めてきて」
千秋「はーい。止めてきまーす」
千秋と千冬は,この意味がすぐ理解できた。誰が最初に千雪に抱かれるかじゃんけんした。尚,千夏は,そのじゃんけんには参加しなかった。
その結果,最初に抱かれるのは千冬だ。千夏と千秋は席を外した。
千冬は,そそくさと,全裸になって,千雪に抱き着いた。千雪は全裸になった。
千冬「千雪様? それは何?もしかして,男性自身ですか?精子も造れるのですか?」
千雪「そうよ。私の子供を産むのよ」
千冬「嬉しいです。夢みてました!!」
千雪は,千冬を抱いた。だが,快楽の極致が全身を覆い,その異常興奮状態が続いた。さすがに変だと気がついて,なんとか,この異常興奮状態は,なんとかできるだろうと高をくくって,いつものように,千冬の体に,呪詛を植え付けた。しかも,即効性の呪詛だ。霊力使いを手籠めにできるのなら,かなりの強敵なので,即効性は必須だ。
千雪は,次に,なんとか,この異常興奮状態を制御しようと思った。だが,,,制御できずに,異常興奮状態がさらにひどくなっていき,とうとう体が耐えきれず,心臓発作を引き起して,心臓が急激に止まってしまった。
千雪は,千冬を抱くようにして,その場に倒れた。
ドタッ!!
千冬は,最初,千雪が疲れて倒れたのだと思った。でも,千雪のオーラが,意識のある状態でのオーラではない。気絶しているか,死んだ直後のようなオーラだった。
千冬「千雪様?千雪様?千雪様ーー!」
千冬は,すぐに千雪を仰向けにして寝かせて,千雪の息や心臓の鼓動を確認した。だが,どちらも停止していた。
千冬「みんなーー! すぐ来てーー! 千雪様が死んじゃったー!」
そのかけ声に,すぐに反応したのは千夏だった。彼女は,すぐに千雪のもとに駆け付けた。そして,千雪の体の状況を把握した。
千夏「千冬,慌てないで。心臓と呼吸が止まっただけよ。千冬,マウスツゥーマウスで人工呼吸して。私は,霊力を流して,強制的に心臓を動かすわ。急いで!」
千冬は的確に最善の対策を行った。呼吸や心臓が止まったばかりであり,その後,1分もかからずに,強制的に千雪の肺と心臓をふたたび動くようにした。10分後には,千雪は完全に回復した。いや,正確には,肉体だけは回復したと言ったほうがよい。
千雪の霊体は,相変わらず,快楽の世界を彷徨ていた。やむなく,リスベルの霊体は,蘇生した千雪の体を支配することにした。
リスベル「ふうー,もういいわ,ありがとう。私は生きてるから大丈夫よ」
千春「千雪様,どうしちゃったのですか?呼吸と心臓が止まりましたよ」
リスベル「そうだったのね。だれかが,千雪に,快楽神経支配をしたのでしょう。無意識だったから,容易だったのでしょう。それに,快楽を追及するから,宣誓契約の違反にはならないわ」
千夏「誰かって,教団に来てから,尊師しか来ていませんけど」
リスベル「じゃあ,尊師が犯人よ。何かおかしなことなかった?」
千夏「そういえば,声が変わっていたわ。風邪を引いたって」
リスベル「そうなの?都合がいいわね。ちょうど風邪をひくなんて」
千夏「じゃあ,誰かが尊師に化けたのですか?」
リスベル「千雪を殺したい人は,山ほどいるわ。まずは,尊師の映像を詳しく見せてちょうだい。細かな特徴があるはずだわ。それと,快楽精神支配を解く方法を調べてちょうだい」
千夏「快楽精神支配?そんなの快楽神経の中に,霊力を流してやれば,すぐかき消せるでしょう?」
リスベル「私,霊力をうまく使えないのよ。これから練習するけどね」
千夏「え? どういうこと? もしかして,千雪様でないの? あの連結されたもう一方の霊体さんなの?」
リスベル「ふふふ。頭の回転が速いわね。そうよ。私は,リスベルよ。千雪の霊体に連結されたもう一方の霊体よ」
千夏「え?リスベル様? どこか別の世界に飛ばされたって聞いたんですけど?」
リスベル「そうよ。でも,幸い,こうやって,生きているわ。それに,千雪の霊体も無事よ。でも,快楽の世界で発狂中よ。いつになったら,もとに戻るのかしらね。私もわからないわ。まあ,千雪本人は幸せでしょうけどね」
千夏「そうだったのですか,,,ところで,リスベル様は,女性のようなしゃべり方なのですけど,何か理由があるのですか?」
リスベル「ちょっとね。ゴブリン大陸で女性化してしまったのよ。だから,女性のリスベルと思ってちょうだい」
千夏「わかりました。千雪様と区別したいのですが,リスベル様をどうお呼びすればいいですか?」
リスベル「そうね,,,千雪の影のような存在だから,,,千影とでも呼んでちょうだい」
千夏「千影,,,良い名前ですね。わかりました。千影様!」
千夏は,リスベルを連れてビデオ室に行き,尊師が千雪と一緒にいる映像を流した。千春とリスベルは,映像に映し出された偽物の尊師の行動を詳しく見た。
千夏「よく見れば,確かに本物の尊師ではないような気もするのですけど,それが誰だかまったくわかりません」
リスベル「ふふふ。当然だ。誰もわかるものはおるまい」
千夏「その笑い,,,え?千影様は,わかったのですか?」
リスベル「ふふふ」
リスベルは,明確な返事を避けた。そんなことよりも,リスベルは,至急することがあった。それは,千雪並に霊力を扱って,強者になることだ。そこで,精緻に霊力を扱える千夏に,霊力の指導をお願いした。
リスベルは,基礎的な霊力をすでに扱えることができたので,霊力の修得の速度は早かった。加速までは使えないが,体の防御や,さらに左右の肩から新しく霊力で形成された腕を生やして,防御することを可能にした。
実は,リスベルは,千雪をいつでも正気にもどせた。でも,千雪を快楽の世界に追いやった犯人の素性を考えると,千影のままのほうがよいと判断した。
さらに,リスベルは千夏たち3名のパワーアップを図ることにした。それは,リスベルがゴブリン大陸で覚えた合体魔法を使う方法だ。
リスベルは,3人に合体魔法をかけることにして,千夏たち3を勢揃いさせた。
リスベル「今から,3人を合体させます。いいですね?」
千夏「合体って,3人が一人になるってことですか?私たちの意識はどうなるのですか?」
リスベル「意識は,主体となる人の霊体が支配するのよ。他の人の霊体がその体を支配したいなら,その都度,霊体同士で相談すればいいわ。まずは,体験してみることね。,服を脱いで全裸になりなさい。準備はいいですか?」
千夏は,ちょっと躊躇って言った。
千夏「千影様,わたしは,千秋や千冬と異なる霊力を使っています。合体には不向きなのではないでしょうか?」
リスベル「・・・」
リスベルは,少々考えて,千夏も合体魔法から外すことにした。結局,合体するのは,千秋と千冬の2名になった。
今度は,千秋が質問した。
千秋「千影様,合体魔法って,1+1は2なのでしょうか? もし,1+1が3とか,4になるのなら,合体魔法の価値があるのですが,1+1が2なら,単独で行動する方がメリットは大きいと思います」
リスベル「その疑問はもっともだ。合体のメリット,それは,1+1が3にも4にもなることを意味する。一度,経験してみなさい」
千秋「わかりました」
千冬「わたしも一度,経験してみたいと思います」
リスベル「意識は,主体となる人の霊体が支配するのよ。他の人の霊体がその体を支配したいなら,その都度,霊体同士で相談すればいいわ。まずは,体験してみることね。服を脱いで全裸になりなさい」
千秋と千冬は全裸になった。
リスベルは,千雪の体にある霊力を使って,合体魔法陣を起動した。その魔法陣の中に,千秋と千冬が体を合わせるようにした。たまたま,千冬が前で千秋が後ろ側に立った。
すると,千秋の体が千冬の体に溶け込むようにして融合していった。そのため,見かけは千冬だった。
だが,その能力は2倍に止まらず,訓練次第によっては,3倍にも4倍にもなる可能性がある。
合体千冬「千影様。体に膨大な霊力が渦巻いている感じがします。もう,なんでもできそうな感じです。最高な気分です」
影雪「そうか?じゃあ,対戦相手が必要ね。じゃあ,寅吉のところへいきましょう。寅吉と勝負しましょう。彼を殺してもかまいません。どうせ千雪によって,生き返るのですから」
合体千冬「はい,いずれは,寅吉様と勝負はしたかったのです。でも,こんな形で勝負するとは思ってもみませんでしたが」
影雪と合体千冬は,寅吉のいる教団本部のホールに来た。寅吉は,エルゼとフレールらと一緒に,商品開発の仕事をしていた。最近は,特に戦いもなく,暇を持て余しており,興味のない商品開発の会議に顔を出す日々だった。
リスベルが千雪の肉体を支配しているとは,つゆも知らないエルザは,能天気に千雪に声をかけた。
エルザ「あら?千雪?意識もどったんだって? よかったわね」
リスベル「エルザは,情がないわね。意識が目覚めても,一度も会いに来ないんだから。フレールも来なかったわね。寅吉も薄情ね」
寅吉は,リスベルを見て,フン,と一瞥して,そっぽを向いた。リスベルが千雪の体を支配していることを一瞬で見抜いた。
フレール「だってさ,千夏たちがいるし,おじゃまかなってね?」
リスベル「別に怒っていないわ」
リスベルは,エルザとフレールの胸をギュッと掴んだ。
リスベル「エルザ,フレール。やっと,お前たちの胸に触れたわ。ふふふ。こんな日が来るなんて,夢みたいだ」
胸を触れたエルザとフレールは,あまりびっくりもしなかった。確かに千雪に触られることはほとんどなかったが,びっくりすることでもない。
エルザ「千雪? なに,人の胸,触っているのよ。あんたの愛人,たくさんいるでしょう?」
フレール「千雪,胸触ってもいいけど,大きくしてよ。私たち,胸小さいから,肩身が狭いわ」
リスベルとして,まだこの魔界で生きていた時,エルザとフレールは,リスベルの護衛としての身分であり,リスベルは彼女らの体にいっさい触ってはならないという宣誓契約をしていた。当時のリスベルは,エルザやフレールの体に触りたくても,まったく手が出せなかった。
リスベルは,彼女らがからかい半分で,リスベルの目の前でオナニーをしてるのを,恨めしく思った日々を懐かしく思い出した。今は,精神が女性化しているせいか,あの時の悔しさを仕返ししたい,という意識はない。でも,せっかくのチャンスなので,彼女らを抱けるものなら抱いてみたいという気分にだんだんとなってきた。
リスベル「そうね。エルザ,フレール。今晩,わたしの部屋に来なさい」
エルザ「そうね。胸を大きくしてくれるならいいわ」
フレール「わたしも,それでいいですよーー」
エルザとフレールは,胸が大きくしてもらえるならと,千雪の部屋に行くことに同意した。
リスベルは,視線を寅吉に移した。そして,おもむろに命じた。
リスベル「寅吉,千冬と勝負しなさい」
だが,寅吉は拒否した。
寅吉「あんたの命令は聞かん」
だが,寅吉の拒否は意味がなかった。
リスベル「千冬,寅吉を攻撃しなさい!」
合体千冬「はい。千影様」
合体千冬は,手刀で首を切り落とそうと,20倍速で寅吉に迫った。寅吉は,慌てて,20倍速で身をかわした。合体千冬は,一挙に100倍速にスピードアップして,再度,寅吉に迫った。
寅吉は慌てた。寅吉も,今では100倍速が使えた。寅吉は,慌てて,ギリギリ,その攻撃を躱した。
合体千冬「200倍速ーー!!」
合体千冬は,かけ声とともに,200倍速で寅吉に攻撃した。寅吉は,200倍速と聞いて,ヤバイと思った。すぐに強力な防御結界を自分の周囲に展開した。
ガガーーン!
防御結界は,合体千冬の手刀とぶつかった。だが,この結界は,手刀の攻撃を0.1秒だけ遅らせるだけだった。0.1秒後には,結界が崩壊した。
この0.1秒間で,寅吉は,合体千冬には勝てないと判断した。
今の寅吉は,自己最高の100倍で動ける。寅吉は,100メートルを5秒程度で走ることができる。つまり,人間なら200倍速,いや,300倍に相当すると言っていい。
しかし,それだけ早く動けても,それは,体の動きだけの話だ。霊力使いは,霊力の腕を,体以上に高速で動かすことができる。
合体千春の霊力の腕は,少なくとも500倍速が可能だ。
寅吉は,合体千冬に勝てないと即断し,偽物の千雪であるリスベルを攻撃することにした。
寅吉は,自己最速の100倍速で偽物の千雪に突進した!!
リスベルは,寅吉が突進してくることは,充分に予想していた。リスベルは,修得した霊力の腕を展開した。それは,左右2本の2mほどのリーチのある,霊力で構成した透明の腕と拳だ。
今では,寅吉は霊力をしっかりと認識することができる。魔界のダンジョンで,霊力を目視することができずに,千雪に敗北した寅吉ではない。
しかし,リスベルが操る霊力の腕の速度は,千雪本人が操るのと10分の1の速さで動いた。その速度は,1000倍! 10分の1でも1000倍の動きをする!
かつ,腕の先端部にある握り拳の強度も,千雪ができる強度の10分の1。それでも,ダイヤモンドの硬さの1.5倍!
その2本の霊力の拳は,寅吉が構築する防御結界など,紙でも貫くかのように破壊し,寅吉の胸部と腹部に強烈にクリーンヒットした。
ドカーーン! ズボーー,ズボー!
リスベルのくり出した2つの拳は,寅吉の胸部と腹部を完全に貫いた。
寅吉「え??ば,ばかな! 偽物の千雪が霊力を使うなんて! 無念!」
寅吉は,その場で体全体が小さな破片に分解して,ゆっくりと消滅していった。
合体千冬がニコニコしながらリスベルのものにやってきた。
合体千冬「寅吉様は,可哀そうなことしましたね。合体した実力をみるよりも,リスベル様の霊力の力量をみることになっちゃいましたね」
リスベル「1割くらいしか制御できていないのに,これほどの威力があるとは正直言って驚きました。寅吉には申し訳ないけど,いい実験材料になってもらいました」
寅吉が急に襲われて,消滅させられたのを見て,エルザはちょっと怒り気味で,”千雪”に文句を言った。
エルザ「千雪!寅吉を復活させてよ。彼は,最近,商品開発で面白いアイデア出すのよ。結構,役に立っているんだらね」
リスベル「そうでしたか。ですが,あと1,2週間ほど待ってください。”千雪”がいずれ復活させますから」
エルザ「え?何言ってるの?ま,いいわ。何か理由があるのね」
エルザは,リスベルの言葉に,深く考えることはしなかった。
リスベル「千冬,では,もどりましょう。実験は終了です」
合体千冬「はい,千影様」
合体千冬が,『千影』と言った言葉に対して,その場にいたフレールやエルザは,千雪の愛称だと思って,別に気にとめなかった。
リスベルは,その後,合体千冬をもとの2人に戻した。そして,合体魔法とその解除魔法の方法を2人に伝授した。彼女らは,その後,合体魔法を繰り返し練習して,合体技を体得した。
その夜,約束通り,エルザとフレールが千雪の部屋にやってきた。
エルザ「千雪,胸大きくしてくれる?」
リスベル「私,まだ回復魔法が上手じゃなけど,なんとかやってみるわ。エルザ,フレール,裸になって,私のベッドで横になってくれる?」
エルザ「わかったわ」
フレール「了解でーす」
エルザとフレールは,全裸になって,千雪のベッドで仰向けになった。彼女らは,魔法で胸がすぐに大きくなるものと思っていた。
リスベルは,精神支配ができない。だが,霊力をそのまま相手の脳に流し込むことで,意識を飛ばすことはできる。見慣れた彼女らの裸体を眺めて言った。
リスベル「じゃあ,いまからするね。かなり痛いから,意識を飛ばすよ。目つむってね」
エルザ「オッケー」
フレール「あまり痛くしないでよ」
リスベルは,彼女らの意識を飛ばした。リスベルは,もう千雪を抱けないことを知った。しかし,千雪の体で,多くの女性を抱けることを知った。女性化しているとはいえ,もともとは男だ。嬉しくないわけがない。
リスベルは,小生意気なエルザから抱いた。次に,少し気弱なフレール抱いた。
その後,リスベルは,低レベルの回復魔法はできるが,高位の回復魔法などできるはずもない。
そこで,暇そうにしている千春に声をかけて,彼女にエルザとフレールの胸を大きくさせた。2,3日かけて,彼女らのCカップの胸は,形良いGカップに変身した。
ーーー
リスベルは,千夏たち3名に,偽物の尊師が北東領主であることを明かした。その理由までは,説明しなかった。ただ,千雪を快楽の世界に追いやった責任を取らせるため,明日,北東領主邸に,千夏と,千秋と千冬が合体した合体千冬の2名を同行してもらうことだけ伝えた。
夜,リスベルがベッドで寝る時は,やはり千夏がそばにいた。なんといっても,リスベルにとって,千夏が性に合っているし,千夏もリスベルを心から愛しているようだ。
ーーー
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