見てない夢の話

溶けて潰れた身体は、毛羽だった合成ゴムだ


二人がぐにゃりと溶け合い性交をする


大きな泡と大きな泡の間にある極小の泡が眼の端にちらつく


目の前の人の唇の皺一本一本を眺め、唇と顎の間に深く飛び込んでいく


気が付けばここは海の上で、遠いところまで漕いできたのだ


振り返っても岸は見えない


水面は揺れているが船も揺れている


身体は揺れているが心は揺れている


揺れているのがあたりまえ、あたりまえに立脚する


日が照っている


太陽のある方向に顔を向けるのが重だるい


ちょうどその方向から棒でぐいぐい押されているかのように


光は痛い、なぜ


太陽の因果は理解できない



そういえばあの森はどうなったのだろう


幼い頃に行ったことのあるあの森は


いくつもの木があそこから採れるのを知った


柔らかい地面、森の中、木を切ったにおいがあたりまえのように満ちている


向こうの方に何かを見つけた


橙色に光っているぞ


手に取ると、木の破片だった


でもたしかに、見つけた時は何かあった


見つけたものに近づいて、良く見てしまったからそれは消えてしまったのだ


ふさがっていて通れない森の奥には何かがあるのだろうか


柔らかく網目になった木繊維を引き延ばすように、さわさわと音を立てながら、夢はゆっくり崩壊する

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る