第13話

「ふぅ~。噴火に巻き込まれるとはな。運がない……」


 山頂で噴火に巻き込まれるなど、どれだけ運がないのか。


「『異次元の扉』を破壊したからなのニャ……」


 ミルキーが、ボソッと呟いた。

 そうなのか?

 そうなると、噴火は避けられなかったのか?

 この世界は、残酷だな。トラップだったのかもしれない。


「そうなると、世界が私を殺そうとして来たのか」


「そんなことはニャいんですがニェ~。ヘーキチさんが特別なだけですニェ~」


 良く分らないな。私が特別?

 他の冒険者と何が違うというのか……。


 話している間に、噴石の落ちる範囲から逃れられたと思えた。

 ここで、ミルキーを降ろす。


「どうする? 戻って素材を集めるか? サラマンダーは高価なのだろう?」


「この耐火手袋は、とても優秀だったのニャ。ヘーキチさんが戦闘を行っている間に、8割は回収できたのニャ。十分とも言えますニャ」


 ふむ……。

 私としては、倒した相手の血肉は全て有効活用したい。

 特に最後の個体だ。


 ここで影が私達を襲った。

 上空を見ると、大きな噴石が振って来た。


「距離的にこの噴石の大きさは、ないだろうに……」


 明らかに作為的に私を殺そうとして来ている。世界が私を殺そうとしている。

 だが死んでやる理由もない。

 ミルキーを見ると、顔に陰ができていた。思考が止まっているみたいだ。諦めたのか? まだまだ、成長の余地があるな。もっと追い込んでみるか。


「仕方がない……」


 私は、斧で迎撃を行った。

 上手く、『石の目』に当たったらしく、噴石は真っ二つに割れた。

 ついでに、斧も折れた。刃の部分は粉々であり、柄は曲がってしまった。やっと手に馴染んで来たところだったのに……。もったいない。

 その噴石が、ミルキーを掠めて転がって行く。


 後方で、大轟音が鳴り響いた。転がった噴石が止まったのだと思う。

 上空を見上げる。噴火は止んでいた。溶岩から湧き出る煙のみだ。 


「イタチの最後っ屁だったか」



 私達は、再度山を登った。素材を回収するためだ。

 ミルキーは、何も言わずに着いて来てくれる。

 こんな危険な道程に付き合ってくれるとか……。

 肝が据わって来たな。いい傾向だ。

 それと髪の色が白いままだ。どうして、変身しているのだろう?


 道中、溶岩が流れている箇所があった。


「一度目の道は、使えそうにないな。迂回しようと思う」


 強引に進めなくもないが、靴が燃えてしまうだろう。街で、溶岩に耐えられる靴は売っていなかった。手袋のみだ。


「待って欲しいニャ……。溶岩は、三本。迂回すれば、山頂まで行けるニャ」


 道案内をミルキーに任せて進む。私は、索敵に集中だ。

 特に飛んでいる魔物がいる。襲っては来ないが、魔物なのだ。注意するに越したことはない。最悪は、銃撃だな……。


 少し遠回りしたが、無事登頂を果たすことができた。ミルキーは優秀だ。

 そして山頂付近で、ボスサラマンダーの回収に成功した。

 もちろん他のサラマンダーもだ。


「噴石で傷んでしまったが、証明には十分だな」


「回収完了ですニャ。帰えるのニャ!」


 ミルキーの強い主張。

 まだ噴火の危険を危惧しているみたいだ。飛んでいる魔物も気にしているのかな。

 本当に頼もしいバディーだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る