第47話 4割の力

 次の瞬間には互いの剣が交叉していた。レギアさんの記憶から拾い上げ、オリヴィアさんとの訓練で身に着けた剣技を連続して叩き込む。だがコラキアもそれについてくる。打ち合いは続きそうだ。


「かなりの霊力ですね。剣技もそれなりに鍛えているよう。ですが、私はまだ7割程度の力しか出していませんよ?」


「そうか。俺は4割だ」


 強烈な横薙ぎの一撃を食らわせ、俺は相手の剣をへし折った。


「素晴らしい! このミスリル製の剣を折るとは。その宝剣にどんな由緒があるのかは知りませんが、あの無能次男に剣の才能まであったとは」


「俺の才能じゃない。受け継いだんだよ。五大勇者からな」


 大軍を率いる力より、伝統を受け継ぐ力の方が強いこと、ここで示してやる。


「忌々しい名を口にしますねぇ。黙らせたくなってきました」


 コラキアは合掌する。


「【追従の黒風】」


「奥義【グラディウス・プルガトーリオ】」


 互いの霊気がぶつかり合い、空間が白と黒の層に分かたれる。気を抜けば意識を持って行かれる。それほどの威力だ。だがそれは相手も同じはず。


 ここで意表を突く。


 10秒ほど拮抗状態が続き、互いの技は収まった。


「さすがですねぇ、邪神様から賜ったこの権能を相殺してみせるとは」


「相殺しただけだと思うか?」


「何?」


 直後、霊力を纏わせて放り上げておいた木の枝が、コラキアの下に落下する。


「剣技【グローム】」


 直後、圧縮した霊気が稲妻のように走り、コラキアの魂を揺らした。


「うぐっ、」


 さすがの四大神官もこれには気付かなかったようだ。


 相手の魂に触れ、ようやくその力量が分かった。


 霊力:160000/259999


 以前の俺よりは格上だ。だが、オリヴィアさんにも、今の俺にも及ばない。現在の俺の霊力は20万。勝算はある。


 コラキアは気絶している。今が畳かけるチャンス。


「その身体から出ていけ!」


 俺は中空に向かって正拳突きを繰り出す。霊力が塊となって射出され、除霊には成功した。


「まだだ。油断するなよ?」


 オリヴィアさんはそう釘を刺してくる。


「分かっています」


 奴は侍従の身体から出ていっただけ。そこら中にいるスキル持ちの誰に憑依するか分からない。


「スキル……」


 後ろから声が聞こえる。先手を打つか。俺は宝剣を構えた。

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