第33話 スキルの始祖

『とりあえず世界樹の根本まで来てくれ。教えたい技もあるしな。それに、世界樹をどうにかしなければ勝ちの目はない』


 世界樹か。


 世界樹は西の果ての聖地ルーラオムに生える大樹。その昔天使ルーライが植えたとされる神話の時代の遺物だ。


「分かりました。ですが、ルクレツィアとベルルは……」


『無理やり引きはがそうとすればルクレツィアの方が危ない。ベルルは一旦私の弓で封じたから、そのまま捨て置けばいい。ヴィアクのスキルで収納でもしたら、寝首を掻かれるぞ』


 確かに。亜空間に収納しても次元の壁を破って出てくるくらいだ。城塞に閉じ込めるのは得策ではないだろう。


『では道すがら話そうか。五大勇者と、邪神ベルルの真実を。君たちが到着する前に、話せることは話しておきたい』


「お願いします」


 ベルルの言葉は真実だったのか。アルバレスの血はベルルのものなのか。五大勇者は、なぜ処刑されたのか。


 俺には知る権利があるはずだ。


『千年ほど前、世界樹の生える聖地ルーラオムに、一人の女の子が生まれた。名を、シャルロッテ・ルーラオム。人類で初めて、スキルという力に目覚めた者だ。ここからは、私が覗き見た記憶を共有しよう。言葉で語るより、その方が早いはずだ』


「分かりました」


 覗き見た、とはどういうことだろうか。まだ謎は多いが、今回の記憶共有で解決すると信じたい。


 俺とミカエラは亜空間の城塞に戻り、そこで眠りに落ちた。千年前の記憶を辿るために。

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