第6話 クラウディア・ラインバッハと悩みの種
名称:クラウディア・ラインバッハ
体格:172cm、わがままおっぱい、紅色のつり目、白髪、側頭部から伸びた湾曲した2本角、背中に羽、先端がスペード型ににた細い尻尾
種族:悪魔族
年齢:不詳
備考:ラインバッハ家当主。ヘンリー君のかーちゃん。つよい。
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微睡から目覚めた私は寝台から身を起こす。
夜が明けてすぐの早朝、いつも通りの時間だ。
昔は悪魔族らしく昼近くまで寝ていたものだが、12年前にヘンリーが誕生してからはこんなにも健康的になってしまった。
身支度を整え、毎朝の日課である邸宅内の防犯ログに目を通しつつ部屋から出る。
門斬、庭、玄関――異常なし
東棟――異常なし
西棟――異常なし
北等――異常なし
南棟――異常なし
南棟に異常なし…?
警報術式も捕縛術式も作動ログがない上に、地下牢の転移陣も作動していないだと?
それはおかしい。
毎晩毎晩懲りもせずにヘンリーの部屋に突撃しては罠解除に失敗して地下牢で夜を明かすアホどもが自室で大人しく寝ているはずがない。
この間バージョンアップしたばかりだったんだが、もう突破されたのだろうか。
弟離れの為にと夜はヘンリーの部屋から叩き出すようにしてからもう2年か。
トラップを設置し、突破されてはバージョンアップを繰り返した結果、ヘンリーの部屋の部屋周りが要塞の如く堅牢になったのは嬉しい誤算でもあった。
アホ2人の魔術の腕が上がり、今では時折、私の魔術に介入するようになったのも嬉しい誤算といえなくもない。
2年前は下から数えた方が早い成績だったんだがなあ。
無駄に成長しおってからに、そんなに貴様らはヘンリーと一緒に寝たいのか。
私だってヘンリーと添い寝したいわ。
当主だから我慢してるんだぞ。
というかヘンリーだっていずれ婿に行くんだから、いい加減に弟離れしろ。
私は足早にヘンリーの部屋に向かう。
廊下の術式を確認すると、魔術介入の痕跡が彼処にあることを視認した。
(なぜか偽装術式が2つ重なっている。術式に時間差があるな…。まさか2人で協力せずに単独で突破したのか…?)
今回は魔術以外にもドワーフ製の機械式も導入したんだぞ。
軍の特殊部隊でも梃子摺るという触れ込みの最新式を初見で突破したのか。
ヘンリーの部屋の前についた私は、扉を軽くノックする――前に魔術を発動する。
結界術式を構築。
構築式に偽装と対破壊術式を封入。
指を鳴らして部屋を囲む内側を向いた結界を張った。
魔術に反応して目覚めたのだろう、部屋の中で2人が動く気配がする。
逃がさんぞ。
「(まずいぞミレーヌ!結界に閉じ込められた!いつの間に近づかれたんだ!?)」
「(部屋の周りの探知術式に反応がなかった。偽装術式を嚙まされたみたい)」
「(なら窓だ!逃げるぞ!術式に穴をあけるから手伝ってくれ!)」
「(…術式が複雑すぎて介入できない。これは詰んだ)」
「(あのババア、また腕を上げやがった…!)」
「(なんて大人げないババアだ)」
ヘンリーを起こさないための念話だろうが聞こえているぞ。
大体にして私が何の対策もせずに普通に歩いてくるわけがないだろう。
音、臭い、圧力、呼吸。接触・非接触を問わずよくもあれだけの数の探知術式を展開したものだが、まだまだ甘い。
貴様らにできることが私にできないとでも思ったのか。
小癪にも魔術で封鎖している扉に触れて術式に介入する。
一呼吸程度で解呪した部屋の扉を開けると、反対側の窓に噛り付くアホどもの姿が見えた。
シルヴィアとミレーヌ。
性格も外見も正反対の姉妹は、私を見るや否や即座に命乞い――しつつも解呪の抵抗を続けている。
私は諦めの悪い哀れなエルフの小娘共に笑いかけた。
「(まってくれ母さん!これには深いわけがあるんだ!)」
「(実はヘンリーが今日の朝に小指をぶつけるっていう夢を見た。きっと俗にいう予知夢。ここにいたのはそれを防ぐための致し方ない措置)」
「(そうなんだよ!すべては可愛いヘンリーちゃんを守るためだったんだよ!)」
「(褒めてくれなくて良い。姉として当然の行い)」
「(面白い冗談だな、命乞いはそれで終わりか?)」
「(……解呪は無理だ、やるぞミレーヌ!ここでババアを打倒してヘンリーと2度寝をするんだ!)」
「(今日こそは勝つ)」
「(かかって来い。格の違いを教えてやろう)」
器用にも念話で気合を上げながらこのラインバッハの当主に踊りかかる命知らずに向かって、私は握った拳を叩きつけた。
◆―〇―◆《ref》ヘンリーと部屋に被害を出さない高度な駆け引きの末に2人は敗北、決まり手は4手目のキドニーブロー《/ref》
弟離れできないアホ2人を寝かしつけて手早く簀巻きにした私は、いまだに寝息を立てるヘンリーを見る。
結界を解いて偽装術式を解除した私が近づいても起きる気配がない。
ほっぺたをつっついてみる。
起きない。
そのまま頬をつまんでみる。
起きない。
頭を撫でてみる。
顔が緩んだ。
可愛い。
ヘンリーも大きくなったなあ。
少し前まではいはいしていたのに、いつの間にか剣や魔術を習うような年になった。
あと3年もしたら成人である15歳だ。
あと100年くらい子供でいてくれないものか。
ずっと自分の手元で健やかに育ってほしい気持ちがあるが、現実はそうはいかない。普人族の男は平和な多種族共栄の世であっても未だに貴重な存在だ。ラインバッハ家のさらなる繁栄のためにも、ヘンリーには有力な他家と婚姻を結んでもらう必要がある。
商業組合のトップであるマックガバン家や、傭兵から引き抜いた虎の氏族、【星座】持ちの魔法使いもその候補だ。
あの小娘共はすでにヘンリーに骨抜きにされているようだし、あとはヘンリーの気持ち次第だろう。望まぬ婚姻などさせるつもりもないが、かといって婚姻はしてもらわねば当主としては困ってしまう。
悩ましいといえば、もう一つ。例の竜人族の小娘。
200年物の処女を拗らせてた女の癖に12歳のヘンリーに恋慕を向けやがって。
婚姻関係による家のメリットが多いのが余計に腹立たしい。
これでヘンリーが嫌がっているのなら、断固として突っぱねることが出来るのだが…。
やめよう、考えていると頭が痛くなりそうだ。
私の手で好き勝手に弄ばれようとも安眠を続けるヘンリーを見る。
全てはこの子次第だ。この子の意思を尊重しよう。
ヘンリーが望むならあの小娘を義娘と呼ぶことだって受け入れよう。
ヘンリーのおでこに唇を落として踵を返すと、アホを足で転がして部屋の外に押しやりながら外に出る。
とりあえずこいつらは外にでも吊るそう。朝食の時間になったら勝手に起きて戻ってくるだろう。
何度となく簀巻きで吊るしてきた所為で、我が家の屋根付近には折檻用の吊り下げ金具が設置されているのだ。
私の拳を食らって意識が飛んだままの2人を肩に担ぎ上げると、私は羽を広げて廊下の窓から外に飛び立つのだった。
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≪TIPS≫悪魔族
悪魔族は魔力に優れた長命種族である。
魔力で肉体を強化した肉弾戦を得意であるため、安易な接近戦は命取りになる。
稀に竜人族と張り合う猛者がいる。
性感帯は背中の羽の根元と尻尾。
種族的な性癖として噛み癖があり、自分のつがいにつけた歯形に性的な快感を覚えているものが多い。
目につく位置に態と噛み跡をつけて、それを包帯や服などで隠そうとする姿を見るのが最近のトレンドである。
言動や態度に反してベッドの中では組み敷かれることを好む隠れM属性。
背後から組み敷かれて頭の角を掴まれる体位、俗に云うドラフハンドルスタイルに弱い。
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