第6話 花火

 二人でテーブルを挟んで向かい合った。

ジロウはソファで寝転びながら、こちらの方を視線だけで窺っている。

昼食を狙っているみたいだったが、もらえなさそうだったので諦めたみたいだ。


「クーラーきつくない?」


「全然。良い感じに涼しい」


「そっか」


しばらくそうめんを啜る音だけになった。

家庭的なアピールをしたかったのだけど、料理はけいちゃんの方が、手際が良さそうだった。

なので、私はぐるぐると、どうしようかと考え続けるだけになった。

ふと、冷たい麺の合間に卵やハムを食べると美味しいということに気づく。



弓花ゆみか


そうめんをつるつると口に運んでいると、唐突に慧ちゃんが私の名を呼んだ。



「ん?」

「この間さ、二人で花火見たよね」


 慧ちゃんが真っ直ぐこちらを見ていた。


「うん、見たね」


慧ちゃんに告白する前、まだただの友人同士だと慧ちゃんが信じていた数週間前のことを私は思い出す。


毎年、うちのベランダからはっきりと花火が見えるので、今年は約束して二人で見たのだった。


空に向かって一直線に細い光が登って、それが空の真ん中ではじける様子。

赤や緑、真っ白な線がちらちらと四方八方に輝きながら降っていった。


何か食べながらが良かったので、冷蔵庫から冷やしたゼリーを持ってきて、慧ちゃんと二人で食べながら見た。とても綺麗だった。

ジロウは花火の音にたいして吠えていたな。


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