第42話 三日月寮の朝食
日課の素振りが終わると、俺は汗を拭き、自室へ戻る。
その途中、寮長のジェシカが曲がり角から俺のことを覗き見ていることに気が付く。
もしかしてなにか粗相があったのかな、そう思って声を掛けてみるが、彼女は顔を真っ赤にし、
「ここは男子寮ですが、そのように汗臭い格好で歩かないでください」
と去って行った。
たしかに素振りをすると大量の汗をかく、シャワーを浴びてから登校すべきだった。
いや、その前に朝食か。
健康的な男子である俺はそれなりの健啖家。運動量が異常に多いのでそれなりの食事量を取らなければ倒れてしまうのだ。
エスターク城では妹たちとは別の食堂で食べていたが、俺の食事量を見た妹のエレンは、
「リヒト兄上様は牛ですか!」
と言っていた。
要は胃袋が三つも四つもあるのでは、と疑われていたのだ。
実際はひとつしかないはずだが、食べるときはパンを丸々一斤は食べてしまうので、その表現は誇張ではあっても虚偽ではない。
今もとても腹を空かせており、いくらでも食べられる状況だった。
「三日月寮の朝食はお代わり自由だといいが」
そんなことを思いながら、シャワーを浴びると、制服に着替え、食堂に向かった。
三日月寮の食堂は、寮生の半分ほどが同時に食することができる広さを持っている。時間制で残りの半分はあとで食べるようだ。
今は後半の寮生たちが食べる時間のようだが、彼らはすでに思い思いの席に着き、朝食を食べていた。軽く見渡すが、ビッフェ形式ではなく、用意された分のトレイを自分で運ぶ形式だった。
「……お代わりは無理そうだな」
ぎゅる~と腹を鳴らすが、食べないよりはまし、と食堂の御婦人に朝食のトレイを貰う。メニューはパンとスープとミルクと林檎だった。駄目元で多めに言うとパンを一個オマケしてくれた。
食堂の後方からドワーフのセツがVサインをしている。どうやら彼女は俺がハラペコキャラだと察してくれているようだ。とてもありがたい。入寮初日からとても心強い味方を得たようだ。意気揚々と席に着くが、途中、寮生たちの視線が俺に集中していることに気が付く。
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