第14話『ポールVS.ノリヒト』

「それはさ、世界が分離してるように感じてるから、出てくる答えなんじゃないの?」

 ポールが言った。

「どういうことですか?」

 ランスが問い返すと、ポールはスカッと言った。

「因果界も真央界も虹球界も俺たちの世界じゃん。住んでる場所が違う三世帯住宅みたいなもんでしょうが。影響は避けられないし、同じ家族という単位には違いない。だから、因果界の問題は相変わらず家族——人類全体の問題なわけよ。おわかり?」

「世界の大変革は家族会議で決まったこと。思い切り梃入れすることで新しい局面を迎えようというわけね」 

「そういうこと」

 トゥーラが言って、ポールは持っていた箸を上下させた。

「家族の問題児、因果界の行く末は、干渉を最小限にすることで自己解決、か」

 マルクが円卓の上で手を組んだ。

「だってさ、そのために思いっきり活動できる場所も食料もやろうってんだから。しばらくは好きなように暮らせるよ? グータラしようが働いてみようが自由。便利さはないけどね。世話する俺たちも落ち着くまでは奉仕者だし、更生なんてのは実はナンセンスだと俺は思うね」

 ポールが肩を竦めて両手を広げる。

「余計なお世話だってのか……?」

 ノリヒトが拳をプルプル握りしめて言った。

「非人情って言うんならどうぞ。でもね、ピカピカじゃない心も曇った鏡も天下に認められた一派なわけ。万世の秘法は手を尽くしたよ。その上でどうしたいか連中に聞いたら、因果界が欲しいって言ったんだ。連中が望んだのは更生でも干渉でもない。自分たちの天下だった。思いっきり自由にいきたい、まともな答えじゃん。それを認めてやんないのかよ」

「グヌヌヌ……」

 睨み合うポールとノリヒト。

 その場を救ったのは何とルイスだった。

「あの……自由を謳歌するにしても更生するにしても、必要なのは文化じゃないでしょうか。俺、思うんですけど、たとえ因果界が呪界法信奉者の天下になったって、結局、好き放題に闊歩できるわけじゃないと思うんですよ。——そんなことしたら里が機能しなくなりますからね」

「うん」

「そりゃそうだ」

 ナタルとキーツが相槌を打つ。

「あとは食糧をめぐって暴動が起きるのを防いだりとか。家屋を造るのにも因果界の材木伐採は制限しないといけないですし、そういったこともなんで必要になるのか、彼らに篤と教えなければならないわけです。万世の秘法は当分窓口になるしかないですし、世界の大変革の後はノリヒトさんたちのような第三者の意見も広く採用する姿勢が肝要ですよね」

「うんうん」

「まぁ、そうだよね」

「つまり、干渉は手近な手段で更生は遠い目標なんです、あくまで。呪界法信奉者の天下になって自由に生きていったら、次に欲しくなるのは生活を潤してくれる文化や娯楽じゃないですか? そう考えていくと、万世の秘法側の干渉がいらなくなる時というのは、確固とした彼らのオリジナルの文化が生まれた時だと思うんです。その黎明期はどうしたって万世の秘法が支えなくちゃいけません……なぜなら、それが更生か破滅かの分かれ道だからです」

「おーっ!」

 感嘆の声が上がった。ノリヒトが言った。

「なるほどね、初めに文化ありきか。チャラいお兄ちゃんかと思ったら、なかなか筋が通ってるじゃねぇの」

「こう見えて、ウチのルイスは賢者なのよ」

 ポールが言うと、ノリヒトも「違げぇねえ」と受け合った。

 すっかり酒宴の席も冷めてしまった。

 セイル長老がその場を締め括った。

「そうじゃな、こうして意見を交わすことも、これからはうんと活発になるじゃろう。我々は垣根を越えて因果界を助けなきゃならんし、矢面に立つこともあるじゃろうな。なんにせよ、人類の課題は眼前にある。それを見つめるピカピカの心を忘れちゃならんというわけだ。よろしいかな、諸君」

 こうして酒宴はお開きになった。

 結局、マルクやタイラーの他に、ポールとナタルも加わって、賑やかにノリヒトたちを送っていったのだった。













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