第6話『臨時リーダー会議・3』
因果界、パラティヌス上層童話の里集会所にて。
臨時進行役、マルク・アスペクター。
「ではこれから臨時リーダー会議を始めます。形式略、敬称略。いつものようにざっくばらんにいくか」
ポールとキーツが揃って言う。
「異議なーし」
「久しぶりに十人全員揃ったからな。やっとまともに話しできる」
マルクが言うと、オリーブが謝る。
「ごめんね、真央界の方にかかりきりで」
トゥーラとランスも続く。
「私もボランティアに。明け暮れていたから」
「同じく、どうもすみませんでした」
「いや、責めてるわけじゃないんだ。こっちも流れてくる情報に何の手も打ってないからな」
「やっとNWSの総意が決まるって言いたかったんだろ」
アロンが助け船を出すと、マルクは頷いた。
「そうそう、万世の策士——ドギュスト部長の窓口になってはいるけど、代表の頭越しにやってるからさ。その辺の兼ね合いがな……」
「気にはなってたんだけど、レンナちゃんはどうしてる? こっちから連絡するのはNGかと思って、連絡取ってないんだけど」
オリーブが言うと、マルクが答えた。
「大丈夫だ、そこは万世の秘法の総意だからな。真央界で下宿運営しながら静かに暮らしてるよ」
「そのことなんですが。先日、首都キュプリスでレンナさんにばったり会いまして。NWSを任せきりにしてすみませんと言ってました」
ランスの話に、アロンが興味を示す。
「へぇーっ、買い物かな?」
「それがサクシード・ヴァイタルさんという、レンナさんと同い年の男性とご一緒で、先月下宿に入ったそうです。何でもPOAの訓練生ということでした」
「もしかして、レンナちゃんの身辺警護のために?」
キーツが言うと、ランスは首を振った。
「いえ、話はそんなに飛躍してなくて、万世の秘法について説明を受けたばかりなんだそうです。でも、眼光の鋭い、とても凛々しい立派な男性で……余計なことだとは思うんですが、かなりお似合いでした」
「あらーっ、こんな時に。天の配剤かな?」
「よかったじゃん。そのサクシード君にのんびり万世の秘法のこと、教えてあげればいいんだよ。気も紛れると思うよ。な、ルイス」
「……そうですね」
キーツの言葉に不承不承頷くルイス。
「それで代表——万世の魔女の今後なんだが」
マルクが言って、何人かが頷く。
「NWS代表としての活動は当面中止。真央界で平常心を保ちながら天窓の鍵に集中してもらう。しばらく静かに過ごしてもらって、必要な相談は万世の占術師——ウェンデス様でも誰でも遠慮なくしてもらって構わない。名のない力の衝突後——ああ、この言い回しなんだが、いつまでも不吉なんで、世界の大変革という名称にするそうだ」
ポールがふむふむと頷く。
「で、その世界の大変革後のことは万世の秘法に全部任せてもらって、とにかく天窓の鍵でできる最良の選択を一任する、と」
「最良の選択の一任——」
アロンが呟くと、キーツとナタルがこめかみと胃を押さえた。
「あーダメだ、考えただけで頭痛くなってきた」
「俺は胃が……」
「もう、情けないんだから! レンナちゃんなんか毎日このプレッシャーに耐えてんのよ」
オリーブが二人を叱ると、ランスが言った。
「いつも天窓の鍵を見つめながら、名のない力を導管となって通すイメージトレーニングをしているんでしょうね」
「レンナちゃんはきちんと定期検診もカウンセリングも受けているでしょう。心配しなくても大丈夫よ」
トゥーラが言うと、タイラーとポールが続いた。
「男の俺でも逃げ出したくなるのに、よく頑張ってるよな」
「若いのに、女の子なのに、大したもんだよね」
「で、その代表に、俺たちNWSが何ができるかってことなんだが」
「うーん」
全員が唸る。
「……NWS全員で寄せ書きとか」
ナタルの案にキーツが賛同する。
「あ、それいい。どんなことがあっても君は一人じゃないってメッセージをね」
「いいけど……重くない?」
オリーブが懸念すると、ランスは異を唱えた。
「でも、レンナさんは喜んでくれると思いますよ」
「じゃあ、それをやってみよう。あとは?」
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